理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第3章 人間超越編

第50話 初代勇者の末路……ティアさん冷や冷やさせないで下さい

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「くかっかっかっ、そうしょげるな。少なくても俺は合格にしてやるから」

   新人【超越者】の登竜門的イベントを聞き、愕然としながら落ち込む俺の背をバシバシと叩き、ガウレッドさんが豪快に励ましてくれる。
   ああ、この励まし方、窪さんを思い出すなぁ。
   昔を思い出し現実逃避したくなるが、現実はそんな事で逃がしてくれる程甘くない。

「『闇の国』の奴も問題ないだろうし……」

   ……『闇の国』だけ?   『光の国』の【超越者】は?

「まあ……何とかなるだろ」

   端折られました。

「ん、何とかする」

   ティアは意味が分かってるのか、いないのか、この難題に対してのヤル気を出してるご様子。
   はぁ、確かに気落ちして如何にかなるわけじゃないんだよな。こうなったら、この先ガウレッドさんレベルの人が現れても怯まない様にガウレッドさんで慣れておこう。
   俺はついでに出来る限りの情報収集をしようとガウレッドさんに向き直った。
   しかし、そんなヤル気を出した俺の先手を、またしてもティアが持っていく。

「ところでおっちゃんはどうやってここに来た?」

   言いながら可愛く首を傾げてるけどーー言葉遣い!
   ティアには目上の人に対する敬語を早急に教えないといけないと思っていると、ガウレッドさんは愉快そうに笑い始めた。

「くかっかっかっ、流石は気位の高いハイエルフだな。俺に向かってその言い様、五百年前を思い出すわ」

   ああ、良かった。ティアの無礼な口調を気にしてないみたいだ。しかし、五百年前?   五百年前って確か……

「五百年前というと、初代勇者がいた頃ですか?」

   前にアユムから聞いた話を口にした俺に反応し、ガウレッドさんは視線をこちらに向ける。

「ああそうだ。魔物王が出現し、神の野郎が召喚した勇者、木下透(きのしたとおる)が現れた頃だ。奴の側には絶えずハイエルフがいてな、アイツとは良く喧嘩したものだ」

   昔を懐かしむ様に目を細めるガウレッドさん。
   しかし、こんな化け物みたいな人と喧嘩出来るハイエルフって……
   一瞬、ティアも将来そうなるんじゃないかと心配しつつ、情報収集を再開する。

「木下透……確か神にありったけのスキルを与えられたって話ですよね。という事はーー」
「察しの通り、透は【超越者】だった。しかも現れた時はレベルが2000を超えていたな」
「2000!   それは自分で上げたレベルなんですか?」
「それは無いだろうな。レベル2000といえば、【超越者】が戦いに明け暮れても三百年はかかる。その間に俺達に感知されないなんてありえねーよ」
「という事は、そのレベルも神が与えたって事ですよね。魔物王とは其処までしないと勝てない奴だったんですか?」

   俺の疑問を聞き、ガウレッドさんの表情に真剣味が加えられた。

「あれは、存在的には神に近かったな」
「神に……」
「ああ、知能は皆無だったが、その力は【超越者】を遥かに凌駕していた。実際、勇者とハイエルフ。それに俺を含めたこの大陸の【超越者】三人が手を貸しても倒すには至らなかったくらいだ」
「倒せなかった?   だったら魔物王は……」
「勇者とハイエルフが魔物王を封印した……いや、あれは違うな」

   その時の事を思い出しているのだろうか。ガウレッドさんは少しの間虚空を見つめ、再び話始める。

「おそらく、勇者達が魔物王の動きを封じている間に、神が勇者達ごと魔物王を封印しやがったんだ」
「勇者達ごと……やっぱり神は信用出来ないか」
「ほう。それはどういう意味だ?」

   俺の呟きに、ガウレッドさんが興味を示す。
   神を野郎呼ばわりする人だ、話しても問題ないだろう。
   俺はこのダンジョンの魔物の構成。そこから推測される神の思惑をガウレッドさんに語って聞かせた。

「ふむ……神が勇者達にこの大陸の人間を殺させたがっているか」
「その意図までは分かりませんけどね」
「そうか……となると、あいつもそれに気付いてあんな組織を……」

   何かボソボソ言いながら考え込んでしまったガウレッドさん。その言葉の中に入っていたあんな組織という単語が気になり、その事を聞こうとしたのだが、またまたその先手をティアが取る。

「ん!   それよりティアの質問の答え!」

   自分の質問を脇にやられた事にご立腹の様だ。
   真剣に考え事をしていたガウレッドさんがティアを見やり笑みを浮かべる。
   もしかしてこの人、子供好きなんじゃないか?

「くかっかっかっ、すまんすまん。そう言えば俺がどうやってここに来たかだったな」

  言いながら、ガウレッドさんはティアの頭をポンポンと軽く叩く。

「実はな、以前勇者に連れられてここに来た事があってな。その時にポインターを付けていたんだよ」
「…………?」
「…………?」

   俺とティアの頭の上に?   マークがいっぱい浮かぶ。
   ガウレッドさんはそんな俺達の様子を見て、ぽんと手を叩いた後に、

「すまんすまん。人間種やエルフ種には取得出来んスキルだったな。説明しても分かる訳ないか」

   と、一人納得し豪快に笑った。
   いや、一人で完結されてもこっちはさっぱり分からないんだけど……
   見るとティアも不機嫌そうにぷくぅと頬を膨らませている。

「いやいや、重ね重ねすまんな。よし!   今のお詫びと【超越者】になったお祝いを兼ねて、お前らに良いものをやろう」

   言うや否や俺達が反応できないスピードで、ガウレッドさんは俺達の頭を鷲掴みにする。

「それ、受け取れ」

   ガウレッドさんの軽い調子の掛け声と同時に、頭に強い衝撃を受けた。

   
   
   ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   ガウレッドさん。もっと恐怖を身に纏った感じに書きたかったのですが、なんか気のいいおじさんになってしまいました。
   
   
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