【完結】ホラー乙女ゲームに転生しちゃった…

天冨 七緒

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卒業パーティ

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卒業式が無事に終わり、卒業生達を祝うパーティーが行われる。皆がパーティーの為に制服からドレスに着替え、会場へ向かう。私のドレスは王宮で用意された特別なもの。上品なドレスを身に纏い入場するのだが、残念なことに私はエスコートなしだった。大抵こういう場合、ヒロインは攻略対象にエスコートされるものだが、私は一人でとなった。
クリストフ王子もサリモンもマシューズも、皆が婚約者をエスコートしている。
私への好感度は高いはずなのに、何故か私は誰にも声を掛けられることがなかった。

「どうして?」

あの日、クレアベールに突き飛ばされ保健医で手当てしてもらうまで王子はずっと傍に居てくれた。
何があったのか保健医に尋ねられた時、「階段を踏み外したみたいで…」と王子が説明する。本来であれば事実を伝えたかったが、保健室に入る直前に王子から「噂がどのように広まるか分からないから、今は階段から踏み外した。とだけ言ってくれ」とお願いされた。
王子には何か考えがあるのだろうと思い、私は頷いた。
きっと、卒業パーティーで悪役令嬢を断罪する時に王子の口から真実を告げる為だろう。卒業生全員の前で、今まで公爵令嬢が聖女に行った非道の数々を暴露し逃がさないために。
王族から見ればたかが貴族だが、公爵家相手では手順を踏まなければいくら正論だったとしてもこちらが負けてしまう。
確たる証拠を提示し言い逃れ出来ないようにしなければ…そんな風に考えてくれているに違いない。
私のエスコートが無いのは不満たが、隙を突かれ足元を救われる訳にはいかない。不満を押し殺し我慢した。
この後の断罪のために…

平民から下位貴族、高位貴族、王族の順番で入場するので、私は攻略対象にエスコートされる悪役令嬢達を、その他大勢の生徒と一緒に拍手で出迎えている。
通常の乙女ゲームなら私が攻略対象と入場し、悪役令嬢達が声を荒げて問いただすシーンのにとは思っている。その後も卒業パーティーは恙無く進行し、王族のダンスから始まり婚約者達のダンス、そして自由な時間となる。
攻略対象達はすぐに私のところにやって来るのかと視線で探すも、彼らは一向に私のところへ来る気配がなかった。

「何でよ?」

好感度は悪く無いはず。光属性の聖女で、友人・攻略対象に囲まれて、悪役令嬢の嫌がらせにも健気に耐えた。そして、決定的となる階段からの突き落としにも成功した。あんなことがあれば、必ず王子は悪役令嬢と婚約解消する…なのに、何故悪役令嬢をエスコートしてるの?
まだ断罪の時間じゃないとか?断罪っていつやるのが正解なの?

次第に怒りが込み上げてくる。
だが、怒りに任せて私が悪役令嬢のドレスに飲み物を掛けては好感度が逆転してしまう。折角ここまで上手くやって来たのに無駄にしたくない。
まだチャンスはあるはず…
少し外の風に当たり、頭を冷やすことにした。

きっと、悪役令嬢が卒業パーティーに参加しないと断罪が出来ない。その為に攻略者達は悪役達をエスコートしているに違いない…そうなんだよね?

それともゲームに有ることは必ず起きるが、ゲームに無いことは起きないの?
イベントを取りこぼすことなくクリアしたが、このゲームに婚約解消は存在しない…
恋愛ゲームの王道では悪役令嬢は追放され、ヒロインは攻略対象と幸せになるもの。だけど、このゲームにはヒロインの幸せまでは描かれていなかった。聖女と公表し貴族に認められ、王宮に入る…その後は不明。
聖女なんだから敬われ、王子と幸せになる。当然すぎて描く必要ないと省略したのかもしれない。もしくは私が知らないだけで番外編やその後があったのかもしれない。

ここまで順調なんだ、私が不幸になるわけがない。

ガサガサガサ

独り物思いに耽っていると、誰かが近付いてくる気配を感じ咄嗟に隠れた。
大抵、パーティーを抜け出すヒロインのお約束は二通り。一つは攻略対象が現れ秘密の時間。もう一つは悪役令嬢に雇われた者に拐われるも、攻略対象達が気付き速やかに解決。悪役令嬢は牢獄や没落追放エンド。

果たしてどのパターンでくるのだろうかと予想しながら息を殺した。

「クレアベール様、もう諦めになった方が…」

後ろ姿しか見えないがフィリップス子爵令嬢の声のように聞こえた。髪は下ろしているが彼女の好きな黄色いリボンも見える。

「貴方は彼らが正しいと考えているの?」

「正しいも何も…聖女様はそういうものだと…」

「あんなものは迷信であって、確かではないというのに…」

「そうだったとしても、古くからある我が国の伝統ですから…」

「伝統は大事よ、だけど間違っていると気付いたのなら廃止するべきなのよ」

「伝統や慣例は大事かと…ジョバルディー公爵は、以前も慣例に異を唱えたとお聞きしますが…」

「当たり前です。非人道な行いなど慣例だからといって受け入れるべきではないわ」

「ですが、高位貴族の中で反対しているのは、ジョバルディー公爵だけです…」

「それが不愉快なのです。なぜ皆さん受け入れるのか、おかしいと思ったことはありませんの?」

「…おかしいと思ったことはありません。実際、聖女を受け入れた家門は能力的にも繁栄しましたから…」

「家門の繁栄は本人の努力よ。何故他人の功績にしてしまうの?それに、彼女も彼女よ。聖女と言われて本気にして…あの方は我が国の聖女の役割を理解していないのよ。勘違いするなと言いたいですが、あの方が勘違いされてしまう要因としてクリスやエレンターナ様の行動よ。それに貴女もですよ?」

クレアベールはきっと私が聖女ということで、婚約者という立場や公爵令嬢として築き上げたものが脅かされるのを恐れて私に八つ当たりしている。
私を聖女と受け入れてさえいれば、こんな事にはならなかったのに…

「ふふっ…私ですか?」

それに…シェリルの返事にも少し違和感を感じた。
シェリルはヒロインのお助けキャラなのに、悪役令嬢とも仲が良いなんて…なんだか裏切られた気分になった。
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