愛は、ここに。

音成さん

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04.破滅への誘惑

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単刀直入に言う。ムラムラしている。

シィルは梨人に自分のものになれとか言っておきながら、一向に手を出す素振りを見せない。いっそこっちから襲ってやろうかとも考えたが、梨人は襲うより襲われたい。強引に奪われたいのだ。



「リヒトはシィル様のこと好きなの?」

特殊性癖の同類ではなかったがお互いの性癖をオープンにし合い、理解を深め、友情を育んだ梨人とリェイダルは、もはや長年一緒にバカやってきた幼なじみのごとく、互いに遠慮なくタメ口を叩きリェイダルの私室で茶をしばくまでになっていた。

「かわいいとは思うけどぉ~……」

あんまり生態に詳しくない女子高生のノリの雰囲気で恋バナに興じていたところへ欲求不満を暴露した梨人に、リェイダルはテーブルに両肘でほお杖ついたぶりっ子ポーズでニヤニヤしている。

「えぇ~? シィル様がかわいい~?」
「かわいいじゃ~ん。え、かわいくない?」
「そりゃ、あれだ。リヒト、きみ、よっぽど大事にされてるんだねえ~」
「大事に?」
「シィル様は本当にリヒトのこと好きみたい~」
「えぇ~そうかなあ~~?」

梨人が今ひとつ信じられない理由は。

「好きならセックスしたくない?」

これに尽きる。梨人はまともな恋愛経験などないが、好きな相手には自然とセックスを求めるものだと思っている。だって、べつに好きではない相手でも、生理的嫌悪感さえなければ、身体を重ねられるものなのだ。少なくとも梨人はそうだった。それが、好きな相手という、たった一人へと性欲の矢印が集中なんかしてみろ。もう、抱き合わずにはいられないんじゃないの? セックスしたくて仕方ないんじゃないの? 獣のように貪りたいんじゃないの? 知らんけど。

「リヒトは?」

リェイダルはニヤニヤしてるのに、口元には笑みを浮かべているのに、瞳の奥は笑っていない。

「リヒトはシィル様とセックスしたい?」
「したい」

即答だった。なんせムラムラしている。梨人の身体は犯されたくて疼いている。

「それは、シィル様が好きだから?」

それともーーと、リェイダルは人差し指で梨人の鼻先を押した。

「セックスが好きだから?」

梨人は押し潰された自身の鼻先を見ようとして寄り目になったまま、沈黙を保った。


答えは、明白だった。


「リヒトがそう思ってるうちは、シィル様は手ぇ出さないと思うよ」





◇◇◇





梨人がシィルのことを好きじゃないから手を出さない?
シィルは梨人のことが好きらしいのに?
梨人は今までさんざん好きでもない相手とセックスしてきたのに?

「ヤればいいじゃん……」

少なくとも、梨人は抱かれたいと思っているのに。

「…………まあ、相手は……シィルじゃなきゃだめ、なわけじゃ……ないんだけど……」

それがいけないのか?
よく、わからない。

養父に犯されたあの日、梨人は歪んでしまった。
治し方はわからず、むしろ悪化させることばかりしてきた。
もう、手遅れなのかもしれない。
梨人の歪さは、どんなに手を入れても元通り綺麗に丸くはならないのかもしれない。

「鬱だな」

考えれば考えるほど沈んでいく。するとあら不思議。オナニーが捗る。

自室のどでかいベッドに胡座をかいて、ムラムラを解消するため自家発電に励む。でも、今は、一人寂しく右手とよろしくやるより、誰かとセックスがしたい! 犯されたい!

「はい、どーぞー」
「リヒトさーー……まっ!?」

ノックされたので自慰を続けたまま入室を許可すれば、梨人の世話係である赤毛の青年がぎょっとして固まった。みるみる全身真っ赤になる。見開いた目が、ぽろりとこぼれ落ちそうだった。

「なんかあった?」

いつまでも凍りついたまま用件を告げる気配がないので、リェイダルから融通してもらった潤滑油の瓶をしげしげと眺めながら水を向けてやる。

「ーーぁ、あの、そのっ、はい! 伝達事項がひとつ!」

脚をM字に開き、勃起した性器の先端から潤滑油をとろりと垂らして、尻の狭間まで伝い落ちた液体を指先に絡める。

「シィル様がっ、」

中指で、そっと濡れた窄まりを撫でた。梨人自身はさんざんアナルセックスの経験がある。でも、この身体はまだまっさらだ。指一本、入れたことがない。受け入れるための心構えは完璧だ。あとは、身体を躾けるだけ。

「公務でっ、外つ国に! 赴かれっ、て、いた、シィル様がっ、」

くにくに、孔の周りを指先で押して、余計な力が抜けたところでそっと挿し込む。

「んっ」

思わず、声が漏れた。潤滑油を足して、ゆっくりと中指を引く。入り口付近で小刻みに抜き差しして、ぐっと奥へ。

「シィル様がっ、今夜っ、お戻りになられる、とっ!」
「わかっ、た……っん、ぁ、」

喉を反らして、中を探り、感じるポイントを手繰り寄せる。こっちかな? ここ? もうちょい右?

「ぁ……っ!」

見つけた。この身体は、ここが気持ちいい。

「ぁ……んぁ……っ、は……っ、ん……!」

何度も繰り返し刺激して、キケルの身体に快感を覚えさせる。ここ。ここが、あんたの身体のいいところ。俺を悦ばせるための、スイッチ。

指を二本に増やし、押して、捏ねて、引っ掻いて。もう片方の手はだらだら先走りをこぼす性器を性急にしごき立てる。

「あ、ァ……あっ、う……ふ……っ、ん……あぁ……っ」

夢中になって快感を追い、前も後ろも責め立てて、追い込んで追い込んで、ぎゅっと自分の指を食い締めながら勢いよく白濁を吐き出した。荒く息を繰り返して、ゆっくり整えていき、指を抜く。拭くものを探して顔をあげたら、存在を忘れ去っていた赤毛の青年が食い入るように梨人を見つめていた。バキバキに見開いた目は獰猛な光を宿し、両手は自身を抑え込むように固く拳を握って、身体の中心はテントを張ってズボンに染みをつくっている。全身から、梨人に対する劣情をこれでもかというほど滲ませていた。

「は、はは……!」

口角が吊り上がるのが、梨人自身にもよくわかった。

「ヤりたい……?」

赤毛の青年に向かって、大きく開脚する。両手で尻たぶを掴んで、その奥を見せつけるように、左右に開いてみせた。

「犯したいんだろ……?」

視姦されている快感に、ゆるりと性器が勃ちあがってくる。

「おいで」

赤毛の青年が唾を飲み込む音が、大きく響いた。
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