理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第4章 超越者の門出編

第66話 ルティールの町……俺は一生ティアの料理人なのだろうか

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[ルティールの町。人工は八千人程で、その半数は町の後ろにそびえる鉱山で働く鉱夫となっております]
「鉱山!」

   俺がアユムの鉱山という言葉に反応すると、念話の向こうで微妙な空気が流れるのを感じた。

〈マスター、ルティールの鉱山で取れる鉱物は主に貨幣用の銀と良質な鉄鉱石です。マスターの望む様なレアな鉱物はありませんからね〉

   俺が鉱山に興味を持った事に感づいたトモが釘を刺してくる。

「そうなのか……」
《大体、レア鉱物がそんなにほいほい出るわけないじゃん》

   トモの報告に少し残念に思っていると、今度はニアが口を出してくる。

「そんなもんか……でも、鉱山があるって事は鍛冶屋もいっぱいいるんだろ?」
〈ありますけど、【至高の鍛冶屋】Lv10のマスター以上の職人はいませんよ〉
「うぐっ……でも、他の職人さんの作品は見てみたいなぁ」
〈見るのは構いませんが……そうだ!   マスター、そのミスリルの装備は仕舞っていた方がいいです〉
「何でだ?」
〈マスターレベルの職人が仕上げたミスリル装備は、同じ職人の目を引きます。つまり、鍛治職人が多い町ではマスターの装いは凄く目立つのです〉
「はあ、そんなもんか」

   この世界に来てから俺以外の人が作った武器、防具は見た事がないからいまいち実感が湧かないが、トモの熱弁からすると俺の作品は凄いらしい。
   一応、疾風、陽炎は古代級-でミスリルシリーズは伝説級から伝説級+なのだが、ニア曰く、

《その辺の鍛冶職人が作れるのは通常級から希少級までだから、無名の旅人の装備が全て伝説級以上なんてあり得ないよ》

   との事。確かに【至高の鍛冶屋】を持つ俺でも普通の鉄で作れば、良くても希少級+なのだから、当然といえば当然の話だ。仕方がないので武器、防具を初期の頃に作った鉄製の物に変え、俺達はルティールの町へと入った。

   ルティールの町は活気に満ち溢れていた。
   屈強な鉱夫や冒険者らしき者、買い物をする御婦人やドワーフらしき種族の方などなど、更に門から伸びる大通りの両脇に並ぶのは煉瓦造りの建物。それらは初めてこの世界の町を見た俺からすれば、とても混沌として物珍しい物に映った。

「うわー……」
[マスター、あまりキョロキョロしないで下さい。田舎者みたいで見っともないですよ]

   アユムから注意を受けて、物珍しそうにあっちこっち見るのを止める。まぁ、この世界に関していえば、森の中とデルク村しか知らないのだから田舎者なのは間違いでは無いのだが……

「さて、それじゃ先ずは宿探しかな」
[そうですね。場所は大通りに面した宿が宜しいかと、裏通りにある宿は治安が悪い可能性があります。相場は一泊二食付きで銀貨八枚から十二枚ですが……]

   アユムがそこまで相場の説明をすると、ティアが横から口を挟んだ。

「んっ!   食事は要らない」
「……ティア、食事は要らないって、それじゃあ朝食と夕食はどうするの」
「食事はひろにぃに作ってほしい」
「……ティアさん、俺にゆっくりするなと?」
「ん、ひろにぃがいい」

   何故かそこは譲らないティア。すると、ニアが耳打ちする様に念話してくる。

《ティアちゃんマスターの料理しか食べてないから舌が肥えちゃったんだよね。デルク村でいかにマスターの料理が美味しいか理解しちゃったみたいだし》
「……そんな馬鹿な」

   ニアの解説にそんな訳無いだろうとティアの方を見ると、ティアはその通りだと言わんばかりにコクンと大きく頷いた。
   結局、宿はティアに押し切られる形で大通りの外れにあった素泊まり銀貨五枚の宿となった。受付で確認すると厨房は貸してくれるらしい。
   こんな宿あんまり泊まり客はいないだろうと思ったが、思いの外若い泊まり客が沢山いた。聞けば、金の無い駆け出しの冒険者はこの様な所に食料持ち込みでよく泊まるそうだ。
   俺とティアは一部屋づつ借り、そのまま町見学の為に外に出る。
   荷物は全て時空間収納に入れているので、部屋に荷物を置く必要が無いのだ。
   食べ物屋の前で足が止まるティアを俺が抱えて引き離し、武器屋や小物細工の店の前で止まる俺をティアが必死に引きずって離し、そんな事をしながら一通り町を見て回ると、空が茜色に染まっていた。
   そろそろ宿に帰ろうかと思った所で冒険者ギルドを見つけ、その前で足を止める。

「……デルク村の件をちょっと聞いてみようかな?」
[犯罪として報告するのなら警備隊の詰所の方がよろしいのでは?]
「いや、通報するつもりは無いよ。そんな事したら最悪、犯罪者ギルドとやらを敵に回すかも知れないじゃないか。だから、ただ単に子供のワイバーンを連れた冒険者を見なかったか聞くだけさ」

   ワイバーンを攫った奴らに仕返ししたい気持ちはあるが、それを引き金に大っきな裏ギルドを敵に回すのは勘弁願いたい。俺の理想としては犯罪者ギルドにバレない様に、実行犯に仕返しする事なんだけど……

[成る程、マスターは実行犯のみに制裁を加えるつもりなのですね]

   長い付き合いのアユムは説明無しで理解してくれた様だ。

「そういう事、だから駄目元で行ってみよ」

   俺はそう呟いて冒険者ギルドに足を踏み入れた。
   


   
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