【完結】ホラー乙女ゲームに転生しちゃった…

天冨 七緒

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ついにこのイベントがきた

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私に何をしても無意味だと分かりながら諦めていないクレアベールに日々睨まれている。睨まれているだけで、直接何かされてはいない。
この状況で卒業パーティーに行けば、ゲームのように中途半端な幕引きを迎えてしまう…それでは物足りない。
そんなんじゃ乙女ゲームのヒロインのような幸せが私に手に入らない。
もっと何か…あの女を大悪女に仕立てられるような何か…

「貴方…逃げるなら今よ」

「えっ?」

振り返るとクレアベールがいた。
偶然ではなく、私が一人になるのを彼女はずっと待ち続けていたのだろう。
これはまさかのゲームでよくあるあのイベント、悪役令嬢に突き飛ばされ階段から転げ落ちるやつなのでは?
本怖乙女でこんなシーンが有ったのか今は思い出せないが、私達は運良く階段の中腹にいる。最上段まではもう少し、あそこまで行かないと…

「ちょっと、私がまだ話しているのよ。最後まで聞きなさい」

クレアベールがまだ話しているが私は階段を駆け上がる。失礼な行動をとる私に怒りを見せる公爵令嬢のクレアベールからは、今までにそんな扱いを受けたことがないのだろう。
私が逃げ出すと思ったのか咄嗟に私の肩を掴んできた。
これは、いつもの冷静な彼女では考えられない行動だったが、私はそれを利用した。

「…きゃっ」

「ぇっ?」

ゴロゴロゴロゴロ

私は結局最上段まで行けず、中腹から落ちて咄嗟に受け身も取ってしまったので、大きな怪我などはしていない。痛みもそれほどなので、多少痣が出来たくらいだと判断する。目撃者がいなければ悪役令嬢は言い逃れ出来てしまうと思い、誰かが来るのを待った。

バタバタバタバタ

私は起き上がることはせず階段下で倒れたまま誰かの足音を聞き、耳だけで情報を集めた。

「…大丈夫かっ」

声からしてクリストフ王子だと判断し、彼の腕の中で私は目覚めた…事にした。
第一発見者がクリストフ王子なんて、私は運が良い。

「…ん゛っ…」

私は態と辛そうな呻き声をあげた。

「クレア…」

「…私がやったわ…目障りだったのよ。この国に聖女なんていらない、とっとと出ていきなさい…」

逃げることも言い訳をすることもしないクレアベールは、悪役令嬢として相応しい。これでもう、クレアベールと王子の信頼が回復することはないと確信した。きっとゲームにはなかった婚約解消を二人はするだろう…
私は笑顔にならないよう、必死に歯を食いしばる。

クレアベール、私の勝ちよ。
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