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パーティー会場
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二人の会話を盗み聞きしていたが、クレアベールの言葉は不愉快になるだけだと感じたので会場に戻ることにした。
「何処に行っていたんだ?」
会場に戻ってすぐの私を見つけるというのは、きっとクリストフ王子は私の事を探していたに違いない。私の事を皆が出迎えてくれる光景に今までの不満が消え去っていく。
「心配しましたよ?」
「へぁっ?」
心配したと声を掛けてきた女性はシェリルだった。
何故私の目の前にいるの?
外でクレアベールと話している彼女より、私は先に戻ってきたというのに…
「どうしました?」
「…フィリップス子爵令嬢は、先ほど外に居たのでは?」
「ん?私はずっと会場におりましたよ」
笑顔で告げる彼女に、嘘を吐いているような後ろめたさは感じなかった。
「えぇ、シャナはずっと私達と一緒にいましたがどうかなさったんですか?」
エレンターナも彼女が会場にいたことを証言した。
確かに今、目の前にいる令嬢は複雑に髪を結い上げリボンの色はピンクだ。
急いで戻ってきて髪を結い上げるには時間が足りない…
なら、クレアベールと一緒にいたのはフィリップス子爵令嬢と勘違いしていたの?であれば、あの場にいた令嬢は誰だったのだろうか?
「貴方、まだここにいらしたの?早く出ていくべきではなくて?」
混乱している私の後ろからクレアベールが声を掛けてきた。
「いい加減身分を弁えなさい」
誰になんと言われようと、クレアベールは私を受け入れないようだった。
頑固というより、もう後に引けない感じに見える。
「私は聖女と判定されました。なので、これからは国の為にお仕えする所存です」
「国の為?我が国は貴方を必要とすることなど何もないわ」
美しい顔のクレアベールなのに、やはり後半にくると苦悶の表情ばかりだ。
彼女に気を取られていたが、高位貴族や聖女が集まり不穏な空気を醸し出していれば会場内の注目を集めてしまうのは必然だった。
「聖女?」
「やはり、あの子は聖女なの?」
「そうではないの?ジョバルディー公爵令嬢の口から「聖女」と聞きましたもの」
今までは噂が広まり私を聖女かもしれないと半信半疑だったが、公表は避けていた。それを公爵令嬢が口にしたことで一気に真実味が増す。
「皆に伝えなければならないことがある」
ざわめきだす場内を静めるため、クリストフ王子が場を制した。
私はクリストフ王子の横に立ち、注目を浴びる。
「こちらの令嬢は司祭の判定のもと聖女と判明した」
焦らすようにゆっくりと真実を告げるクリストフに、皆が引き込まれていく。
「以前から噂があり気付いていた者も居ただろうが、約二十年ぶりの聖女の為に我々は慎重にならざるを得なかった。王族に対して様々な噂が聞こえていたが、誤解させるような選択を選んだのは私達の責任だと理解している。だが、我々の行動は国のためだと考えてほしい」
不貞のような関係と誤解されても、否定しないでいたのは聖女を守るため…
と聞こえた。この聖女の為は私の為でなく、国の為と聞こえる。
王子は私より悪役令嬢を選んだの?
「そして、今後聖女は王宮で保護されることになる」
「えっ?」
突然の王子の発表に私も驚いた。そんな話しは男爵からも聞かされていない。
「ワンダーソン男爵とは話がついている。後は貴方次第だ」
あっ、お父様とは話がついているのね…外堀を埋められた?
残すは私次第…
「断りなさい」
クレアベールの声が響く。
「そうだな、我々も無理にとは言わない。聖女であっても国に仕えなければならないということではない。私も強制するつもりはない」
クリストフ王子も決断は私に委ねてくれた…だが、この大勢の前で「国に仕えたくありません」と宣言しても許されるのか?と疑問に思う。
逃げ道を塞がれた私の答えは…
「何処に行っていたんだ?」
会場に戻ってすぐの私を見つけるというのは、きっとクリストフ王子は私の事を探していたに違いない。私の事を皆が出迎えてくれる光景に今までの不満が消え去っていく。
「心配しましたよ?」
「へぁっ?」
心配したと声を掛けてきた女性はシェリルだった。
何故私の目の前にいるの?
外でクレアベールと話している彼女より、私は先に戻ってきたというのに…
「どうしました?」
「…フィリップス子爵令嬢は、先ほど外に居たのでは?」
「ん?私はずっと会場におりましたよ」
笑顔で告げる彼女に、嘘を吐いているような後ろめたさは感じなかった。
「えぇ、シャナはずっと私達と一緒にいましたがどうかなさったんですか?」
エレンターナも彼女が会場にいたことを証言した。
確かに今、目の前にいる令嬢は複雑に髪を結い上げリボンの色はピンクだ。
急いで戻ってきて髪を結い上げるには時間が足りない…
なら、クレアベールと一緒にいたのはフィリップス子爵令嬢と勘違いしていたの?であれば、あの場にいた令嬢は誰だったのだろうか?
「貴方、まだここにいらしたの?早く出ていくべきではなくて?」
混乱している私の後ろからクレアベールが声を掛けてきた。
「いい加減身分を弁えなさい」
誰になんと言われようと、クレアベールは私を受け入れないようだった。
頑固というより、もう後に引けない感じに見える。
「私は聖女と判定されました。なので、これからは国の為にお仕えする所存です」
「国の為?我が国は貴方を必要とすることなど何もないわ」
美しい顔のクレアベールなのに、やはり後半にくると苦悶の表情ばかりだ。
彼女に気を取られていたが、高位貴族や聖女が集まり不穏な空気を醸し出していれば会場内の注目を集めてしまうのは必然だった。
「聖女?」
「やはり、あの子は聖女なの?」
「そうではないの?ジョバルディー公爵令嬢の口から「聖女」と聞きましたもの」
今までは噂が広まり私を聖女かもしれないと半信半疑だったが、公表は避けていた。それを公爵令嬢が口にしたことで一気に真実味が増す。
「皆に伝えなければならないことがある」
ざわめきだす場内を静めるため、クリストフ王子が場を制した。
私はクリストフ王子の横に立ち、注目を浴びる。
「こちらの令嬢は司祭の判定のもと聖女と判明した」
焦らすようにゆっくりと真実を告げるクリストフに、皆が引き込まれていく。
「以前から噂があり気付いていた者も居ただろうが、約二十年ぶりの聖女の為に我々は慎重にならざるを得なかった。王族に対して様々な噂が聞こえていたが、誤解させるような選択を選んだのは私達の責任だと理解している。だが、我々の行動は国のためだと考えてほしい」
不貞のような関係と誤解されても、否定しないでいたのは聖女を守るため…
と聞こえた。この聖女の為は私の為でなく、国の為と聞こえる。
王子は私より悪役令嬢を選んだの?
「そして、今後聖女は王宮で保護されることになる」
「えっ?」
突然の王子の発表に私も驚いた。そんな話しは男爵からも聞かされていない。
「ワンダーソン男爵とは話がついている。後は貴方次第だ」
あっ、お父様とは話がついているのね…外堀を埋められた?
残すは私次第…
「断りなさい」
クレアベールの声が響く。
「そうだな、我々も無理にとは言わない。聖女であっても国に仕えなければならないということではない。私も強制するつもりはない」
クリストフ王子も決断は私に委ねてくれた…だが、この大勢の前で「国に仕えたくありません」と宣言しても許されるのか?と疑問に思う。
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