ブルームーン-青、君に染まる-

藍沢ルイ

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第八章

心に嘘はつけない

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星空は、大学やバイトが忙しかったというのは建前で、しばらく&barに足が遠のいていた。顔を合わせる自信がなかった。

何をしていても、あの時珍しく感情的になった蓮志のことが頭から離れなかった。

『蓮志さん、今度少し時間もらえませんか?』

何度もスマホで文字を打っては、手が止まる。

それを繰り返すうちに寝てしまっていたらしい。

かなりの間、寝てしまっていたらしい。
日が沈み始めていたほどだった。

『今度の水曜日でよかったら大丈夫だよ』

「え…?」

寝ぼけたままだったのか、頭が追いつかなかった。
目をこすりながら読み返すと、送ろうとしたメッセージを寝ぼけながら送ってしまっていたようだった。
しかも、返信がかなり前の時間だったことに気づく。

(うわ…なにやってんだろ。良いんだけど、いや、やっぱり良くないような…いや、もうわからないよ…)

気持ちの整理がつかないまま、頭をぐしゃぐしゃにしながら、メッセージを送る。

『返信遅くなりました。じゃぁその日の夜バーの前で待ち合わせでも大丈夫ですか?』

『うん、いいよ』

星空は、 嬉しい気持ちもあったが少し戸惑った。
あの日以来、蓮志さんには会っていなかったからだ。でも、会うなら自分の気持ちをちゃんと話そうと心に決めた。


そして、水曜日の夜バーの前には見慣れた姿があった。

「星空くん」

相変わらず優しい声といつもとは違う私服姿に胸が高鳴った。

「蓮志さん、ご飯まだですか?何か食べに行きますか?」

「星空くんが良かったらなんだけど、家でもいい?」

「蓮志さんの家ですか?行ってもいいんですか?」

「うん、いいよ。ついてきて」

「はい」

少し歩いたところで、案内されたのはとある高層マンションの一室だった。

「ここが蓮志さんの家…」

「入って」

「お邪魔します」

「簡単に何か作るから、適当に座っててね」

「ありがとうございます」

星空はリビングのソファに腰掛けた。

白を基調とした内装で、どこをみても手入れがされていて、見渡すと家具一つをとってもどれもこだわってることが伺える。
きっとすごく丁寧な生活をしてるんだなと感じた。

しばらくして、運ばれてきたのは、スパークリングワインやサラダ、パスタなどどれもすごく美味しそうだった。

「いただきます」

運ばれてきた料理のどれもがおいしくて、ワインが進む。

「どれも本当においしいです!」

「それはよかった。星空くんに喜んでもらえて作った甲斐があったよ」

ワインを一口飲み、星空は話し始めた。

「あの、それと話したいことがあって」

「うん?」

「蓮志さんのこと、知れば知るほど遠くなるような気がして、だから蓮志さんから聞きたいです」

「うん、そうだね。星空くんはずっと気にかけてくれてたからね。俺もちゃんと話すよ」

星空は静かに頷く。

「俺は、高校生になってすぐの頃だった。少しずつ両親の仲が悪くなっているのを感じてた。俺は、父親がその度に何度も母親を殴る姿を見ていた。何度か間に入って止めることもあって、それから俺が暴力を振るわれるようになった」

「…そうだったんですね」

「それと同時に父親から体を求められるようになって、家を出るために、次第に体を使ってお金を稼ぐようになった。この前、男の人とホテルに行ってたのもそうだよ」

「話してくれてありがとうございます。話すの勇気いりましたよね。何も知らずに知りたいってわがままだったし、蓮志さんの気持ち考えずに色々聞いてごめんなさい」

「なんで泣いてるの?」

星空に頬に涙が流れ落ちていく。
それをすくいとるように蓮志は星空にキスをした。

「…っ!?あの…蓮志さん?」

「ごめん、自分のために泣いてくれるってなんか嬉しくて」

「……俺、後悔してます。もっと前に蓮志さんと出会いたかった。だから、これから辛い時も楽しい時も蓮志さんの傍に居たいです。こんなふうに誰かを想うのって初めてで…。俺、蓮志さんのこと好きです」

「うん、ありがとう」

2人は自然と抱きしめ合っていた。
この時だけは時間が止まればいいと思った。

(蓮志さんの心臓の音が聞こえる…暖かいな。でも、これって抱きしめられてるんだよな。蓮志さんって細身なのにしっかりしてて…余計意識しそう)

何度もキスを重ねていくうちに、深いキスに変わっていく。

(こんなキス知らない…)

「んぁっ…」

声が出てしまったことに恥ずかしくなり、片手で口を覆い、星空は顔を背けるようにした。

「星空くん、顔見てくれないの寂しい」

「え…?」

「こっち向いてくれたね。もっといっぱい声聴かせて?」

僕と蓮志さんの舌が絡むたび、甘くとろけそうだった。

「んんっ……」

(お酒のせいもあってか、ふわふわしてきたな…)

「あっ…あぶな…」

星空は力が抜けていくのを感じて床に倒れそうになったのを、蓮志は片手で抱え覆い被さった。

「星空くん…?もしかして寝てる?」

寝ている星空を優しく抱えて蓮志はベッドに運んだ。

(好きって言ってくれて嬉しかったな…)

その時、星空はずっと聴きたかった言葉が聞こえた気がしたけど、深い眠りについていた。

蓮志は、星空をベッドに寝かせた後リビングのソファで1人で寝ることにした。



朝、目が覚めると、心地のいいベッドに横になり、カーテンから光が射していた。

「おはよう、朝ごはん作ってるから準備しておいで。シャワー使ってもいいから」

少し遠くから、蓮志さんの柔らかい声がした。

「ありがとうございます…」

飲み過ぎたのか、頭が回らなかったが、昨日のことを少し思い出した。

「……あの、そういえば昨日はすみません!」

身支度を済ませ、席に着くとおいしそうな香りとともに、朝ごはんが運ばれてきた。
スクランブルエッグにソーセージにパン、それとヨーグルトにコーヒー。

「ああ、いいよ、ちょっとお互い飲み過ぎたかもね」

昨日蓮志さんのことを少し知れたと思ったのに、普段通りの蓮志さんの態度にまた少し遠くなった気がして、胸が痛くなった。
けど、何も触れない蓮志さんに、言及しないことにした。

「いただきます」

「そういえば、今日は大学?」

「午後からバイトですね」

「そっか、じゃぁ午前中はゆっくりしていきな」

「ありがとうございます」

何事もなかったかのように、振る舞う蓮志さんに俺は合わせることにした。

「ごちそうさまでした」

蓮志さんと話しているうちに、バイトの時間になり、俺は蓮志さんの家を後にした。

「お邪魔しました」

「うん、またおいでね」

「……はい」

蓮志さんの言葉に嬉しくて、少し照れながらそう答えた。



星空を見送ったあと、一人部屋に戻った蓮志は、ふと昨日の夜のことを思い出していた。

「あの時、星空くんがもし寝てなかったら抑えられなかったかも…」

(星空くんのこと、本気になりそう…)

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