【完結】恋愛に向いていない女性の記録。婚約者との関係改善を目指して記憶喪失のフリをしたら……婚約解消になった編

天冨 七緒

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急に頭が悪くなったみたい

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「……申し訳ない。ギャスパル侯爵令嬢」

「今後はそれでお願いいたします。それでは」

 彼から話を切り出される前に去るつもりだ。

「待ってくれ、話がしたい」

「私にはございません」

 振り返らず、馬車を目指す。
 今日は町の屋台というのを体験したかったので、かなり遠くまで歩いてきてしまった。
 貴族だと知られぬように遠くに馬車を止めたことが仇となるとは……

「……少しでいいから、俺の話を聞いてくれないか? 」

「……言葉遣い」

「あっ……俺の話を聞いてくださいませんか? 」

「礼儀を忘れないと誓い、私を呼び止めるのが今回限りであれば伺いましょう」

「……それは……俺の話を聞いた後、セラ……令嬢に判断して頂きたい」

「どのような話でしょうか? 」

「ここでは……どうか、場所を移動できないだろうか? 」

 私は町に出るという事で平民の恰好と準備万端なのだが、令息の方は貴族感が抜けない恰好をしている。
 そんな彼と一緒にいれば平民には目を付けられ、貴族にも私達が町で逢瀬を交わしていた等ど噂されかねない。
 
「分かりました」

 私達は近くのカフェに入り、奥の席を案内させた。
 
「それで、どのような用件でしょうか? 」

 きっと、婚約についてだろう。
 伯爵家としては侯爵家も招待すべきだろうが、本当に招待状を送っていいものか悩んでいたのだろう。
 それで偶然私を発見し後先考えず声を掛けたのだろう。
 手紙で確認仕様にも、父に発見されれば処分される可能性もある。
 そんなことを考えていたら、時間が過ぎ婚約発表に時間が掛かったのかもしれない。

「その……婚約解消を……解消して頂けないか? 」

「……それは……どういう意味でしょうか? 」

 彼は何を言っているのだろうか?
 婚約解消の解消?

「俺は婚約解消をしたくはなかったんだ……」

「……はぁ……? 」

 解消したくない?
 恋人がいるのに?
 彼は何を言っているのか、私には理解できない。
 私は頭が悪くなったのだろうか?

「あの日、令嬢が記憶喪失となったと聞き動揺してしまった。本当は婚約解消するつもりはなかったのに……」

「……あの日の令息はとても冷静で、そのようには見えませんでした」

「頭が混乱し正常な判断が出来なかったんだ。あれからずっと後悔していた」

 後悔?
 令息が新たなパートナーと一緒にパーティーに参加した事を私は知っているのに。
 私があの日、誰ともダンスをせずテラスや壁際にいたので彼は私が参加していたのを知らないのかもしれない……
 いや、私に興味ないのだろう。

「……そうでしたか」

「令嬢は覚えてないかもしれないが、俺達はとても愛し合っていたんだ」

 ……駄目だ。
 彼が何を言っているのか理解できない。
 私達が愛し合っていた? 
 彼との会話は時間の無駄のようだ。
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