41 / 52
悪役令嬢には悪役でいてもらう
しおりを挟む
ついクレアベールに対してあんな事を言ってしまった。
いつまでも続く嫌がらせに、嘘ばかりの噂、いくら真剣に取り組んでも糸口さえ掴めない聖女の能力。焦り苛立ちばかりが募っていた私の気持ちなど理解せず、正論で責め立てる口調に我慢できずに、彼女を傷付ける言葉を口にしてしまった。
叩かれた頬の痛みを手で押さえながら、彼女は私と同じくらい心が傷ついているのだろう…聖女として心を救ってほしいと言われたのに…
サリモンに肩を抱かれながら校舎を目指す。
「サリモン?」
サリモンを呼んだのはクリストフ王子だった。
「クリストフ」
「どうした?」
気まずくて、王子の顔を見ることが出来ず顔を隠していた。
「ジョバルディー公爵令嬢と少々…」
サリモンは私がクレアベールに頬を叩かれた事を目撃したとはいえ、婚約者である王子に告げ口するのは気が引けたのだろう…私も言いづらい。
「クレアと?」
クリストフ王子に顔を覗き込まれるも、目線を逸らして口をつぐんだ。
「手を外して、見せてくれないか?」
王子に言われてゆっくり手を離し、叩かれた頬を見せた。
「…クレアがしたのか?」
私は何も答えなかった。
「…サリモン」
「あぁ、ジョバルディー公爵令嬢が叩く姿を目撃した」
私の代わりにサリモンが告げだ…
「クレアが何故?」
私が余計なことを言ったのが切っ掛けである…だけど、私は何も言わなかった。
王子はクレアベールが私を叩いたこという事実が信じられずにいる。
どうして悪役令嬢の彼女をそこまで信じているの?
私には…それが悔しかった…
「…手当てを…した方がいいな…サリモン保健医まで聖女を頼む」
「あぁ」
「…クレアが何処にいるか分かるか?」
「俺達は裏庭で会った。今は…分からん」
クリストフ王子は私の事で悪役令嬢を責め立てるのだろうか?
あの人の傍に行かせたくない…
「クリストフ王子…」
「…なんだ?」
私が名前を呼ぶと、彼の顔から怒りが窺える。私の為にそこまで怒りを露にしてくれるのを嬉しく感じていた。
「…一緒に…いてもらえませんか?」
「…私は一度クレアに真実を確認する。その後、保健室に向かう」
王子はそう言ったが、悪役令嬢が正直に話すとは思えない。私の姿を見て更に信頼のおける護衛騎士まで証言したんだ、王子は既に真実に辿り着いているだろう。それでも直接悪役令嬢に確認するということは、彼女の悪事を暴き見切りを着けるため…
クレアベールも王子に問い詰められれば、自分が間違っていたことに気付くはず。これでも暴走するようであれば、没落・追放・処刑という道に進むことになる。そんな道を彼女が選ぶとは思わないが、万が一そうなったら私が助けてあげる。そして、今までの暴言を謝罪し私に感謝しなさい。
「大丈夫だ、サリモンがついている。私も確認してから直ぐに向かう」
彼の表情はヒロインによく見せる、王子スマイルだった。
「保健室へ…」
「…はぃ」
私はサリモンと二人で保健室へ行き手当てを受ける。
サリモンと共に現れた事で、私が重要人物なのではと推測した保健医は「私の方から学園側に報告しておきます」と気を使ってくれた。
その時クリストフ王子が現れ「いや、この事は私が処理するので学園に報告はする必要ない」と宣言する。
これはもしや、卒業パーティーの断罪の為のフラグなのでは?と沢山乙女ゲームしてきた私にはピンと来た。
王子がクレアベールとどんな会話をしたのか気になるが、私は黙って彼の話を待った。彼女がどんな風に語ったのか分からないので、墓穴を掘るような行為はしたくない。私が彼女を挑発したことが知られてしまうと、王子の好感度が下がり悪役令嬢との不仲が解消されてしまう恐れもある。
折角良い感じに来たのに、それは避けたかった。
「今後は私も聖女の傍に居ることにする」
王子のその言葉でクレアベールが私に暴力を振るったのを認めたか、問い詰めた結果暴力を振るった事が事実だと導いたのだろう。
漸く王子と悪役令嬢の立場が正常になったと確信した。
「クレアはまだ聖女を受け入れるのに反対らしい。きっと公爵に色々聞いているのだろう」
「…公爵…様ですか?」
何故突然公爵が出てくる?
それよりも、まだ「クレア」呼びなんですね…私の事は未だに「聖女」なのに…
「あぁ、ジョバルディー公爵が聖女は必要ないと主張している。公爵の意見を無視して王族の独断で進めてしまえば国の均衡が崩れてしまう。その事もあり、未だに公表できずにいる」
公表せずいるのは公爵が原因なのか…
確かに普通の家族より、貴族社会の親の意見って家門の代表ということになる。娘が当主の意見を覆すことは難しく、従うのが当然。クレアベールが異常なまでに聖女反対するのは父親の影響かもしれない。
なら、クレアベールが聖女を認めないのは父親の意見であって彼女本人は…って本人に直接聞いたわけではないから憶測で判断するな。
王子からそんな話を聞いてしまい、彼女を悪役令嬢にさせようとした自分が嫌になる…
惑わされるな、私が頬を叩かれたのは事実なんだ。
いつまでも続く嫌がらせに、嘘ばかりの噂、いくら真剣に取り組んでも糸口さえ掴めない聖女の能力。焦り苛立ちばかりが募っていた私の気持ちなど理解せず、正論で責め立てる口調に我慢できずに、彼女を傷付ける言葉を口にしてしまった。
叩かれた頬の痛みを手で押さえながら、彼女は私と同じくらい心が傷ついているのだろう…聖女として心を救ってほしいと言われたのに…
サリモンに肩を抱かれながら校舎を目指す。
「サリモン?」
サリモンを呼んだのはクリストフ王子だった。
「クリストフ」
「どうした?」
気まずくて、王子の顔を見ることが出来ず顔を隠していた。
「ジョバルディー公爵令嬢と少々…」
サリモンは私がクレアベールに頬を叩かれた事を目撃したとはいえ、婚約者である王子に告げ口するのは気が引けたのだろう…私も言いづらい。
「クレアと?」
クリストフ王子に顔を覗き込まれるも、目線を逸らして口をつぐんだ。
「手を外して、見せてくれないか?」
王子に言われてゆっくり手を離し、叩かれた頬を見せた。
「…クレアがしたのか?」
私は何も答えなかった。
「…サリモン」
「あぁ、ジョバルディー公爵令嬢が叩く姿を目撃した」
私の代わりにサリモンが告げだ…
「クレアが何故?」
私が余計なことを言ったのが切っ掛けである…だけど、私は何も言わなかった。
王子はクレアベールが私を叩いたこという事実が信じられずにいる。
どうして悪役令嬢の彼女をそこまで信じているの?
私には…それが悔しかった…
「…手当てを…した方がいいな…サリモン保健医まで聖女を頼む」
「あぁ」
「…クレアが何処にいるか分かるか?」
「俺達は裏庭で会った。今は…分からん」
クリストフ王子は私の事で悪役令嬢を責め立てるのだろうか?
あの人の傍に行かせたくない…
「クリストフ王子…」
「…なんだ?」
私が名前を呼ぶと、彼の顔から怒りが窺える。私の為にそこまで怒りを露にしてくれるのを嬉しく感じていた。
「…一緒に…いてもらえませんか?」
「…私は一度クレアに真実を確認する。その後、保健室に向かう」
王子はそう言ったが、悪役令嬢が正直に話すとは思えない。私の姿を見て更に信頼のおける護衛騎士まで証言したんだ、王子は既に真実に辿り着いているだろう。それでも直接悪役令嬢に確認するということは、彼女の悪事を暴き見切りを着けるため…
クレアベールも王子に問い詰められれば、自分が間違っていたことに気付くはず。これでも暴走するようであれば、没落・追放・処刑という道に進むことになる。そんな道を彼女が選ぶとは思わないが、万が一そうなったら私が助けてあげる。そして、今までの暴言を謝罪し私に感謝しなさい。
「大丈夫だ、サリモンがついている。私も確認してから直ぐに向かう」
彼の表情はヒロインによく見せる、王子スマイルだった。
「保健室へ…」
「…はぃ」
私はサリモンと二人で保健室へ行き手当てを受ける。
サリモンと共に現れた事で、私が重要人物なのではと推測した保健医は「私の方から学園側に報告しておきます」と気を使ってくれた。
その時クリストフ王子が現れ「いや、この事は私が処理するので学園に報告はする必要ない」と宣言する。
これはもしや、卒業パーティーの断罪の為のフラグなのでは?と沢山乙女ゲームしてきた私にはピンと来た。
王子がクレアベールとどんな会話をしたのか気になるが、私は黙って彼の話を待った。彼女がどんな風に語ったのか分からないので、墓穴を掘るような行為はしたくない。私が彼女を挑発したことが知られてしまうと、王子の好感度が下がり悪役令嬢との不仲が解消されてしまう恐れもある。
折角良い感じに来たのに、それは避けたかった。
「今後は私も聖女の傍に居ることにする」
王子のその言葉でクレアベールが私に暴力を振るったのを認めたか、問い詰めた結果暴力を振るった事が事実だと導いたのだろう。
漸く王子と悪役令嬢の立場が正常になったと確信した。
「クレアはまだ聖女を受け入れるのに反対らしい。きっと公爵に色々聞いているのだろう」
「…公爵…様ですか?」
何故突然公爵が出てくる?
それよりも、まだ「クレア」呼びなんですね…私の事は未だに「聖女」なのに…
「あぁ、ジョバルディー公爵が聖女は必要ないと主張している。公爵の意見を無視して王族の独断で進めてしまえば国の均衡が崩れてしまう。その事もあり、未だに公表できずにいる」
公表せずいるのは公爵が原因なのか…
確かに普通の家族より、貴族社会の親の意見って家門の代表ということになる。娘が当主の意見を覆すことは難しく、従うのが当然。クレアベールが異常なまでに聖女反対するのは父親の影響かもしれない。
なら、クレアベールが聖女を認めないのは父親の意見であって彼女本人は…って本人に直接聞いたわけではないから憶測で判断するな。
王子からそんな話を聞いてしまい、彼女を悪役令嬢にさせようとした自分が嫌になる…
惑わされるな、私が頬を叩かれたのは事実なんだ。
20
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど
紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。
慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。
なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。
氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。
そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。
「……俺にかけた魅了魔法を解け」
私、そんな魔法かけてないんですけど!?
穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。
まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。
人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い”
異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。
※タイトルのシーンは7話辺りからになります。
ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。
※カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる