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第3章 人間超越編
第45話 黒歴史……カナねぇの勧誘はしつこいよ
しおりを挟む「ふ~ん、レクリス卿とはそういう関係なのね」
【超越者】の説明の後、御老体とのやり取りを教えかなねぇを納得させる。
「しかし、レイモンド卿に健一殿達の擁護を約束させたのは大きいですねぇ」
レリックさんは口髭を親指と人差し指で扱きながら、静かに呟いた。
「やっぱり健一達は結構やばかったですか?」
「ええ、それはもう。なんせ宰相とレクリス卿がそれぞれに健一殿の手を引っ張っり合ってた様なものですからねぇ。ほっておいたら健一さんは真っ二つだったかも知れませんねぇ」
「はは、それは笑えませんね」
レリックさん独特の形容に苦笑いを浮かべていると、かなねぇが真面目な声音で話し始める。
「ところでひろちゃん。いつ頃ここを出るつもりなの?」
「一応、九十層迄は攻略してるから、百層を突破してからって考えてたけど」
「って事は後五日位?」
「早ければそんな感じかな」
そう答えると、かなねぇは少し考え込む素振りを見せてから再び尋ねてくる。
「それで、ここを出たらけんちゃん達と合流するのよね」
勿論それが最大の目的なのだから素直に頷く。
「で、その後……」
「えーい、まどろっこしい!」
遠回し過ぎるかなねぇの言い回しに、レリックさんが痺れを切らした。目をまん丸くするかなねぇに、レリックさんはビシッと人差し指を突き付ける。
「何ですかその生娘のようなモジモジした質問は! 総統と博貴殿は昔馴染みなのでしょ。スパッと言いなさい。スパッと!」
「ん、めんどくさい」
かなねぇに対して物怖じしない言い草のレリックさんと、再び同意するティア。
この二人気が合うのか?
「む~、分かったわよ!」
半ばヤケクソ気味にレリックさんに叫んだかなねぇはキッと俺を睨む。
いや……何で睨まれないといけないんだろう。
若干の理不尽さを感じながらかなねぇの言葉を待つ。
「ひろちゃん……けんちゃん達と一緒に、私達に力を貸してくれない?」
「嫌!」
即答を叩きつけると、かやねぇはぎこちない笑顔のまま固まった。そしてーー
「………………………………………………何でよぉぉぉ!」
長い静粛の後、突如雄叫びを上げた。そんなかなねぇを、俺はジト目で見つめてやる。
「だって健一達の確認も必要だし、この世界を一回見て回りたいし」
「けんちゃん達はひろちゃんが了承すれば文句は言わないでしょ。それにこの世界を見て回るんだったら、冒険者ギルドに登録した方が何かと便利じゃない」
「冒険者ギルドに登録はすると思うけど、それとかなねぇの言う協力は別物でしょ」
健一達が去った日の前夜に、健一から冒険者にならないかと誘われてたから登録はするのは確定だと思うけど、かなねぇの『協力』は恐らく国なんかを相手取るって意味合いが絡んでるよね。
嫌だよ俺、お偉いさん相手に腹の探り合いの毎日なんて……
そこからかなねぇの勧誘と俺のお断りの話し合いは暫く平行線を辿りーー
「まあいいわ……取り敢えずこの世界の状勢を見定めて、それで決めてちょうだい」
かなねぇが折れた。
「まぁ、最終的にはかなねぇの元に行くことになるとは思うけど」
この世界にツテなんて無いし、ヒメは何かあればかなねぇ側に着くだろうからその辺は決定事項だろうな。
「そう、ならいいけど。それとーー」
そう言ってかやねぇは姉の顔から組織を纏める長のそれになる。
「この世界を旅するなら調停者に気を付けて」
「調停者?」
「ええ、『光の国』を根城にして活動してる組織なんだけど、組織のメンバーは全員勇者なのよ……」
そこから始まるかなねぇの説明。
二期の生き残りである二十名程の勇者が中心となり、それ以降の勇者を勧誘して人数を増やしているというくだりから始まる。そこから、二期のメンバーは始めっから進化系スキルを貰っていた事やその活動内容まで聞いたところで、俺の中に一つの仮説が浮かんだ。
「かなねぇ、レリックさん。一つ聞きたい事があるんだけど」
かなねぇの説明がひと段落ついた時に、質問を投げかける。かなねぇが俺の言葉に対し、聞く態勢を取ったのでそのまま質問をぶつける事にした。
「カナねぇ達も試練のダンジョンを攻略したんだよね」
俺の質問に二人が頷く。
「二人共ここのダンジョン?」
この質問に対してはかなねぇは頷き、レリックさんは『私は『火の国』のダンジョンでしたね』と答えた。
「それでおかしいと思った事は無い?」
予想通り二人は首を横に振る。
俺が二人の返答にため息を一つ吐くと、かなねぇがムッとした顔をする。
「何なのよさっきから、今の質問に何か意味があるの?」
「ダンジョンの魔物の構成に違和感は無かった?」
「違和感?」
かなねぇがボソッと呟いてから、レリックさんと二人で当時を思い出しつつ考え込んでいるが、俺の望む答えにはたどり着けないらしい。もしかすると、百年以上前の事だから忘れてるのかもしれない。仕方なく答えを口にする。
「このダンジョン、やたらと人型の魔物が多くなかった?」
「そうだっけ……ああ! ヒューマンとかいう奴がいたわね」
「ああ、そういえば私の入ったダンジョンにもいましたねぇヒューマン」
やっぱり、他の国の試練のダンジョンも魔物の構成は同じなのか。
レリックさんの言葉で確信を持ち、言葉を続ける。
「ヒューマンだけじゃ無いよ。そこに至るまでにゴブリン、オーク、コボルト、ホブゴブリン、オーガ、ミノタウルス、リザードマン、ガーゴイル、グリーンマン。ワーウルフ、ワータイガーなどのライカンスロープ。これで人型を殺す事に慣れた所でヒューマン……」
俺が挙げた魔物に覚えがあるのだろう。二人は黙って互いを見た後にこちらに視線を戻す。
「人型を殺す事に慣れさせるって……一体誰が?」
「決まってるだろ。俺達をここに連れてきた奴ーー神だよ」
「「!?」」
俺の言葉に二人が絶句する。
「俺のナビゲータースキルの分析では、進化系スキルを持たない精神力が低い状態でこの環境に置かれたら、疑問を抱く前に人を殺す事に慣れるんじゃないかって話だ。ついでに言うと、人を殺す事に対する人間が本来持っているべき本能的な恐怖心は、【恐怖耐性】で消されてると思う」
「……神は、勇者にこの世界の人々を殺させたいと?」
「俺は少なくともそう結論付けてます」
レリックさんの疑問に簡素に答える。
「ちなみに、今迄勇者とこの世界の人達とで衝突した事は?」
「一度だけ……私の世代の時に『闇の国』で勇者が国の人々を大量虐殺しています。その時は調停者を中心に隣国である『火の国』と『風の国』の勇者達で暴走した『闇の国』の勇者を封印しました」
「何それ? 初耳だけど」
レリックさんの話にかなねぇが驚く。そんなかなねぇにレリックさんは肩を竦めた。
「ええ、闇歴史として後世に残す事を禁じられた事件ですから」
(勇者への疑心を残さない為の処置かな)
[恐らくはそうでしょう]
(ところで、この世界の国の配置ってどうなってるの?)
さっきレリックさんが『闇の国』の隣国なんて話をしていたが、この世界の陸の形も国の配置も分からないのでいまいちピンと来なかった。
この先、旅に出たいからそれくらいは知っておきたい。そんな訳で、そんな重要な事を何で話してくれなかったとレリックさんに食ってかかっているかなねぇを放置して、アユムにこの世界の事を聞く。
[この世界といいますか……今現在マスターがいらっしゃる大陸は大雑把に六角形の形をしています。
そしてその一番北、上の三角形の部分が『闇の国』です。更に中央の四角形を十字に区切り、右上が『火の国』、左上が『風の国』、右下が『地の国』、左下が『水の国』となりまして一番南。下の部分の逆三角形が『光の国』となっております]
おお、流石アユムさん。分かりやすい説明ありがとうございます。
心の中でアユムに感謝して、いよいよ仮説の核心を突くべく、俺は口を開いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
裏命題カナねぇの強襲編。また終わらせる事が出来ませんでした。
前半のカナねぇと博貴のグダクダなやり取りはいらなくねぇ?などと思いましたが、それを無くすとまた説明文だらけの面白味の無い話になると思い残しました。
第3章も健一達との合流までと考えていたのですが、徐々に長くなってきたので間にもう一つ章を挟むか悩んでいます。
神尾優でした。
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