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第4章 超越者の門出編
第65話 ティアの行動理念……お母さんって……
しおりを挟む(ところで、何でティアは最近こんな行動を取るんだろ?)
デルク村を出て三日目。俺に肩車をされてご機嫌に目を細めるティアの姿を【空間掌握】で確認しながら、その行動心理が解らずにアユム達に相談する事にした。
ログハウスにいた頃も何かと側にいたティアだったが、外に出てからはこの様なスキンシップ? がやたらと多い。またニア辺りが何か吹き込んだんじゃないかという、カマかけを含めた相談だったが、それに答えたのはトモだった。
〈実は、ログハウスを出る前にティアちゃんから『普通の家族ってどんな感じ?』と聞かれまして……〉
(……やっぱりティアの両親は……)
ティアは両親は優しかったと言っていたが、そうでは無かったのかと疑惑を持ってしまったが、それを直ぐにトモが否定する。
〈いえ、ティアちゃんの両親はとてもティアちゃんを可愛がってたみたいなんですが、やはり他のエルフ達の手前、家からティアちゃんを出す事は無かったみたいです。ですから、ティアちゃんは家族でのお出掛けがどんなものか分からなかったみたいなんです〉
(お出掛けって……)
ティアが俺を家族として認識してくれるのはいいけど、旅と家族でのお出掛けは大分違うと思うよ。
《ティアちゃんにとっては同じ事だよ。新しいお洋服を着て遠くにお出掛け》
ニアが傍から口を挟んでくる。新しいお洋服ってミスリル装備一式の事か? ティアやこいつらは伝説級のミスリル装備をお洋服扱いするのか。
悪ノリするニアの解釈は兎も角、ティアは森とダンジョンしか知らない子だからなぁ、もしかすると、俺以上にこの世界の常識に疎いのかもしれない。
(で、なんて答えたんだ)
〈それなんですが、私達も一般の家族がどんなものなのか説明するのが難しかったものですから、取り敢えず、家族のスキンシップの例をいくつか……〉
(成る程、この肩車はその一環か……)
そう言われると無下には出来ない。ティアが求めるものが家族の絆や温もりだとしたら、俺としてもそれに付き合うのはやぶさかではない。強いといってもティアもまだ十歳の子供だからなぁ。でもーー
(このスキンシップって兄っていうより、お父さんとのそれじゃないのか?)
〈そこは、まあ、マスターとティアちゃんの今までの関係を鑑みれば、兄というより……〉
《お母さんだよね!》
言いにくそうなトモに変わり、ニアが楽しそうに答える。
(お母さんって!)
文句を言いかけて今までの生活を思い出す。
ティアの服や装備を作り、ティアの食事を作り、時に暇だとブーたれるティアを構ってやり、ティアを教育し、躾けた。まぁ、躾けはほぼ失敗したが……あれ? これ立派にお母さんだ。
その事に気付いて項垂れる俺。
「ん? どうしたのひろにぃ」
急に俺に項垂られ一瞬バランスを崩したが、直ぐに体勢を立て直したティアが心配そうに聞いてくる。
「何でもないよティア」
念話でニアがケラケラと笑っているのを聞きながら、ティアに答える。
[もう、二人ともマスターをからかうのはやめなさい]
〈えっ! 私は違うよ〉
二人の母的存在アユムが現れ、トモが私はやってないと言い訳する。
確かにやってないけど、あの口籠もりは見事なニアへのパスだったぞトモ。
[マスター、何か不穏な事を考えていませんでしたか?]
おっと感の鋭いアユムに母よわばりしたのがバレた。話題を晒さねば。
「いや、何も考えてないよ。それよりも、デルク村で悪さをした冒険者共は次の町にいるかな?」
[あのワイバーンの子供を連れた冒険者ですか? もう一ヶ月も前の事ですし、難しいのではないでしょうか。それに、その者達が冒険者という確証もありません]
「冒険者じゃない?」
デルク村の人達は冒険者って言ってたけど、違うのか?
[はい。今回のその者達の行動は、露見すれば完全な犯罪行為。健全な冒険者が行うにはあまりにも危険な橋です]
「じゃあ、そいつらは冒険者じゃないんだ」
[中にはモラルの無い冒険者もいますので一概にそうだとは言えませんが、犯罪者の可能性の方が高いかと]
「? 犯罪者が冒険者って事は無いのか?」
[犯罪を犯した者は冒険者資格を剥奪されます。大概その様な者は犯罪者ギルドに所属し、冒険者の様に装って犯罪行為を行います]
「はー、そういう事。ところでそいつらは何でワイバーンの子供なんて攫ったんだ?」
[ワイバーンは亜種とはいえ竜種ですので、その素材は全て一級品として扱われています。また、子供なら飼い慣らして竜騎士の騎乗竜として調教出来ますので、生きたままなら高値で売れることでしょう]
「金の為か……それに、犯罪者ギルドね」
新たな情報を得た俺の視線の先に、ルティールの町が小さく見え始めていた。
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