【完結】恋愛に向いていない女性の記録。婚約者との関係改善を目指して記憶喪失のフリをしたら……婚約解消になった編

天冨 七緒

文字の大きさ
12 / 75

何故?

 お茶会から解放され、屋敷へ向かう馬車ではひたすら頬をマッサージする。

「あぁ……疲れた」

 何とか令嬢達からの湧いてくる追及を交わし続けた。
 
「確かにあの二人、婚約発表しないなぁ……もう、そろそろしてもいい頃なのに」

 私との婚約解消は既に公表され、貴族に知れ渡っている。
 婚約解消された令嬢側でなければ、、時間を置くことなく新な婚約を発表してもとやかく言われることは無い。
 男性側は言われることは少ないが、女性側は違う。
 今回のというのは、私ではない。
 あちらの女性だ。
 今の彼女は、侯爵令嬢の婚約者を奪った令嬢として社交界に知れ渡っている。
 令嬢自身は、以前から令息を中心に名前が挙がっていた。
 それだけでなく『自身の婚約者が令嬢に視線を送っている』とか、『誕生日には少し豪華な物を贈っていた』とか些細なことだが、令嬢側はあの女性を警戒していた。
 そんな時に、侯爵令嬢の婚約者を奪ったとなれば噂をしない貴族はいない。
 お茶会では婚約者を奪われた私への嫌味の中に、同情も隠れているのに気が付いていた。
 言葉には出さないが、婚約者があの令嬢に夢中で蔑ろにされていた令嬢もいる。
 私ではなかったら、自分かもしれないと思っていたに違いない。
 きっと、二人が婚約したら再び令嬢達の餌食になるだろう。
 それに備えなければ……

「……婚約発表なかなか無いわね」

 いくら気まずい関係でも、格下の相手が高位貴族を婚約発表にあえて呼ばないという選択肢はない。
 招待状が届き参加する・しないはこちらが判断する事。
 私が婚約し伯爵家の彼を呼ばないという選択はあっても、伯爵家の彼らが侯爵家の我が家に婚約の報せも婚約発表パーティーの招待状も送らないというのはあってはならない。
 相手が犯罪者や謀反の疑いのある者なら別だ。
 時と場合による。
 婚約・結婚の発表は『今後とも、この二人をよろしくお願いします』という意味だ。
 そこに高位貴族を外すというのは『あなたと我が家はお付き合いするつもりはありません』という宣言に取られてしまっても仕方がない。

「って、私がここまで気にすることは無いのか……」

 招待状が来てから考えればいい事で、招待状もないのに考える必要はない。
 参加する・しないはきっと父が判断するだろう。
 彼らの事を考えるのを止め、観劇を見たりカフェに出向いたりと外出することが多くなった。
 
「やぁ、偶然だセラフィーナ」

 望んでもいない偶然。
 すっかり忘れていたのに、声を聞いた瞬間思い出してしまった。

「……私達は既に婚約が解消されておりますので、立場を弁えた呼び名というものがあると思います」

 侯爵令嬢の私を、親しくもない伯爵令息が安易に名前を呼ぶことは出来ない。
 彼はそんなことも分からないのだろうか?
 それとも婚約解消したが、一度婚約した関係なのだから対等と勘違いしているのか?
感想 61

あなたにおすすめの小説

殿下の婚約者は、記憶喪失です。

有沢真尋
恋愛
 王太子の婚約者である公爵令嬢アメリアは、いつも微笑みの影に疲労を蓄えているように見えた。  王太子リチャードは、アメリアがその献身を止めたら烈火の如く怒り狂うのは想像に難くない。自分の行動にアメリアが口を出すのも絶対に許さない。たとえば結婚前に派手な女遊びはやめて欲しい、という願いでさえも。  たとえ王太子妃になれるとしても、幸せとは無縁そうに見えたアメリア。  彼女は高熱にうなされた後、すべてを忘れてしまっていた。 ※ざまあ要素はありません。 ※表紙はかんたん表紙メーカーさま

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~

クロユキ
恋愛
公爵家の家系に生まれたジェシカは一人娘でもあり我が儘に育ちなんでも思い通りに成らないと気がすまない性格だがそんな彼女をイヤだと言う者は居なかった。彼氏を作るにも慎重に選び一人の男性に目を向けた。 同じ公爵家の男性グレスには婚約を約束をした伯爵家の娘シャーロットがいた。 ジェシカはグレスに強制にシャーロットと婚約破棄を言うがしっこいと追い返されてしまう毎日、それでも諦めないジェシカは貴族で集まった披露宴でもグレスに迫りベランダに出ていたグレスとシャーロットを見つけ寄り添う二人を引き離そうとグレスの手を握った時グレスは手を払い退けジェシカは体ごと手摺をすり抜け落下した… 誤字脱字がありますが気にしないと言っていただけたら幸いです…更新は不定期ですがよろしくお願いします。

【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました

Rohdea
恋愛
誰かが、自分を呼ぶ声で目が覚めた。 必死に“私”を呼んでいたのは見知らぬ男性だった。 ──目を覚まして気付く。 私は誰なの? ここはどこ。 あなたは誰? “私”は馬車に轢かれそうになり頭を打って気絶し、起きたら記憶喪失になっていた。 こうして私……リリアはこれまでの記憶を失くしてしまった。 だけど、なぜか目覚めた時に傍らで私を必死に呼んでいた男性──ロベルトが私の元に毎日のようにやって来る。 彼はただの幼馴染らしいのに、なんで!? そんな彼に私はどんどん惹かれていくのだけど……

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。

MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。 記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。 旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。 屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。 旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。 記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ? それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…? 小説家になろう様に掲載済みです。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

【完結】そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして

Rohdea
恋愛
──ある日、婚約者が記憶喪失になりました。 伯爵令嬢のアリーチェには、幼い頃からの想い人でもある婚約者のエドワードがいる。 幼馴染でもある彼は、ある日を境に無口で無愛想な人に変わってしまっていた。 素っ気無い態度を取られても一途にエドワードを想ってきたアリーチェだったけど、 ある日、つい心にも無い言葉……婚約破棄を口走ってしまう。 だけど、その事を謝る前にエドワードが事故にあってしまい、目を覚ました彼はこれまでの記憶を全て失っていた。 記憶を失ったエドワードは、まるで昔の彼に戻ったかのように優しく、 また婚約者のアリーチェを一途に愛してくれるようになったけど──…… そしてある日、一人の女性がエドワードを訪ねて来る。 ※婚約者をざまぁする話ではありません ※2022.1.1 “謎の女”が登場したのでタグ追加しました