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第2章 ゴミスキルと魔導少女たち

第61話 不気味な笑み

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「……とりあえず、このまま馬車に乗るのは得策じゃないよね」
「はい。目的が分かりませんので、人気の無い所で話を聞くか、それとも撒くか。どういたしますか?」

 僕たちが後をつけられる理由としては、十中八九シャルロットとマリーだろう。
 僅かに、ただのスリか何かに目を付けられたという可能性もあるけど、その可能性は低いと思われる。
 なので、前者だとすると、どっちの国に狙われているかを知りたい。

「……シャルロット。つけられているのが、国境を越える前からかどうかって、わかる?」
「すみません。流石にそこまではわからないです」
「……よし。相手の目的を確認しよう。シャルロット、人気の無い場所へ誘導出来る?」
「お任せください」

 クリスにも警戒するように伝え、シャルロットの案内に従い、氷の魔銃に魔力を注ぎながら歩いて行く。
 しかし、シャルロットは帽子を被って銀髪を隠しているし、そもそも騎士たちで顔を知っている人は居ないはず。
 となると、マリーだけど……街中で戻ったのが見られた? でも、それならもっと早くシャルロットが気付いていそうだし……うん。直接聞くしかないか。

「カーティスさん。この辺りで良いかと」
「ありがとう。さて、どう出てくるかな」

 村の端……周辺は小さな家が点在するだけの、あからさまに人気の無い場所で足を止め、後ろを振り向く。
 ついて来ていたのは金髪長身の男性で、こっちが足を止めたのに気付き、真っ直ぐに向かって来た。
 後ろに隠し持った魔銃には、十分な魔力を込め終わっている。
 準備万端だけど、どう出て来るかと警戒していると、

「やっと追いついた。お嬢さん、今時間あるかな?」
「…………はい?」
「いや、さっき偶然見かけてさ。あ、弟君と妹ちゃんは先に行っていていいよ。俺が話したいのは、お姉さんだけだから」
「……カーティスさん。殴って良いですか?」

 ま、まさかのナンパ男だった。
 しかも僕やクリスを、邪魔だと言わんばかりに睨んでくる。
 散々目的や、どこの手の者かって考えさせられた上に、こんな所まで移動してきたのに……返してっ! この無駄な時間を返してよっ!

「……行こうか」

 時間の無駄だと思い、シャルロットの手を取ると、その場を立ち去る事にした。

「おいおい、弟君。お姉さんは俺と大事な話があるんだ。お姉さんじゃなくて、そっちの妹ちゃんと手を繋いで、何処かへ行ってくれるかな」
「こちらの方は弟ではありません。私が身も心も生涯捧げると誓ったお方です。とりあえず、貴方が何処かへ行ってくれますか?」
「な……こんな奴のどこが良いんだよっ! おいっ、ちょっ……ちっ! 何だよ……ふふっ」

 何だろう。
 シャルロットに声を掛けてきた男……立ち去る間際に、不気味な笑みを浮かべていたんだけど。

「もうっ! 何なの!? さっきの人、気持ち悪かったし、何よりクリスの事をお兄ちゃんの妹だなんて。……こ、こいび……だもん」

 気持ち悪いっていうのはともかく、妹って言われたのは、クリスが僕の事をお兄ちゃんって呼んでいるからだと思うんだけど。
 とりあえず、次の街へ移動する為、乗合馬車の停留所へ戻ろうとすると、

「ふふっ。カーティスさんってば、意外に可愛い所があります」

 シャルロットが嬉しそうに微笑み掛けてきた。

「何の事?」
「これですよ、これ。カーティスさんってば、ずっと私の手を握って……さっきみたいに変な男が近付いて来ないようって、私がカーティスさんのものだとアピールしてくださっているんですよね」
「えっ!? いや、違……」

 単に手を繋いでいる事を忘れていただけなんだけど、

「カーティスさん。手を繋いでいるのも、アピールになりますが、腕を組むともっと良いと思うんです」
「待って! だったらクリスもっ!」

 シャルロットが腕を組んできて、クリスが逆の腕にしがみついて来る。

『カーティス。そういう事をするなら、私も……』
「待って。流石にここは人が多いよっ! ダメだってば!」
『ふーん。私だけ仲間外れにするんだ。へぇ』
「や、宿に着いたら、元の姿に戻って良いから、今は……」
『ふふっ、言質を取ったわよ。じゃあ宿に着いたら、私がカーティスを独占ね』

 いや、マリー……流石にそれは拡大解釈が過ぎるよっ!
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