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第7章 マックート村の新領主

第184話 メイドさんごっこ

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「主様?」
「にーに、どうしたのー?」

 ジェーンに続き、破られた扉からユーリヤが入ってきた。
 よくよく話を聞くと、ユーリヤがナタリーの手から美味しそうな匂いがすると言い、世話をしている牛の乳絞りをしている最中だったと。
 で、ユーリヤがやってみたいと言ったので、じゃあ体験してみようという話になったのだが、例によって俺がアオイと話をしていて聞いておらず、乳搾りをナタリーの胸を揉ませてもらえると勘違いしてしまった事が原因だった。

「……普通、そんな勘違いをしますか!?」
「いや、本当に申し訳ない」
「お子さんの前なので、これ以上は言いませんが……奥様。私より遥かに大きな胸なのですから、ご主人が変な事を考えないように、毎晩満足するまで触らせてあげるべきかと」

 怒っているナタリーの矛先が、俺だけでなくジェーンにまで向いてしまった。
 だけど、ジェーンは妻とかじゃないんだよ。
 とはいえ、ナタリーをこれ以上怒らせる訳にはいかないので、余計な事は言わずに黙っておくけどさ。

「畏まりました。主様については、私が責任を持って対応させていただきます」

 空気の読める聖女ジェーンが丁寧に対応し、併せて俺も頭を下げ、逃げるようにして冒険者ギルドから脱出した。
 ナタリーには、時間を置いて改めて謝りに行く事にしよう。
 そんな事を考えていると、

「にーに、うしさんのミルクはー?」
「えーっと、また別の所でも出来ると思うから、ちょっとだけ待っててね」
「はーい」

 乳搾りを楽しみにしていたユーリヤが不思議そうに小首を傾げてきたけれど、俺の言葉を素直に聞いてくれた。
 なので、先程回った村人の家の内、酪農をしていると言っていた家へ瞬間移動し、金貨を一枚渡して、ユーリヤが満足するまで乳搾りを体験させてもらう事に。
 ちなみに、乳搾りが終わるまで、ジェーンが一言も喋ってくれなかったけど、その内いつも通りに戻ってくれると期待しておく。……戻ってくれるよね?
 少しだけ不安になりつつ、一旦村の確認を終える事にした。

「ただいまー」
「ただいま戻りました」

 瞬間移動で屋敷へ戻ってくると、

「おかえりなさいませ。ご主人様」
「お、おかえりなさいませ……ご、ご主人様」
「おかえりなさい。旦那様っ!」

 メイド見習いのノーマと、メイド服姿になったアタランテとマーガレットに出迎えられる。

「……ノーマはともかく、二人は何をしているんだ?」
「え? ダメかしら。メイドさんごっこなのだけど」
「あれー? お兄さんは絶対に喜ぶと思ったんだけどなー」

 まぁメイド服は嫌いじゃないよ?
 けど真昼間から、しかも今日会ったばかりのノーマの前ではやめて欲しかった。
 お前ら、何やってんだ? と言わんばかりに、ノーマが無表情になっているしさ。
 ……いや、メイドたるもの主が何をしていようと、影響されずに仕事をこなす事が求められるから、無表情で無関心が正解なのか? よく分からんが。
 ちなみに、メイド服対決では猫耳メイドになっているアタランテの勝ちだと思う。面倒臭い事なりそうだから言わないけど。

「ふふん。ご主人様が私の事ばかり見ているから、私の勝ちね」
「くっ……確かに。だったら、次は実技勝負よっ!」
「望む所よ。これで勝ったら、私があの部屋を貰うんだから」

 あれ? 俺、アタランテの方が良いって口にしていないよね?
 どうして二人は分かったんだ!?

『ヘンリーさん。目は口ほどに物を言うんですってば』

 アオイに突っ込まれるも、その通り過ぎて何も言い返せずに居ると、

「ご主人様。お食事の準備が出来ておりますが、いかがなさいますか?」

 ノーマが我関せずという感じで話し掛けてきた。

「じゃあ、皆を集めて昼食にしよう。話しておきたい事もあるし」
「ふふん。次の勝負内容が決まったわね」
「えぇ。給仕対決ねっ! 次は絶対に負けないっ!」

 アタランテとマーガレットが猛ダッシュでどこかへ走り去って行ったが、メイドさんって廊下を走って良いのだろうか。
 まぁ細かい事は知らないけれど、全員で食事をする事にした。

……

「あの……お口に合いますでしょうか?」
「合う合う! 物凄く美味しい! この料理が毎日食べられるの!?」
「は、はい。ご主人様が滞在中は、皆様のお食事はご用意させていただきますので」

 料理人見習いのメリッサが作ってくれた昼食に、皆で舌鼓を打ち、とにかく食べる。
 ちなみに、ワンダ、ノーマ、メリッサの三人は、「下働きの者が主人と一緒に食事なんて……」などと言って、後で昼食を取ると言っていたので、俺の権限でそういうのは禁止にしておいた。
 ご飯は皆で食べた方が美味しいし、アタランテやマーガレットも給仕を手伝ってくれるしね。
 という訳で、新メンバー三人を含め、全員が食堂に居る中で、村を回った俺の考えを皆に伝える。

「皆、聞いてくれ。一つ分かった事がある。……やっぱり何をすれば良いか分からないから、とりあえず統治に詳しそうな英霊を召喚する」

 うん。素人が情報収集してみたけれど、結局の所、何にも分からなかったよ。
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