【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒

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儀式

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 第三木曜日。

 本日は朝早く大聖堂に向かう。
 到着し初めて踏み入れるギルべネル国の大聖堂に圧倒されていると、既に儀式を受ける子供達が緊張した様子で順番を待っている。
 私はその中に加わることは無く、彼らが終わった最後に儀式を受ける予定。
 同伴した保護者と同じように席に座り彼らを見守り儀式がどんなものなのかを眺めていた。
 子供達の儀式はなんの問題もなく終えては両親と一緒に大聖堂を後にする。
 今日は朝から晴天で、話に聞いていた聖女の時とは違う。
 きっと……今日、聖女は現れない。

「ケイトリーン嬢」

「……ジェイコブ王子」

 名前を呼ばれ相手を確認すれば王子の姿があった。

「儀式を見学させてもらうよ」

 いくら私が「聖女ではない」と宣言しても、召喚に巻き込まれてしまった事実がある。
 それでも彼は自分の目で確かめないと気が済まないのだろう。
 本物の聖女であれば水晶が反応するらしいが、私に反応するとは思えない。
 儀式を終えた子供達が一人また一人と大聖堂を去って行く。

「さぁ、行こうか」

 誰もいなくなるのを確認すると王子が席を立ち祭壇へと誘う。

「お待たせいたしました」

 教皇が説明をしてくれるが、子供達を見ていたので手順は分かっている。

「ではまずは祈りを捧げてから、水晶に手を翳してください」

 子供達と同じ事をするのだが、修道士の人数が増えたように感じる。
 私としては期待するのは止めてほしい。
 私は……聖女ではないから……

「では、こちらで祈りを」

「……ふふっ」

 膝をつき祈りを捧げても何の変化も起こらないことに笑ってしまう。

「それではあちらに移動を」

 私は水晶の前に移動する。

「はい」

 水晶の前に立ち緊張しながら手を翳す。

「……何も……反応しませんね」

「……はい」

 私は聖女ではないので反応しないのは当然だ。
 分かっていたのに……少し期待してしまっていた自分がいた。
 それは周囲も同じようで『召喚された』という事で、希望を見てしまったらしい。
 「聖女ではない」と言った私の宣言通り水晶に変化が見られないと、教皇は落胆している。

「これで儀式は終わりです……えっと……王宮に一旦戻られますよね? 」

 私が聖女ではないと確定した事で、今後の私を確認された。

「はい。一度王宮へ戻り聖女ではなかったことと、今後について報告しなければなりません」

「そうですか……」

「はい」

「あぁ……ケイトリーン嬢、私も王宮へ戻るよ」

 教皇と私の会話に王子は遠慮がちに加わる。
 私が聖女でないと確信すると、王子はそそくさと王宮へ戻っていく。
 潔い彼に少し笑いがこみ上げてしまう。

「えっと……国内を旅すると聞いたのですか……」

 聖女ではないと宣言してはいても、このような結果になり気まずい雰囲気。
 颯爽と帰った王子とは違い司祭は何とかこの状況を緩和させようとしてくれているのが伝わる。

「はい。折角新しい国に来たので、色んなものを見てみたいと思っております」

「そうなんですね……もしよければ、聖女様がどのような生活をしていたのか教えていただく事は出来ませんか? 」

「聖女様の生活ですか? 」

「はい。我が国は聖女様を信仰しておりますが、正しいのか間違っていたのかを今一度検討が必要ではないかと思いまして」

「私で……お役に立てるのか分かりませんが、聖女様の一日の行動くらいならお話しできます」

「それは有り難い」

 一日の行動を話すだけなのに、司祭はとても嬉しそうな表情を見せる。
 それの何が嬉しいのか私には分からない。
 ただ話すだけなので場所はここでも構わないのに、教皇に奥の部屋へと案内される。
 儀式を終えれた大聖堂の祈りの場は一般に解放され、全ての国民の出入りが自由な時間となる。
 
「私が知る聖女様の一日は……夜明け前に王宮の祈りの場で祈りを捧げ、朝食を頂いた後は祈りの場を三時間程掃除を行います。そして礼儀作法や教養を学び昼食を頂いた後は王都にある聖堂に祈りを捧げます。その後掃除をして聖堂に訪れた方の悩みを聞き、王宮に戻り再び教育を受けます。夕食後は祈りを捧げ嘆願書や国内の世情の報告書に目を通して休みます」

 普段の生活はこのような感じだった。

「……毎日そのような生活を毎日送っていたのですか? 聖女様に休みはあったのでしょうか? 」

「休みですか? 毎日休んでいましたよ? 」

 私としては正直に答えているのだが、なんだが噛み合っていないように思えた。
 毎日ゆっくりと眠ることが出来たので私としては休息は取っている。
 あの頃の私は聖女であり、王子の婚約者だった為に早急に王妃教育を受けなければならなかった。
 能力は消失したとはいえ聖女としての役割を熟さなければならなかったので、王妃教育の時間は足りず夜中まで勉強をしていた。 

「そう……ですか……」

 私の話を聞いた教皇は何か考え込んでいる。
 その様子を紅茶を頂きながら観察していると、勢いよく扉が開く。

「司祭様っ」

 息を切らした男が登場した。

「どうした? 」

「大変な事になりました」

「大変な事? なんだ? 」

「儀式の結果を伝える煙なのですか……白い煙が上がっています」

「なんだとっ」

 白い煙が何を意味するのか分からないが、皆が慌て混乱している。
 私は続々と集まる人達の様子を存在を消して窺う。
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