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第4話 クズ豆のスープ
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茶色い殻に包まれたままの、大豆のような豆を鍋の中へ。
土魔法を使って、すりこぎみたいな石の棒を作り出すと、トントンと豆を突いていく。
暫く突き続けると殻が割れて実が出ているので、殻や枝を適当な麻袋へ入れる。
「へぇ。自分で料理をするなんて変な奴だと思ったが、随分と手際が良いじゃないか。じゃあ、鍋に残った豆を皿に……」
「いえ、まだです。本当の料理は、ここからです。≪クリエイト・ウォーター≫」
水魔法で豆が沢山入った鍋の中に、たっぷりの水を入れる。
もちろん、ここから豆を茹でるのだけど……皿を渡してきた男性が顔を歪める。
「てめぇ……いくらクズ豆とはいえ、何してんだ!? 俺たちが居た村では、これしか食い物が無かったんだぞ!」
「待ってください。これから、私がこの豆を料理しますから」
「はぁ!? 料理なら、もう終わっていただろうが! 殻を取って豆を取り出す以外に、何をするってんだ! 豆に魔法なんて使いやがって!」
「いえ、料理はまだ終わっていません。そして、私の出した料理が食べられないものだったら、どうぞ斬り捨ててください」
「……いいだろう。一度吐いた言葉を飲み込むなよ!」
という訳で、料理の続きが出来るようになったので、元々鍋があった薄汚れたカマドへ鍋を置く。
火魔法で、さっき麻袋に纏めておいた豆の殻に火を点け、豆を茹でる。
だけど茹で上がるまでに、アレを見つけないと。
「すみません。逃げませんし、紐で括られても構いませんので、外である野草を探しても良いですか?」
「その野草があれば、水に漬けた豆が食えるってのか?」
「はい」
「まぁいいだろう。俺が一緒に行ってやる。ただ自分で言った通り、ロープは付けるぞ」
長いロープを腰に巻かれながら小屋の外へ。
小屋へ来る途中に背の高い草が沢山生えていたので、きっとアレが生えているはず!
「おい! 何処まで行く気だ!? てめぇ、やっぱり料理の続きなんて言うのは嘘で、逃げる気だな!?」
「違います! あの小川の向こうに、背の高い草むらがあります。その手前に、私の求めているアース・プラントという草があるはずなんです!」
「そんな名前の草は聞いた事がないぞ!?」
「小さな葉っぱが円形に広がる、緑色の背の低い草なんです。表面を小さな氷の粒のような物が覆っているので、見ればすぐにわかります!」
「チッ……小川の先までだ。それ以上は許さん」
男性に紐を握られながら小川を越えると、足下を凝視する。
時間がない……男性の苛立ちが限界に近いし、早くしないとお鍋が煮立ってしまう。
そうなってしまったら、美味しい料理になるはずだった食材をダメにしてしまいかねない。
料理人として生きていくと言っておきながら、そんな事は絶対にしたくないので、急がなきゃ!
だけど、周囲をくまなく見ているはずなのに、それらしき草が見つからないので困惑していると……男性が声を掛けてくる。
「おい。その草ってのは、あれの事か? 表面がキラキラしてる草があるが」
「――っ! はい、その通りですっ! ありがとうございますっ! 急いで戻りましょう!」
「ま、待てっ! ……自分から、大急ぎで盗賊の根城に戻るなんて、何を考えているんだ!?」
予想していた場所とは違い、草むらの中に目的の野草が生えているのを男性が見つけてくれた。
早速その野草を採り、小屋に戻ると……良かった。まだ沸騰の少し手前だ。
豆の硬さを確認しながら、程よく茹でられたところで、洗ったアース・プラントを千切って入れていき、味を整える。
味を確認し……うんっ! 出来たっ!
「お待たせしました! ビーンズ・スープです。熱いので、気を付けて飲んでくださいね」
「スープだぁ? ただ豆と草を入れて湯を沸かしただけで、何が変わるって……っ!? これは……何だっ!? どうして、ただの湯が……こんなに旨いんだっ!?」
「ふふっ、これが本当の料理です。柔らかくなって食べ易くなるし、生のままだと身体に悪い豆に火を通して、身体に優しくしています。そしてアース・プラントの塩味で、豆の味を引き立てるんです」
「塩味……って、アレだろ? 肉を日持ちさせる為じゃないのか?」
「そういう使い方もありますが、素材の味を引き出す事も出来るんです」
アース・プラントは地中にある塩分を吸い上げ、周囲の他の植物を塩害から守る性質がある……と、サンドイッチを作った時に騎士さんが教えてくれた。
味付けではなく、遠征などで持って行く食料を保存させる為の方法だけど、海の無いこの国の貴重な塩味よね。
「こ、この匂いは、本当にクズ豆なのかっ!? ……俺にもくれないか!? この香りを嗅いでいたら、凄く食べたくなってきたんだが」
「お、俺も!」
「沢山作ったので、大丈夫ですよ。ゆっくり召し上がってください」
他の男性も器を持ってやって来たので、スープをよそう。
湯気が立ち昇るスープを、美味しそうに飲み干し……あ、おかわりね?
「……これが、お嬢ちゃんの言う、本当の料理か。こんなに温かくて、旨いと思うスープは初めて飲んだよ」
「良ければ、作り方をお教えしましょうか? 先程、ここで作っていた通りで、難しい手順などはありませんから」
「そうだな。是非、頼むよ。クズ豆と草だけで、こんなスープが作れるなんて、思ってもみなかったからな」
お鍋いっぱいに作ったスープが、あっという間に空になったので、今度は三人の男性と一緒にスープを作る。
決して難しい料理ではないので、無事に美味しいスープが出来上がり……一人の男性がポツリと呟く。
「あのさ……俺、明日の取引を止めて、故郷へ帰っても良いか? 村の……親父やお袋に、このスープを食べさせてやりたいんだ」
「……俺も、そうするよ。アイツと取引をしたら、もうこの国には居られなくなる。今なら、まだやり直せる気がするんだ」
「嬢ちゃん……悪かったな。馬も荷物も返すから許してくれ。もう一人も説得して、今度こそ真っ当な生き方をしてみせるからさ」
私の腰を縛っていた紐がナイフで切られ……三人の男性が小屋を出て行った。
本当は、騎士団などに出向いてもらって、罪を償ってもらうべきなのかもしれない。
だけど私の力では、後でリアムさんに顛末を伝える事しか出来ないだろう。
それ以上の対応は難しい……と思っていると、突然小屋の奥から小さな声が聞こえてきた。
「美味しそうな匂い……お願い! ボクにも頂戴! お腹がペコペコなの!」
え……だ、誰か居るのっ!?
土魔法を使って、すりこぎみたいな石の棒を作り出すと、トントンと豆を突いていく。
暫く突き続けると殻が割れて実が出ているので、殻や枝を適当な麻袋へ入れる。
「へぇ。自分で料理をするなんて変な奴だと思ったが、随分と手際が良いじゃないか。じゃあ、鍋に残った豆を皿に……」
「いえ、まだです。本当の料理は、ここからです。≪クリエイト・ウォーター≫」
水魔法で豆が沢山入った鍋の中に、たっぷりの水を入れる。
もちろん、ここから豆を茹でるのだけど……皿を渡してきた男性が顔を歪める。
「てめぇ……いくらクズ豆とはいえ、何してんだ!? 俺たちが居た村では、これしか食い物が無かったんだぞ!」
「待ってください。これから、私がこの豆を料理しますから」
「はぁ!? 料理なら、もう終わっていただろうが! 殻を取って豆を取り出す以外に、何をするってんだ! 豆に魔法なんて使いやがって!」
「いえ、料理はまだ終わっていません。そして、私の出した料理が食べられないものだったら、どうぞ斬り捨ててください」
「……いいだろう。一度吐いた言葉を飲み込むなよ!」
という訳で、料理の続きが出来るようになったので、元々鍋があった薄汚れたカマドへ鍋を置く。
火魔法で、さっき麻袋に纏めておいた豆の殻に火を点け、豆を茹でる。
だけど茹で上がるまでに、アレを見つけないと。
「すみません。逃げませんし、紐で括られても構いませんので、外である野草を探しても良いですか?」
「その野草があれば、水に漬けた豆が食えるってのか?」
「はい」
「まぁいいだろう。俺が一緒に行ってやる。ただ自分で言った通り、ロープは付けるぞ」
長いロープを腰に巻かれながら小屋の外へ。
小屋へ来る途中に背の高い草が沢山生えていたので、きっとアレが生えているはず!
「おい! 何処まで行く気だ!? てめぇ、やっぱり料理の続きなんて言うのは嘘で、逃げる気だな!?」
「違います! あの小川の向こうに、背の高い草むらがあります。その手前に、私の求めているアース・プラントという草があるはずなんです!」
「そんな名前の草は聞いた事がないぞ!?」
「小さな葉っぱが円形に広がる、緑色の背の低い草なんです。表面を小さな氷の粒のような物が覆っているので、見ればすぐにわかります!」
「チッ……小川の先までだ。それ以上は許さん」
男性に紐を握られながら小川を越えると、足下を凝視する。
時間がない……男性の苛立ちが限界に近いし、早くしないとお鍋が煮立ってしまう。
そうなってしまったら、美味しい料理になるはずだった食材をダメにしてしまいかねない。
料理人として生きていくと言っておきながら、そんな事は絶対にしたくないので、急がなきゃ!
だけど、周囲をくまなく見ているはずなのに、それらしき草が見つからないので困惑していると……男性が声を掛けてくる。
「おい。その草ってのは、あれの事か? 表面がキラキラしてる草があるが」
「――っ! はい、その通りですっ! ありがとうございますっ! 急いで戻りましょう!」
「ま、待てっ! ……自分から、大急ぎで盗賊の根城に戻るなんて、何を考えているんだ!?」
予想していた場所とは違い、草むらの中に目的の野草が生えているのを男性が見つけてくれた。
早速その野草を採り、小屋に戻ると……良かった。まだ沸騰の少し手前だ。
豆の硬さを確認しながら、程よく茹でられたところで、洗ったアース・プラントを千切って入れていき、味を整える。
味を確認し……うんっ! 出来たっ!
「お待たせしました! ビーンズ・スープです。熱いので、気を付けて飲んでくださいね」
「スープだぁ? ただ豆と草を入れて湯を沸かしただけで、何が変わるって……っ!? これは……何だっ!? どうして、ただの湯が……こんなに旨いんだっ!?」
「ふふっ、これが本当の料理です。柔らかくなって食べ易くなるし、生のままだと身体に悪い豆に火を通して、身体に優しくしています。そしてアース・プラントの塩味で、豆の味を引き立てるんです」
「塩味……って、アレだろ? 肉を日持ちさせる為じゃないのか?」
「そういう使い方もありますが、素材の味を引き出す事も出来るんです」
アース・プラントは地中にある塩分を吸い上げ、周囲の他の植物を塩害から守る性質がある……と、サンドイッチを作った時に騎士さんが教えてくれた。
味付けではなく、遠征などで持って行く食料を保存させる為の方法だけど、海の無いこの国の貴重な塩味よね。
「こ、この匂いは、本当にクズ豆なのかっ!? ……俺にもくれないか!? この香りを嗅いでいたら、凄く食べたくなってきたんだが」
「お、俺も!」
「沢山作ったので、大丈夫ですよ。ゆっくり召し上がってください」
他の男性も器を持ってやって来たので、スープをよそう。
湯気が立ち昇るスープを、美味しそうに飲み干し……あ、おかわりね?
「……これが、お嬢ちゃんの言う、本当の料理か。こんなに温かくて、旨いと思うスープは初めて飲んだよ」
「良ければ、作り方をお教えしましょうか? 先程、ここで作っていた通りで、難しい手順などはありませんから」
「そうだな。是非、頼むよ。クズ豆と草だけで、こんなスープが作れるなんて、思ってもみなかったからな」
お鍋いっぱいに作ったスープが、あっという間に空になったので、今度は三人の男性と一緒にスープを作る。
決して難しい料理ではないので、無事に美味しいスープが出来上がり……一人の男性がポツリと呟く。
「あのさ……俺、明日の取引を止めて、故郷へ帰っても良いか? 村の……親父やお袋に、このスープを食べさせてやりたいんだ」
「……俺も、そうするよ。アイツと取引をしたら、もうこの国には居られなくなる。今なら、まだやり直せる気がするんだ」
「嬢ちゃん……悪かったな。馬も荷物も返すから許してくれ。もう一人も説得して、今度こそ真っ当な生き方をしてみせるからさ」
私の腰を縛っていた紐がナイフで切られ……三人の男性が小屋を出て行った。
本当は、騎士団などに出向いてもらって、罪を償ってもらうべきなのかもしれない。
だけど私の力では、後でリアムさんに顛末を伝える事しか出来ないだろう。
それ以上の対応は難しい……と思っていると、突然小屋の奥から小さな声が聞こえてきた。
「美味しそうな匂い……お願い! ボクにも頂戴! お腹がペコペコなの!」
え……だ、誰か居るのっ!?
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