理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第3章 人間超越編

第52話 時空間収納……豊かな食生活の始まりだ!

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   インパクト有り過ぎる客人が去った後、俺は大の字に倒れたまま新しい力、【時空間魔術】の確認を行っていた。
   初級は時空間収納。要するにマジックバックの制限無しって感じだけど、収納物の時間停止と時間を進められるっていうのはマジックバックには無い機能だよな。
   中級は時空間結界。今までは防御用魔術といえば、六属性のウォール系やドーム系だったけど、各系統ごとに優位性と弱点があった。でもこの時空間結界は次元の断層を作って防壁にするから弱点が無い。実に高性能と言えるが、ガウレッドさん相手に使ったらあっさり砕いたんだよ、あのおっさん。多分魔力の差なんだろうけど、素手で次元の断層を砕くってどうなのよ。
   上級は時空間移動。視界の何処にでも転移出来るという攻防一体の転移魔術だけど、ガウレッドさんは何処に転移して来るか分かってたみたいだな。あれは勘が良いのか、それとも何か特殊なスキルの効果なのか。

〈マスター、その事なのですがーー〉

   スキルの確認にアユム達の意見も欲しかったので念話を使用しての確認を行っていたのだが、早速トモが何か気付いた様だ。

〈取得可能スキルに【空間掌握】というスキルが増えています。おそらく【時空間魔術】を取得した時に出現した様なのですが〉
(【空間掌握】……名前から察すると自分の周りの空間で起きる事が分かる能力かな?)
[おそらくそうでしょう。ガウレッド殿はそのスキルで空間の歪みを察知し、出現場所を特定していたと推測します]

   アユムの推測を聞き、眉間に皺が寄る。

(それって、【空間掌握】を持ってる人に時空間移動を使ったらカウンターを喰らう可能性が高いって事だよね)
[そういう事になりますね。ですが【空間掌握】を取得出来ない人間種などには効果は絶大です]
(うん、相手を選んで使えばいいだけだ。で最後に超級。時空間転移。転移先であるポインターは幾つでも置けるみたいだけど、あまり置きすぎると何処に置いたか分からなくなりそうだな)
[そちらの管理は私どもで行いますので心配ありません]

   うん。やっぱりアユムさんは頼りになるなぁ。
   無二の相棒【共に歩む者】の有能さに感謝しつつ【時空間魔術】の性能を反芻していくーーそして、ある事に気が付いた。
   あれ?   無限に収納出来て、しかも時間を止められるって……
   その性能に気付き素早く身体を起こす。

「ティア!   四十層に行くぞ!」
「ん?   分かった」

   小首を傾げたティアを連れ、俺達は四十層に向かった。

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   第四十層には相変わらず一面の田園風景が広がっていた。
   魔法陣での移動で直接この階に来たのでこのフロアのボス、ファームオーガは出てこないが、結構【収穫】した筈の稲が復活している状況に思わず笑みが零れる。

「ティア。この層の稲を全部【収穫】するぞ!」
「ん?」

   頭にクエスチョンマークを浮かべながらも一緒に【収穫】をかけてくれるティアと共に、米俵を量産していく。

「くっくっくっ……あっはっはっはっはっ!   これでこの世界でも新米が食い放題だぁ!」

   ハイテンションで米俵を時空間収納に収め、時間停止をしていく俺をティアが冷ややかに見つめていた。
   その後四十一層から四十五層を回り様々な食材を根こそぎ時空間収納に収めた俺は、四十層にポインターを設置した。
   このポインター、設置と言っても目に見える訳ではない。アユムの説明ではこの場所の別次元に印を付けてるという事なのだが、別次元という概念がよく分からないのに、そこに印を付けてるという行為がどういう事なのか理解出来る訳が無いので、理解するのは諦めた。
   とにかく、好きな時にこの場所に来れるという事実があれば良いのだ。
   
   ⇒⇒⇒⇒⇒

   同日深夜。
   俺は厨房で大豆と小麦を蒸していた。

「くっくっくっ、これが成功すれば……くっくっくっ、あっはっはっはっ!」

   厨房の入り口で隠れる様に俺の様子を窺うティアを【忍ぶ者】の気配察知が感知していたが敢えて無視。俺は今、この作業に集中したいのだ!

   ⇒⇒⇒⇒⇒

   翌日早朝。
   昨夜作った物を時空間収納の中で時間を進めていたので、それを確認してみる。

「うむ、良い出来栄えだ。この世界にもコウジカビが存在していて本当に良かった。後はこれに食塩水を加えて再び時間を進めれば……」

   昨夜に続いてまた入り口付近で様子を窺うティアの手前、込み上げて来る笑いを堪えた。
   昨日は喜びのあまりテンションが変な方向に上がっていたけど、これでティアに気味悪がられたら精神に多大なダメージを受けかねない。
   俺は出来る限りの優しい笑みを浮かべてティアの方に振り返った。

「ティア、今日は早いな。朝食は何がいい?」
「……ひろにぃ変じゃない?」

   ティアは入り口の陰に身体を隠し、顔だけを覗かせて不安げに聞いてくる。
   ……警戒されている。
   これは不味い。確かに昨日の俺の行動は奇行に近かったと自覚もあるが、まさかティアに心配される程のものだったとは……

「はっはっはっ、俺の何処が変なんだい?」

   両手を広げ朗らかに変じゃないアピールをしてみたが、ティアの態度に変化は無い。

「……やっぱりまだ変」

   断言されました。
   あれー、おかしいなぁ。いつもの俺ってこんなんじゃなかったっけ?

[マスター。今の行動には違和感しかありません]

   アユムからも忠告されました。
   自然を装ったつもりだったけど、相当不自然に映っていたらしい……仕方がない。最後の手段だ。

「ティア。今日の朝食は新しい肉料理だ」
「ん♪   楽しみ」

   良かった。瞬時に警戒を解いてくれた。しかし、あの警戒心を食事一つで解いてしまうとは、ティアの今後がちょっと心配になってしまった。
   ちなみに今日の朝食は牛丼にしました。ティアは大満足の様だったが、試作第1号の醤油は俺的にはイマイチな出来だった。
   まだまだ改良が必要だな。


   
   
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