【完結】ホラー乙女ゲームに転生しちゃった…

天冨 七緒

文字の大きさ
50 / 52

再会

しおりを挟む
コンコンコン

「私だ」

ガチャ

「やぁ、会いたかったよ、愛しい人」

「まさか、こんなに早くいらっしゃるとは思いませんでしたわ」

ここはトルニダード王国の外れ、隣国に最も近く設備も整っている為に貴族御用達の宿。大概の者は、ここで一泊してから隣国に行く。
扉の前には護衛が居るものの、主人に事前に許可なく面会が許される者が来訪した。
男は女の部屋へ入っていく。
二人はソファに横並びで座り、男は女の髪に触れ香りに満足する。

「漸く癒される」

「何を仰っているんですか、ご自分で選択しておきながら」

「こんな機会は滅多にないからね」

「全く、信じられませんわ」

女は男の選択したことが許せないでいた。

「ふふっ、君があんなにも私のために怒りを露にしてくれるのが嬉しくてついね」

女が怒りを表現していても、男はそれは自分を愛してくれているからだと受け入れていた。

「まぁ、私をあんな醜い姿にさせて喜んでいるなんて悪趣味ですわ」

「私はどんな姿でも愛しているが、その矛先は私であってほしい」

「私はあのような姿、見られたくありません」

「愛を感じた」

男は女の耳元で囁いた。

「…私は、私の隣に立つ方が野蛮な人になってほしくなかっただけですわ」

女は凛として振る舞うも、男は女の色香を堪能する。

「あぁ」

女が真剣に話すも、男は女の唇を求め距離を縮める。

「いけません…あんなものを口にしたのに口付けを交わすことは出来ませんわ」

女は男の口を手で軽く押し返し、男は女の言葉に分かりやすく動揺している。

「そんな…それは…いつまでだ?」

「…今日は我慢なさいませ」

男の切なる思いにも負けることなく、女は拒絶を見せた。

「今日だけだな?」

「えぇ」

「分かった」

男は女の言葉を理解したのか、口付けは諦めるものの真正面から抱き寄せる。

「はぁ…貴方の傍は幸せだ」

「…困った人ですね」

女も満更でないようで、男を優しく抱き締める。二人は互いに信頼し、愛し合っているのが溢れていた。
誰が見ても良好な二人だが、会話から最近は距離があったことを窺える。

「私だって、無理強いするつもりはないがあちらも「国のためになるのであれば」と言ったのでね」

「誤解させるような言い回しばかりではありませんか」

「ふっ、私も必死だったのかもしれないな」

「あの方も隣国へ行けば良いものを…」

隣国は聖女信仰が盛んで、トルニダード国とは扱いが全く違う。

「私の愛おしい人があんなにも助言したというのに、耳を貸さないなんて信じられないな」

「皆さんがあの方の耳を塞いでいたではありませか」

「私なら誰の言葉より貴方の言葉を信じますよ」

二人は次第に甘い雰囲気に。

そして、翌日から宣言通り隣国へ行く女に男もお供として着いていき、学園で見せていた姿とは違う二人は恋人同士だった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど

紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。 慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。 なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。 氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。 そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。 「……俺にかけた魅了魔法を解け」 私、そんな魔法かけてないんですけど!? 穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。 まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。 人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い” 異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。 ※タイトルのシーンは7話辺りからになります。 ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。 ※カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...