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第4章 超越者の門出編
第105話 神才……かなねぇ、諦めてください
しおりを挟む「ただいまぁ」
王子とエルシア嬢との密会を終え、ギルドへと戻ってきた俺は、取り敢えず話の内容をかなねぇ達に話しておこうとギルドマスターの部屋へと足を踏み入れた。
「あら、ひろちゃんお帰りぃ~」
宰相の暴挙が未然に防げ仕事量が減ったのか、かなねぇがこたつにどてら姿でリラックスしながら出迎えてくれる。その向かいにはレリックさんが同じくこたつに入りながら資料に目を通していた。
「あれ、ティアは?」
当たり前の様にこたつに入りながら姿の見えないティアの所在を聞くと、レリックさんが資料から目を離しこちらに顔を向ける。
「ティア殿はまた厨房ですね。何でももう少しで【至高の料理人】のレベルが10になるとか……」
「マジですか! 相変わらず成長が早いなぁ」
ティアの【ハイエルフ】と【神才】のコンボの凄さを改めて実感していると、かなねぇがこたつの天板に顎を乗せたまま、半眼の視線を俺に向けて来た。
「ねぇ、前から思ってたんだけど、ティアちゃんって何者?」
「ああ、それは私も常々思っておりました」
かなねぇの疑問にレリックさんも乗ってくるが、疑問の幅が大き過ぎていまいち要領が得られずに俺は首を傾げた。
「何者って言われても……ティアはちょっと変わったところがあるけど、ログハウスのあった森に住んでた普通のエルフの筈だけど?」
俺がそう答えると、かなねぇは上体を起こしジト目で睨んでくる。
「ひろちゃんさぁ、それ、本気で言ってる?」
「えっ、どういう事?」
「この世界の住人でありながら、勇者と互角の成長を見せるなど普通では有り得ないという事です。しかも、まだ子供ですからねぇ、このまま成長したら一体どうなるんでしょう」
「……」
レリックさんにそう言われ、俺は言葉を詰まらせる。
「恐らく何らかの特殊なスキルを持ってると思うんだけど、ひろちゃんなんか知ってる?」
黙った俺に対しかなうねぇが畳み掛けてくるが、そんなかなねぇの顔を見ながら俺は大きくため息を吐いた。
「かなねぇさぁ、前に言ってたよね。人のスキルの詮索をする奴は嫌われるって」
「うぐぅ……確かにそうなんだけど、でも、ティアちゃんの成長速度ってあまりに異常だからやっぱり気になるじゃない」
「気になるじゃない、じゃないよ。この世界に来て日の浅い俺でも、さすがに人様のスキル事情をベラベラ喋る気は無いよ」
ティアの【神才】は【ナビゲーター】ですらデーターに無かったスキル。そんなとんでもないスキルの情報を仲間の俺が喋ったんでは、ティアの信用を失いかねない……って、そう言えば……【神才】はナビゲーター時代のアユムが知らないスキルだと言ってたけど、上位スキルの【共に歩む者】となった今現在ならどうなんだろ?
(なあ、アユム)
気になった俺は、【高速思考】を発動させてアユムに呼び掛ける。
[なんでしょうマスター]
(【神才】って、前に神からの加護みたいな物だって言ってたけど結局、本質的な事は分かったの?)
[申し訳ありません。あれから色々と調べてはいるのですが、やはり【神才】に関するデーターはありませんでした]
(いや、謝る必要は無いよ。でも、そうか……ナビゲーションスキルの最高峰でも【神才】は分からないのか……)
[私達が扱えるのはあくまで、今までこの世界で起きた事象から得られた情報なので、前例が無いものは分からないのです]
アユムの言葉に、俺は眉をひそめる。
(前例が無いスキル? つまり、【神才】はティア以前に持っていた者がいなかったって事?)
[はい。ですが、その様なスキルが他にある事を私達は知っています。しかし、それをティアが持ってるというのは矛盾してしまうのです]
(??? 【神才】みたいにアユム達が知らないスキルが他にもあるのか?)
[はい。例えば、マスターの持つ【スキルポイントアップ】や、香奈美殿の【年齢詐称】などが挙げられます]
(! オリジナスキルか!)
[その通りです。オリジナスキルは勇者が各々持つ、元々この世界には無かったスキルです。なので、【森羅万象の理】を使わない限りその効果は分からないのですが、そのオリジナスキルと同格の物を、この世界の住人であるティアが持っているなどという事はあり得ない話なのです]
(……ティアって何者?)
[初めて会った時に見た限りではただのエルフでしたが、今となっては、分かりかねます]
([……])
《ふたりして、何ふざけた事言ってるかな》
ティアが一体何者なのか。その答えが出ずに俺とアユムが黙り込むと、ティアと仲のいいニアが珍しく不機嫌な様子で割り込んできた。
[ニア、一体何を言って……]
《マスター! アユム! ティアちゃんはティアちゃん。それで良いんじゃないかな。大体、ティアちゃんが何者かなんて、当の本人も分かってないと思うけど?》
アユムの言葉を遮り、強い口調でそう語るニアの言葉を受け、俺は屈託の無い笑みを浮かべるティアの顔を思い浮かべて思わず笑みをこぼしてしまった。
ティア自身分かってないか……確かに、なんも考えてなさそうだもんな。
(ティアはティアか……確かにその通りだな)
《マスター、分かれば良いんだよ。余計な詮索は、せっかく築き上げてきた仲をギクシャクさせるだけだよ》
ニアに諭されて意外に思いながら自笑していると、いきなり耳元で大声が聞こえてきた。
「ひろちゃん!」
「はい!?」
いきなり名前を呼ばれ、調子外れな返事をしつつかなねぇの方に目を向けると、かなねぇはしかめっ面で俺を真正面から見ていた。
「ひろちゃん、なんか考え事でもしてた?」
「えっ、何で?」
【高速思考】を使っていたから時間は一瞬だった筈……アユム達との密談を何で悟られた?
「ひろちゃん今一瞬、目の焦点がこっちを向いてなかったよ。【共に歩む者】と相談事でもしてたんじゃないの」
おおっと、念話に集中してて視覚情報まで気が回ってなかった。しかし、一瞬焦点が合ってなかっただけでそこまで読むなんて、やっぱりかなねぇの洞察力は半端ない。
一体、何をコソコソやってたんだい、とでも言いたげに詰め寄ってくるかなねぇの興味をそらす為に、俺は本題である今日の密談の話を投げ掛ける事にした。
「そう言えば、今日ーー」
「何? 話題をそらすつもり」
そうはさせないとでも言いたげなかなねぇの言葉を無視して、俺は話を続ける。
「エルシア嬢とティスタルク王子に会ってきたよ」
「それがどうしたって言うのよ。話をそらさない……えっ?」
どんな話題だろうと流されないつもりだったのだろうけど、かなねぇは俺の口から出た二人の名前を聞いて、その動きを止めた。
「宮廷魔術師筆頭のお孫さんと、第二王子ですか。なかなか興味深い方々と密会してきたのですねぇ。で、どのような事をお話ししてきたんです?」
固まってしまったかなねぇの代わりに、レリックさんが興味を持った様で思いっきり喰いついてきた。
「何でも、宰相の力を削ぐ為に俺の健一達との合流を応援したいって事だよ」
「ほほぅ……それは面白いですね。しかし、第二王子が出てきたと言う事は、やはり国王と王太子殿は役に立ちませんか」
「聞いた限りでは、二人とも使い物にならないみたいだね。だから自分が、って事みたいだけど、第二王子では貴族達を説得するには説得力が足りない」
「だから、更に宰相の力を削りたい訳ですか……しかし、それで王権を取り戻したとしても、お若いお二人はその後の事まで考えているんですかねぇ」
「それはほら、エルシア嬢がいたって事は……」
俺の言葉を聞き、レリックさんが納得いったといった風に頷いて見せる。
「成る程、最近あまり目立った動きを見せずに宰相の好き勝手させていると思っておりましたが、あの御仁は裏で動いていましたか。しかも接触のタイミングを見るに、博貴殿が来るのを待っていた節がありますねぇ」
「二人の口から明確な言葉は聞けませんでしたが、多分、そうではないですかね。先程のレリックさんと同じ疑問をぶつけたら、王権を取り戻したあかつきには、冒険者ギルドと親密な関係を築きたい。と、即答してましたよ」
「なんですって!」
俺の言葉に反応したのはさっきまで固まってたかなねぇ。かなねぇは体をこたつの上に乗り出し、俺の両肩を掴むと凄い勢いで揺さぶり始めた。
「王子がなんで冒険者ギルドと親密な関係を築きたがってるのよ!」
「それは、宰相を失脚させた後は勇者が不在になるからではないですか。博貴殿の機嫌を損ねず、更に他国の勇者の脅威に対しては冒険者ギルドの力で牽制する。自分の労力は殆ど使わない、実にあの方らしい策略です」
かなねぇに揺さぶられて上手く話せない俺。代わりに、レリックさんが解説すると、かなねぇの動きがピタリと止まった。
「それって、向こうから会談の申し入れがあったら……」
「勿論、冒険者ギルドの代表たる総統が出向くのが礼儀でしょう」
「そんな……せっかく仕事が減ったと思ったのに……」
「また、前以上に忙しくなりそうですねぇ」
「いやーーーーーーーーー!」
レリックさんの愉しげな一言で、ギルド内にかなねぇの悲痛に満ちた悲鳴が轟いた。
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