3 / 75
恋愛小説・下
しおりを挟む
今日は、今人気の劇に向かう。
彼が観劇に興味があるなんて知らなかったし、女性が好むこの劇が人気だというのを誰に聞いたのか……
聞きたいことは沢山ある。
「あの……どうして私を誘うのですか?」
「どうしてって婚約者だから」
「婚約者……」
それは、義務って事?
「過去の俺を思い出せないのなら、新しい思い出を作ろうと思って」
「新しい思い出……ですか? 」
思い出って、私達にそんなものは何一つない。
「まぁ、今日は珍しい方とご一緒されているのですね」
突然声を掛けてきたのは、彼の恋仲と噂される令嬢。
令嬢は私を値踏みするように全身を確認し「フッ」と笑う。
私は年齢の割に幼く見えるのに対して、令嬢は私より一つ年下なのだがとても大人っぽい。
多くの男性は、私より令嬢に目を奪われるのも仕方がない。
その事を令嬢も自負している様子。
私が彼の婚約者だと知りながら挑発するように彼の腕に絡みつく。
「ねぇ、今度はいつお会いできますか? 」
目の前で繰り広げられる光景に不快感を覚え、その場から離れたくなる。
最近では彼の行動に絆され始めていたが、噂は本当だったのだと突きつけられた。
「令嬢とお約束があったのですね、私の事は気にせずどうぞお二人でお話になって」
二人を残し、私は先に馬車へと向かう。
少しでも早く二人を視界から外したかった。
歩きながら「やはり婚約は解消するべきね」と決意。
「待ってくれ」
「キャッ」
突然腕を引かれ、強引に振り向かされる。
目の前には彼の姿があったが、先程の令嬢の姿は確認できない。
「私のことは気にせず、先程の令嬢と……」
「誤解している。あの令嬢とは何の関係もないっ」
関係もないと言うも、あの令嬢は自然に彼の腕に絡みついていたのを思い出す。
「そうなのですか? 」
彼は強く否定するも私には信用できなかったし、彼の言葉も大して響かない。
「あの令嬢には何度か声を掛けられたが、そういう関係じゃないんだ」
「そうなのですね」
「信じてほしい」
彼が必死になればなる程、私の心は冷めていく。
「私は記憶喪失ですので貴方様がどのような方と恋仲にあろうと私には何も言えませんので」
「俺は貴方との婚約解消を望んだことなど一度もない」
「そうですか、わかりました」
もう彼との会話も疲れてしまい笑顔で終わらせた。
一人屋敷に戻るも彼はその後も私に彼色のドレスや宝石が贈り、社交界では必ずエスコートするようになった。
彼からの婚約解消を待っていたのに、いつまで経っても私の元へ婚約解消の書類が届くことが無い。
それからも彼は恋人のように私の婚約者を演じている。
そんな風に振る舞っていれば、私達の関係性に驚いた令嬢達から質問攻めにあう。
お茶会などに頻繁に呼ばれ「婚約者と良好な関係を築くにはどうしたらいいのか教えてほしい」とまで言われるようになってしまった。
ここで私が「婚約者と良好な関係性を築くには~」なんて語りその後婚約解消しましたとなれば、なんと噂されるのか考えたくもない。
「婚約解消は私から言い出すしかないのね……」
そして次の婚約者との時間、私は婚約解消を提案した。
「どうしてっ、俺は婚約解消なんて……」
彼がどんな表情を見せようと、私は一切同情などできなかった。
「私が記憶喪失だからです」
「俺は構わない」
「私が構うのです」
「俺がフォローする」
「……どうしてそこまで婚約解消を拒むのですか? 」
「どうしてって、俺は……その……」
「政略的な理由ですか? 」
「違うっ。俺は……その……あなたの事が……」
「私が何です? 」
「だから……その……」
彼が何を言いたいのか要領を掴めない。
それに普段無表情の彼の顔が赤らめ始める。
「どうしたんですか? 苦しいんですか? 」
「俺は……貴方に……ひ……ぼ……」
「なんですか? 」
「俺は……だから……一目惚れ……したんですっ」
「……え? 」
彼は今なんて言った?
一目惚れ?
一目惚れって、一目見て相手に惚れたっていうアレ?
彼が私に?
そんな事あるわけない。
婚約してからずっと無表情で笑顔なんて見せてくれた事はなかったし、会話もぶっきら棒だった。
そんな彼が私に一目惚れ?
信じられない……
だけど顔を真っ赤にさせている彼を見ると、私もなんだか顔が熱い。
だって……
初めて彼が婚約者だと紹介された時、私も彼の事を……
彼が観劇に興味があるなんて知らなかったし、女性が好むこの劇が人気だというのを誰に聞いたのか……
聞きたいことは沢山ある。
「あの……どうして私を誘うのですか?」
「どうしてって婚約者だから」
「婚約者……」
それは、義務って事?
「過去の俺を思い出せないのなら、新しい思い出を作ろうと思って」
「新しい思い出……ですか? 」
思い出って、私達にそんなものは何一つない。
「まぁ、今日は珍しい方とご一緒されているのですね」
突然声を掛けてきたのは、彼の恋仲と噂される令嬢。
令嬢は私を値踏みするように全身を確認し「フッ」と笑う。
私は年齢の割に幼く見えるのに対して、令嬢は私より一つ年下なのだがとても大人っぽい。
多くの男性は、私より令嬢に目を奪われるのも仕方がない。
その事を令嬢も自負している様子。
私が彼の婚約者だと知りながら挑発するように彼の腕に絡みつく。
「ねぇ、今度はいつお会いできますか? 」
目の前で繰り広げられる光景に不快感を覚え、その場から離れたくなる。
最近では彼の行動に絆され始めていたが、噂は本当だったのだと突きつけられた。
「令嬢とお約束があったのですね、私の事は気にせずどうぞお二人でお話になって」
二人を残し、私は先に馬車へと向かう。
少しでも早く二人を視界から外したかった。
歩きながら「やはり婚約は解消するべきね」と決意。
「待ってくれ」
「キャッ」
突然腕を引かれ、強引に振り向かされる。
目の前には彼の姿があったが、先程の令嬢の姿は確認できない。
「私のことは気にせず、先程の令嬢と……」
「誤解している。あの令嬢とは何の関係もないっ」
関係もないと言うも、あの令嬢は自然に彼の腕に絡みついていたのを思い出す。
「そうなのですか? 」
彼は強く否定するも私には信用できなかったし、彼の言葉も大して響かない。
「あの令嬢には何度か声を掛けられたが、そういう関係じゃないんだ」
「そうなのですね」
「信じてほしい」
彼が必死になればなる程、私の心は冷めていく。
「私は記憶喪失ですので貴方様がどのような方と恋仲にあろうと私には何も言えませんので」
「俺は貴方との婚約解消を望んだことなど一度もない」
「そうですか、わかりました」
もう彼との会話も疲れてしまい笑顔で終わらせた。
一人屋敷に戻るも彼はその後も私に彼色のドレスや宝石が贈り、社交界では必ずエスコートするようになった。
彼からの婚約解消を待っていたのに、いつまで経っても私の元へ婚約解消の書類が届くことが無い。
それからも彼は恋人のように私の婚約者を演じている。
そんな風に振る舞っていれば、私達の関係性に驚いた令嬢達から質問攻めにあう。
お茶会などに頻繁に呼ばれ「婚約者と良好な関係を築くにはどうしたらいいのか教えてほしい」とまで言われるようになってしまった。
ここで私が「婚約者と良好な関係性を築くには~」なんて語りその後婚約解消しましたとなれば、なんと噂されるのか考えたくもない。
「婚約解消は私から言い出すしかないのね……」
そして次の婚約者との時間、私は婚約解消を提案した。
「どうしてっ、俺は婚約解消なんて……」
彼がどんな表情を見せようと、私は一切同情などできなかった。
「私が記憶喪失だからです」
「俺は構わない」
「私が構うのです」
「俺がフォローする」
「……どうしてそこまで婚約解消を拒むのですか? 」
「どうしてって、俺は……その……」
「政略的な理由ですか? 」
「違うっ。俺は……その……あなたの事が……」
「私が何です? 」
「だから……その……」
彼が何を言いたいのか要領を掴めない。
それに普段無表情の彼の顔が赤らめ始める。
「どうしたんですか? 苦しいんですか? 」
「俺は……貴方に……ひ……ぼ……」
「なんですか? 」
「俺は……だから……一目惚れ……したんですっ」
「……え? 」
彼は今なんて言った?
一目惚れ?
一目惚れって、一目見て相手に惚れたっていうアレ?
彼が私に?
そんな事あるわけない。
婚約してからずっと無表情で笑顔なんて見せてくれた事はなかったし、会話もぶっきら棒だった。
そんな彼が私に一目惚れ?
信じられない……
だけど顔を真っ赤にさせている彼を見ると、私もなんだか顔が熱い。
だって……
初めて彼が婚約者だと紹介された時、私も彼の事を……
488
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~
クロユキ
恋愛
公爵家の家系に生まれたジェシカは一人娘でもあり我が儘に育ちなんでも思い通りに成らないと気がすまない性格だがそんな彼女をイヤだと言う者は居なかった。彼氏を作るにも慎重に選び一人の男性に目を向けた。
同じ公爵家の男性グレスには婚約を約束をした伯爵家の娘シャーロットがいた。
ジェシカはグレスに強制にシャーロットと婚約破棄を言うがしっこいと追い返されてしまう毎日、それでも諦めないジェシカは貴族で集まった披露宴でもグレスに迫りベランダに出ていたグレスとシャーロットを見つけ寄り添う二人を引き離そうとグレスの手を握った時グレスは手を払い退けジェシカは体ごと手摺をすり抜け落下した…
誤字脱字がありますが気にしないと言っていただけたら幸いです…更新は不定期ですがよろしくお願いします。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる