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第3章 人間超越編
第51話 時空間魔術……ガウレッドさんの(が)楽しい武術講座
しおりを挟む頭に受けた衝撃と共に、スキルの情報が流れ込んでくる。
【時空間魔術】
初級、時空間収納
特殊な時空間に生き物以外の物を無制限に収納出来ます。また、収納した物の時間を止めたり、進めたり出来ます。(時間を戻す事は出来ません)
中級、時空間結界
次元断裂を利用した結界を張れます。
上級、時空間移動
目で見える範囲に時空間を通って移動出来ます。
超級、時空間転移
ポインターを設置する事により、どんなに離れていてもポインターの場所まで転移出来ます。(ポインターは幾つでも設置出来ます)
(……何だこのとんでも魔法)
[竜種や龍種、天人種などが覚えると言われている魔術ですね。人間種では覚えられない筈なのですが、ガウレッド殿は【譲与】のスキルをお持ちの様です]
(【譲与】……他者にスキルを与えるスキルか)
ガウレッドさんの規格外の能力に驚いていると、慌てた様子のトモの念話が入る。
〈大変ですマスター! スキルポイントが無くなってます!〉
(はぁ?)
トモの報告に驚いてステータスを確認すると、貯めていたスキルポイントが一万も無くなっていた。
はい? 一万? 何故?
俺は唖然としながらガウレッドさんを見る。
「ガウレッドさん……」
「おう、どうだ【時空間魔術】は凄いスキルだろ」
「ええ、それは確かにそうなんですが、俺のスキルポイントがゴッソリ無くなってるんですけど?」
「ああ、それか。やっぱり本来覚えられないスキルを与えるのはかなり無理があったみたいでな、その代償にちいっとばかり使わせてもらったわ」
くかっかっかっ、と笑うガウレッドさん。
いや、確かに規格外のスキルを貰った代償なら良いんですけどね。でも一万って言ったらかなりのもんですよ。
俺とティアで五千づつってこと?
納得しながらも若干の勿体無さを感じていると、隣にいたティアが突然消えた。
「えっ!」
驚いている間にガウレッドさんの背後、空中に現れるティア。その右足は大きく振り上げられていた。
「ん!」
「くかっかっかっ、甘いわ!」
側頭部を狙ったティア渾身の蹴りを、そちらを見ずに腕で防御するガウレッドさん。
そこから始まる二人の組手。
始めての筈の時空間移動を使いこなし、あらゆる角度から攻撃を加えるティアに対し、ガウレッドさんは余裕綽々といった感じで片手で全ての攻撃をいなしている。
「ティア! 一体何を」
「ん! このおっちゃん戦いたがってた」
「おいおい、戦いたがってたって……」
そんな拳で語る漢の様な事を言われても、おにーさんには理解出来ませんよ。
理解不能の理由で戦い始めたティアを止めようとしたら、逆にニアに止められた。
《マスター、遊んでるだけなんだからほっとけば良いよ》
「いや、遊んでるってティアは結構本気で攻撃してるぞ」
《でも、陽炎は抜いてないでしょ》
確かにその通りではある。二人の組手も遊んでるという視点で見れば、孫と戯れる孫好きのお爺ちゃんに見えてくる。
いや、ガウレッドさんは見た目二十代後半なんだから、お爺ちゃんってのはおかしいのだが、何となくそう感じてしまった。
「おう、博貴。お前も来い、ティアだけでは物足りん」
ティアの猛攻を笑顔であしらいながら、俺に向かって手招きしてくる。
おおう、孫の追加をご要望ですか、お爺ちゃん。
一瞬躊躇したが、時空間移動の練習にはもってこいの相手だと思い、参戦する事にした。
「では、遠慮無く行かせてもらいます」
一言断りを入れてから、ガウレッドさんの右手後方に意識を集中して時空間移動を発動する。
「おお!」
一瞬の浮遊感の後に突然入れ替わる視界。初めての感覚に一瞬戸惑ってしまい、攻撃をするのが遅れてしまう。
「どうした博貴。時空間移動の後はすぐに行動しないとだめだろう」
ガウレッドさんの指導の言葉と共に目の前に現れたのは、中指を親指で抑えた右手のアップ。
「うわっ!」
咄嗟に躱そうとするが、その前にデコピンが額にヒットし、その勢いで後方に五、六回転、転がされた。
痛む額を押さえながらティアとガウレッドさんの方に視線を向ける。ティアは分身してるのではないかという程の連続時空間移動でガウレッドさんに猛攻を加えているが、ガウレッドさんは楽しそうにその全てを捌いてみせていた。
あの時空間移動の感覚に最初っから対応するなんて、ティアの戦闘センスは間違いなく俺以上だな。まあ、つい一年半前まで只の学生だった俺に戦闘センスなんてある訳無いんだけど。しかし、俺はティアの保護者のつもりだったけど、もしかして保護されてたのは俺の方だったのか?
保護者としての自信に若干の揺らぎが生じるが、才能が無いのなら数をこなして実戦経験で補えばいい。
半分開き直りの様な考えに至り、俺は再びガウレッドさんに挑み掛かった。
⇒⇒⇒⇒⇒
時空間移動に慣れた頃、俺はボロボロになって大の字に倒れていた。HPも残り三割を切ってます。
大体、ガウレッドさんは酷い。ティアには受け中心で反撃も頭をコツンとか、可愛い擬音が似合う様な事しかしないくせに、俺にはカウンター中心でゴツン! という可愛さの微塵もない反撃を加えてくる。あの人は絶対ロリコンだ。そうに違いない。
ガウレッドさんの人格を全面否定していると、その当の本人の高笑いが聞こえてきた。
ヨロヨロと上半身を起こして見てみると、ティアも体力を使い果たし大の字に倒れている。
「くかっかっかっ、まだまだ甘いなぁ。しかし見所はある、偶に稽古に来てやるから精進するがいい」
うわぁ……見込んでくれるのは有難いけど、親切の押し売りはご遠慮願いたいなぁ。
こんな事がこの先もあるのかとうんざりしていると、その心境を見透かしたのか、ガウレッドさんがこっちを見てニヤリと笑う。
「くかっかっ、お前達はまだ超級までしか覚えられん様だが、俺の神級時空間魔術なら一度会った者の元への転移が出来るからな。俺の気分次第でいつでも会えるぞ」
……超級の上、あったのか。
魔術系や武術系の更なる高みが存在した驚きと、ガウレッドさんのしごきという絶望が相まって何とも言えない気分にさせられた中、ガウレッドさんは『では、また遊びに来るぞ』と言って転移していった。
いや、今遊びって言ったよね。あの人にとって俺達は新しいオモチャ感覚なんじゃないか?
強烈過ぎる嵐が過ぎ去った後、俺は精魂尽き果てて再び大の字に倒れた。
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