理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第3章 人間超越編

第46話 そして嵐は去る……俺は料理人じゃねえよ……あれ?もしかしてティアはそう思ってる?

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「レリックさん」
「何でしょう」

   かなねぇに二百年前の事件の詳細を根掘り葉掘り聞かれ、困り顔のレリックさんに話しかける。
   レリックさんは此れ幸いと直ぐに応じてくれた。

「その事件の時、事件そのものを抹消しようと提案したのは誰です?」
「あれは確か……調停者代表、西條花凛(せいじょうかりん)が提案し、その時の『闇の国』の王と魔族の王が承認して実行されたと記憶してます」
「はぁ?   あの澄まし女がぁ?」

   レリックさんの話を聞き、かなねぇが心底嫌そうな顔で横槍を入れる。

「澄まし女?」
「そうよ!   調停者代表の西條花凛!   いつも『私は何でも知ってます』みたいな澄ました顔した嫌な女よ」

   しまった!   いらん呟きが横槍に拍車をかけてしまった。
   後悔既に遅し。勢いに乗ったかなねぇの『如何に西條花凛が嫌な女か』講義はその後十分程続いた。
   調停者に勧誘された時に相当しつこくされたらしいけど、そんな九十年以上前の愚痴をだらだらと聞かされる身にもなって欲しい。

「……さて、これは俺の仮説なんだけど……」

   かなねぇの愚痴から解放され、疲れ切った精神に鞭打ち話を続ける。

「調停者の人達は神の思惑に気付いてるんだと思う」
「はぁ~あいつらが?」

   予想はしていたがかなねぇが悪態をついてくる。しかし、レリックさんは俺の仮説に興味を持った様だ。

「それはやはり、初めから進化系スキルを持っていた事により、博貴殿と同じ疑惑を持ったという事ですか?」
「おそらくは……その証拠に神はそれ以降の勇者に進化系スキルを与えていません。多分、神の最初の考えでは、数の少ない勇者に人数の多いこの世界の人々と対等に戦える力として進化系スキルを与えたのでしょうが、それが勇者達に疑惑を持たれる要因になってしまった。だからそれ以降は与えなくなったのでしょう」
「成る程、筋は通りますね。では調停者の行動理由は……」
「二百年前の事件の隠蔽は、勇者とこの世界の人々の間に軋轢を残さないためでしょう。そして、勇者の抹殺はその勇者が諍いの火種になりうると判断したから……」
「ふむ……思い当たるフシはありますね」

   周りでブーイングを始めるかなねぇをよそに、互いの推測を展開していく俺とレリックさん。
   そんなに調停者を認めたくないかね、この人は……

「と言う事は、調停者の目的は神の裏の思惑への抵抗ですか……しかし、それが彼女達に何の得があるのでしょう?」
「損得じゃ無いと思いますよ。俺もこの疑問を持った時に、勝手に異世界に連れてきた挙句、こんなふざけた事をさせる気なのかと憤りを感じましたからね」
「ねぇ、ひろちゃん」

   今迄周りで騒いでいたかなねぇが声のトーンを下げて話しかけてくる。
   やっと真面目な話に加わる気になったのかと顔を向けると、

「……お腹すいた」

   情け無い声でそうのたまいやがった。
   さてどうしてやろうかと考えていると、今度は傍から服を引っ張られる。見ると、ティアがこれまた悲しげな視線で此方を見上げながらお腹をさすっていた。
   俺はこめかみを抑え、一つため息を吐いてから厨房へと向かった。


   ⇒⇒⇒⇒⇒

「いや~!   流石【至高の料理人】。このレベルの食事は王都でも中々お目にかかれないわ!」

   俺の作った料理を平らげ、ご満悦のかなねぇ。ちなみに俺を怒らせた冒険者どもは未だ外に放置中である。あんな無礼な奴等に食事を提供する様な器量は持ち合わせていない。

「こりゃあ、ひろちゃんが来てくれるのが待ち遠しいわね」

   いや、仲間になる事を同意した覚えは無いが?

「そこは大いに同意見ですねぇ。毎日この様な食事が食せるなど、王族でも難しいのでは?」

   レリックさんもかなねぇに乗っかる。
   だから、同意した覚えは無いんだって!   って言うか、こいつら俺を料理人として迎えたいのか?
   好き勝手言ってくれる二人をジト目で見つめていると、かなねぇが席を立った。

「さて、美味しいご飯も頂いた事だし、私達はそろそろおいとまするわ」
「そうですね。私達は立場的にあまり王都を離れてもいられませんからねぇ」

   そう言いながらレリックさんも立ち上がる。

「あっ、帰るんだ」

   内心ホッとしながら見送ろうと席を立つと、

「お姉ちゃんが帰るって言ってるのに、なんかひろちゃん嬉しそうね」

   かなねぇからジト目で睨まれた。どうやら顔に出てたらしい。


   ーーSide香奈美ーー

「ひろちゃん……想像以上の化け物になってたわね」
「ええ、こちらの予想の斜め上の更に上を行ってましたね。力は勿論ですが、あの思慮深さは非常にやっかいです」

   ログハウスからの帰り道。龍次さんと今後のひろちゃんの対応について話し合う。
   後ろを俯いてトボトボと歩く馬鹿ども四人には箝口令を敷いてある。破れば冒険者ギルドが敵に回るのだから、破る程馬鹿では無いだろう。
   まあ、そうなったら聞いた者共々消えてもらうけどね。

「取り敢えずはこちら寄りにはなってくれると思うから、既成事実を積み上げて他の連中がひろちゃんは私達の一員と思い込んでくれたら、後はなし崩しに引き込めばいいわ。それよりーー」

   言いかけて言葉が詰まる。ひろちゃんのあいつらに対する推測!   付け込む隙が無かったから取り敢えず野次を飛ばしてたけど、確かに理にかなってたのよね……認めたく無いけど!
   心の中で絶対認めたく無い気持ちと、ひろちゃんの推論の隙の無さとがせめぎ合っていると、龍次さんが口を開く。

「調停者の行動理由の事ですか?   確かに一考の余地のある説でしたね。しかし、他のギルドマスターの中には奴等に無理な勧誘をかけられ相当恨んでいる者もいますから、調べるなら内密にやるべきでしょう。下手をするとギルドが割れてしまいます」
「今は本腰を入れるのはやめときましょう。勇者召喚直後で各国の動きが活発なのに余計な仕事を増やしたく無いわ」
「御意です」

   別に私情を挟んだわけじゃ無い。本当に勇者召喚の影響で忙しいんだもん。でも、落ち着いたら確認しないといけないのだろうな……最悪あの女との会談も考えないといけないのかな。
   急に重くなった足取りで、私は山積みの仕事が待つ王都へと向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

   えーと……何でこんな高い順位にいるんでしょうか?
   周りは殆んどお気に入り1000オーバーの作品ばかりでソワソワします。
   お気に入りが100を超えた時も書いた気もしますが、その内落ちるであろう順位はさて置き、お気に入りが200を超えました。入れて下さった方々、有難うございます。そしてこれからもよろしくお願いします。
   神尾優でした。
   
   
   
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