【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒

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着実に

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 着実にパーティーの準備が整っていく。
 ドレスはあれからデザイナーが何度も訪れ、色と形が決まり完成品が届くのを待つのみ。
 ドレスの雰囲気が決定した事で、宝石や靴が王族から届けられた。
 そして、王子とのダンスを披露する為に講師を手配されたが習得済みと判断され確認程度の授業を受けている。

「本日はパートナーを講師ではなくジェイコブ王子に来ていただきました」

 以前エルナディスに練習パートナーで希望を聞かれ、私の勘違いから王子の名前を出してしまった事がある。
 まさか本当に忙しい王子に話をするとは思っていなかった。

「……王子様、この度は私のワガママに付き合わせてしまい申し訳ありません」

「いや、構わない。私も気分転換がしたかったので、聖女の申し出に感謝する」

 本当ならダンスよりも休息したいだろうに、笑顔で対応してくれる王子は優しすぎる。
 王子の後ろに控えているマドリゲスなんて、感情を隠すことなく私を睨みつけている。
 本物の聖女でない私が王子の貴重な休息時間を奪うことに我慢ならないのだろう。
 私もそんなつもりなかったんです……許してください。

「では、曲をお願いします」

 王子に触れることも申し訳ないが、付き合って頂くからには一度で終わらせる。
 間違えても王子の時間を長引かせるわけにはいかない。
 緊張感が増す中、王子とのダンスに集中する。
 ……集中したいのだが、王子の視線が気になって仕方がない。
 過去、聖女兼王子の婚約者だった私はあちらの国で王子とダンスを何度も経験したことがある。
 ダンスは慣れているのだが、こんなに見られたことは無かった。
 ダンス中に相手と視線が合うなんてことないのに……まさか私はダンス下手なのだろうか?

「お二人とも素晴らしいダンスでした。この場所がパーティー会場のように華やかでしたわ」

 エルナディスのお世辞は王子へのもので、私がその言葉を受け取ってはいけないのを分かっている。

「聖女……様は……以前ダンスの経験があるのか? 」

「えっ? 」

 王子の質問に頭が真っ白になってしまった。

「そうなのです。聖女様は私が教えることのない程、習得されておりました」

 エルナディスは得意げに事実を告げているだけなのだが、私としては逃げ道を探している。
 聖女の世話係が「ダンスできます」っておかしい? おかしくない? どっち?

「えっと……はい」

 王子は更に質問をしたそうな表情を見せるが、エルナディスの存在もありそれ以上追及されることがなく安心した。
 一曲で当日私が王子に恥をかかせることがないと判断すると、王子は練習場を去って行く。
 マドリゲスは何度も振り返り私を確認する。
 
「ジェイコブ王子との相性も問題なさそうですので、本番も大丈夫そうですね」

「……ありがとうございます」

 王子とのダンスの調整も終わったので、これで本番を待つだけになった。 
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