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第4章 超越者の門出編
第76話 帰還……時間を置いたら恐れられてました。
しおりを挟む「戻ってきた……やっと戻って来たぞ!」
「やりましたねヒイロさん」
ルティールの町を視界に捉え感動に打ち震える俺に、ナグルが笑顔で答えてくれる。その笑顔には出会った頃のいやらしさは無く、年相応の爽やかさがあった。
いや~、本当に長かった……
あの冒険者を食い物とせんとする、ふざけたダンジョンから脱出する為、俺は【時空間魔術】の時空間転移を使用したのだが、出たのはログハウスの前。
まぁ、今までの道中でポインターを設置してなかったのだから当たり前なのだが、分かっていても、あれはなかなかに精神的ダメージが大きかった……
それから森を出るのに八日。俺達だけならさっさと出たのだが、ナグル達のレベルが低く、どうせならとナグル達のレベリングをしつつ、礼儀の叩き込みも敢行。そっちの方は時に優しく時折、力を見せ付けながら、じっくり叩き込んだ。
途中、魔物かモンスターに喰い散らかされた冒険者らしき死体が四体転がっていて、欲に駆られた冒険者の末路を見せられたのも大きかった。
お陰で森を出た頃には、ナグル達は全員がレベルが四十オーバーになっており、あの鼻に着く言葉遣いも無くなっていた。
ティアもこの位厳しく躾けていたら、もうちょっと礼儀正しくなっていたのだろうかと一瞬思ったが、ニアから《マスターはティアちゃんに甘すぎるから、そんな事、思ってても出来なかったと思うよ》と突っ込まれた。
そして、デルク村。
森を出た途端、村人に見つかり俺達は即確保された。
村長から、ちゃんとした礼もしない内に村から出て行くとは何事だと怒られ、直ぐさま、命の恩人様に感謝する会という名の宴会が始まったーー勿論というか、何故か料理は俺が担当だったのだが……
宴会中、前回黙っていなくなった俺達には監視が付き、宿の親父には米料理の手ほどきを請われ、気がつくと三日が経っていた。
それから村を出て二日。やっとルティールの町に戻ってきたのだ。
「本当に、ヒイロさんとティア師匠にはお世話になりました」
ナグルを先頭に、五人の少年、少女が俺とティアに深々と頭を下げる。ちなみに、森での戦闘指導はティアに任せてみた。ティアに少しでも協調性を持たせたいと思っての試みだったが、ティアはナグル達に自分を師匠と呼ばせ鬼教官ぶりを発揮した為に、其方の試みは失敗に終わっている。
「ああ、お前達はもう、一端の冒険者だ。もう、怪しい事には首を突っ込まずに、堅実に稼げよ」
「「「「「はいっ!」」」」」
ナグル達の元気な返事を聞き、俺はウンウンと満足しながら頷き、ティアは腰に手を当てて、いつもの様に踏ん反り返っていた。
⇒⇒⇒⇒⇒
「ナグル君! 無事だったの」
冒険者ギルドに入ると、カウンターに詰めていた職員のお姉さんがナグル達に気付き、こちらに駆け寄って来た。
「皆さん、僕達が急にいなくなった為に心配をおかけした様で申し訳ありませんでした」
抱きつかんばかりに近付いて来た職員のお姉さんが、ナグルが頭を下げた途端、ピタリと止まる。
「……どうしたのナグル君。生意気盛りだったのに、急に大人というか……紳士的になっちゃって……」
明らかに動揺しながら語りかける職員のお姉さんに、ナグル達は爽やかな笑みを浮かべる。
「あの頃の僕達は本当に愚かでした。目先の欲に駆られ、平気で人を利用しようとしました……ですが、この通り目が覚めたのです。これからは真面目に冒険者活動をしようと思いますので、ご指導、ご鞭撻の程宜しくお願いします」
ナグルの言葉を聞いたお姉さんは大きく目を見開いたかと思うと、彼等の後方にいた俺達の方にその目を向け、更にその目を見開いた。
「……貴方は確か、集団恐慌事件の!」
何その事件って……おそらく【威圧】を使った時の事を言ってるんだろうけど、事件っていう程の騒ぎを起こした覚えは無いんだけど。
俺が大袈裟な物言いに呆れていると、お姉さんは更にヒートアップして言葉を続ける。
「貴方達! ナグル君達に一体何をしたの! 脅迫? 洗脳?」
「おいおい、何物騒な事を言ってるんです。俺はただ、ちょっと捻じ曲がってた性格を矯正しただけじゃないですか。なあ?」
お姉さんの明らかに俺が悪いと言わんばかりの物言いに、俺は自分の正当性を証明しようとナグル達に同意を求めると、彼等は笑顔で頷いてくれる。
確かに俺達の力の事を黙ってもらう為、少し従順になる様に仕向けた感はあるが、これは決して洗脳ではない……ないよね?
「ねっ、言った通りでしょ」
ナグル達が同意してくれたので、お姉さんも分かってくれると思ったのだが、お姉さんはワナワナと震え出した。
「やっぱり洗脳じゃない!」
そう叫び、【威圧】を使ってもないのに恐怖の視線を向けてくるお姉さん。周りを見てみると、他の職員さん達も似た様な視線をこちらに向けていた。
そしてーー
「一体、何事だ」
デジャブの様に開けられるドアと、そこから顔を出すギルドマスターイルムさん。
「……また、お前達か……取り敢えずこちらへ」
ドアを開けて直ぐに俺達の姿を確認したイルムさんは、俺達を部屋に招き入れるのだった。
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