【完結】恋愛に向いていない女性の記録。婚約者との関係改善を目指して記憶喪失のフリをしたら……婚約解消になった編

天冨 七緒

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何故?

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 お茶会から解放され、屋敷へ向かう馬車ではひたすら頬をマッサージする。

「あぁ……疲れた」

 何とか令嬢達からの湧いてくる追及を交わし続けた。
 
「確かにあの二人、婚約発表しないなぁ……もう、そろそろしてもいい頃なのに」

 私との婚約解消は既に公表され、貴族に知れ渡っている。
 婚約解消された令嬢側でなければ、、時間を置くことなく新な婚約を発表してもとやかく言われることは無い。
 男性側は言われることは少ないが、女性側は違う。
 今回のというのは、私ではない。
 あちらの女性だ。
 今の彼女は、侯爵令嬢の婚約者を奪った令嬢として社交界に知れ渡っている。
 令嬢自身は、以前から令息を中心に名前が挙がっていた。
 それだけでなく『自身の婚約者が令嬢に視線を送っている』とか、『誕生日には少し豪華な物を贈っていた』とか些細なことだが、令嬢側はあの女性を警戒していた。
 そんな時に、侯爵令嬢の婚約者を奪ったとなれば噂をしない貴族はいない。
 お茶会では婚約者を奪われた私への嫌味の中に、同情も隠れているのに気が付いていた。
 言葉には出さないが、婚約者があの令嬢に夢中で蔑ろにされていた令嬢もいる。
 私ではなかったら、自分かもしれないと思っていたに違いない。
 きっと、二人が婚約したら再び令嬢達の餌食になるだろう。
 それに備えなければ……

「……婚約発表なかなか無いわね」

 いくら気まずい関係でも、格下の相手が高位貴族を婚約発表にあえて呼ばないという選択肢はない。
 招待状が届き参加する・しないはこちらが判断する事。
 私が婚約し伯爵家の彼を呼ばないという選択はあっても、伯爵家の彼らが侯爵家の我が家に婚約の報せも婚約発表パーティーの招待状も送らないというのはあってはならない。
 相手が犯罪者や謀反の疑いのある者なら別だ。
 時と場合による。
 婚約・結婚の発表は『今後とも、この二人をよろしくお願いします』という意味だ。
 そこに高位貴族を外すというのは『あなたと我が家はお付き合いするつもりはありません』という宣言に取られてしまっても仕方がない。

「って、私がここまで気にすることは無いのか……」

 招待状が来てから考えればいい事で、招待状もないのに考える必要はない。
 参加する・しないはきっと父が判断するだろう。
 彼らの事を考えるのを止め、観劇を見たりカフェに出向いたりと外出することが多くなった。
 
「やぁ、偶然だセラフィーナ」

 望んでもいない偶然。
 すっかり忘れていたのに、声を聞いた瞬間思い出してしまった。

「……私達は既に婚約が解消されておりますので、立場を弁えた呼び名というものがあると思います」

 侯爵令嬢の私を、親しくもない伯爵令息が安易に名前を呼ぶことは出来ない。
 彼はそんなことも分からないのだろうか?
 それとも婚約解消したが、一度婚約した関係なのだから対等と勘違いしているのか?
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