【完結】恋愛に向いていない女性の記録。婚約者との関係改善を目指して記憶喪失のフリをしたら……婚約解消になった編

天冨 七緒

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本当に嘘しか言わない口だ

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「長時間の会話は今の私にとって難しく、少し疲れてしまったのでもうよろしいかしら? 」

 病気というのは便利だ。

「それはすまない、今度屋敷に窺っても宜しいでしょうか? 」

 会話するのは今回限りと言ったのを忘れているのだろうか?

「父が反対すると思います」

「令嬢が説得してくれないか? 」

「どうして? 」

 話があるのであれば、自分が努力するべきなのに……
 私を頼るなんて……

「俺達の関係が本当に終わってしまってもいいのか? 」

 何、その言い方。
 私達の関係が『高潔だった』とでも言いたいのだろうか?
 私としては、完全に終わらせたい関係だ。

「もし後悔があるのであれば、令息が父を説得するべきではありませんか? 」

「なら、侯爵の時間を頂けないだろうか? 」

 どこまでも人を頼るのね。
 彼はこんなにも他人任せだったのだろうか?
 こんな事も知らないなんて、私って彼に興味がなかったのね。

「私を通さず、令息の誠意を見せてください」

「俺は何度も手紙を送った。だが、その様子だと受け取っていないのだろう? 侯爵は俺を許していない」

 ……父は令息の不貞に気が付いていたのだろうか?
 それとも、純粋に私を守ることが出来なかった彼を信用できないと思い婚約解消を口にしたのだろうか?

「……そうですね」

「俺は婚約者の君を守ることが出来なかったから……」

 悔しそうに俯き拳を握る姿は演技にしか見えない。
 彼の言葉や行動に私の心が動くことは無かった。

「……あの……」

「はいっ」

「そろそろいいかしら? 」

「えっ? 」

 彼からは『これだけ熱く語ったのに、何故その態度なんだ? 』そんな反応に見えた。
 記憶喪失の私を労わるより、自分の気持ちを優先する身勝手な男に見える。
 愛が覚めた途端、彼の全てが嫌になった。
 一緒にいるのも苦痛。
 早くこの場を離れたい。

「私、疲れてしまったの……」

「……そうだな……どうにか、連絡出来ないか? 」

「伯爵ではなく令息からとなれば、手紙などは父が処分するでしょうね」

「頼む……頼みます……」

 頼む姿は本気に見える。
 彼に何かあったのだろうか……はっ、絆されてはいけない。
 彼が真剣だろうと私には関係ない。

「それじゃ」

「明日、侯爵家に伺います」

「遠慮願います」

「では明後日」

「お断りいたします」

「明々後日」

「そちらの都合で決めるのは止めてください」

「では、いつがよろしいですか? 令嬢の都合に合わせます」
 
 何故会う前提で話が進む? 

「今は大変混乱しておりますので、落ち着きましたらご連絡させていただきます」

「はい、お待ちしております」

 令息より先に席を立ち、今の出来事が嘘だったように記憶から消去する。
 こちらから連絡する……それは、こちらから連絡しなければ関係は絶たれる。
 私から手紙を送るつもりは無い。
 もし追及されても、そんな約束したかしら? と言える。
 記憶喪失って便利だわ。
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