理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗

神尾優

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第5章 『水の国』教官編

第127話 新たな同行者……裏表は無さそうに見えるけど……

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「で、忍さんはどうしたいんですか?」
「いやー、それが、私の目で博貴君を見極めてから接触の予定だったんだけど、まさか、私の尾行がこんなに早くバレるとは思ってなかったんでね。どうしたら良いと思う?」

   逆に聞かれてしまった……取り敢えずこちらとしては今のところ敵のつもりはないが、それでも味方でもない監視対象だった相手に聞くかね、それを。
   この場合、丁重にお引き取り願うのが得策なんだろうけど、サバサバしていて笑みを絶やさないこの人は、どうも何となく憎めない。
   さて、どうやってそっちの方に話を持って行こうかと考えていると、かなねぇがイライラした感じて口を開く。

「普通、尾行を見つかった時点で作戦失敗と判断して即座に撤退が鉄則でしょう。なんで、まだここに居座ってるかな」

   かなねぇのトゲを隠しもしない言葉。しかし、忍さんの笑みは崩れなかった。

「食事に呼ばれたからに決まってるだろ。食後は休憩を取る、それも鉄則!   しかし……博貴君のご飯、美味かったなぁ……やっぱりご飯は最強だね……」

   先程の食事を思い出したのか、力説した後で忍さんは空を見上げてニヘラと口元を緩ませる。その仕草がティアを思い浮かばせ、思わず苦笑してしまった。
   そんな俺を睨みながら、かなねぇが顔を近づけてくる。

「ひろちゃん。何、和んでるのよ!   あいつはああ見えて調停者のナンバー2、鬼神と恐れられている女なのよ。気を許しているとあっという間に抱き込まれるわよ……物理的に!」

   忍さんに聞かれないようにヒソヒソと話すかなねぇの話の内容に、俺の目は点になる。

「物理的に抱き込むって、どういう意味だよ」
「そのまんまの意味よ!   加藤忍は見た通り単純な奴だけど、その物理的な戦闘力はこの大陸でも間違いなくトップクラスなの。だから、その気になれば力尽くで目的を遂行できちゃうのよ!」
「目的って……」

   薄々は分かっていたが、俺の呟きに対してかなねぇは俺を指差す事で答える。
   俺を引き込むことが目的ですか。まぁ、今までの話の内容からすればそうなるわな。

「でも、俺とかなねぇの二人がかりなら、そうなったとしても何とかなるんじゃないの?」
「それが可能ならとっくに仕掛けてるわよ。ひろちゃんがログハウスにいた頃からどのくらい成長してるか分からないけど、その成長度合いを計算に入れても、まず勝負にならないわね。二期の勇者はそのくらい力量差があるのよ」

   確かに、同じ二期の勇者だというマッチョのお兄さんの気配を、俺は探れていなかった。これは、隠密系の能力でまだ、俺があのお兄さんに劣っているという証なのだろうけど、それで戦闘力も劣っているという事になるのだろうか?
   俺の強みはスキルの豊富さにあると思う。隠密の技術だけで言えば使えるスキルは【忍ぶ者】だけであり、同系統のスキルを持っているであろうお兄さんにレベル差で負けるのは仕方のない事。でも戦闘になれば、使えるスキルは格段に増える。例えレベルと能力値で劣っていても、様々なスキルを駆使すれば、戦闘なら良い勝負が出来るんじゃないだろうか。
   忍さんは恐らく【大剣術】を軸にそれを生かすスキルを持っていると思われる。それ程武の力で恐れられているのなら多分、【武を極めし者】も持っているだろう。だけど、魔術系のスキルは?   もし持っていないのなら、魔術系も神級に昇華している俺にも充分勝機があるのではないだろうか。
   まぁ、それでも手も足も出なかったガウレッドさんの例もあるし、要らぬ喧嘩を売る気は無いけど。
   勝算はゼロではなさそうだと考えを巡らせていると、忍さんがやおら何かを思いついたようにポンッと手を叩く。

「そうだ!   見つかってしまったのは仕方がないから、このまま博貴君を観察させてもらおうじゃないか」

   爽やかな笑顔でそう宣言する忍さんを、俺とかなねぇは目を見開いて見やる。

「はぁ?   何それ!」
「だって、仕方がないじゃないか。隠れ見る事が出来なかったんだから、堂々と見るしかないだろう」

   かなねぇの、俺の心内を代弁したような叫びに、忍さんは悪びれた様子も見せずに答える。

「それは、つまり……俺達に同行すると?」

   俺の動揺を隠せていない言葉に、忍さんはニッコリしながら頷いた。

「あんたねぇ!   私達が今から何処に行くか分かっているの?」
「『水の国』の首都、アクアガーデンだろ。『水の国』の勇者を鍛えるために」
「そこまで知ってるのなら……!」

   かなねぇの文句を忍さんは手で遮った。そして、そのままかなねぇを見据えながら口を開く。

「『水の国』の女王様なら私も顔見知りでね、私を連れて行けば何かと融通も利くと思うけどね。それに、君はどうせアクアガーデンに着いた時点で身動きが取れなくなるだろうし……」
「……ちょっと、それはどういう意味よ」

   意味深な忍さんの言葉に、かなねぇの顔付きが神妙なものへと変わるが、忍さんはそれをスカすようにプイッと顔を背けた。

「長い旅路になると知っていて、お忍び気分で身分を偽って連絡手段も持たずに旅をしていた君が悪い。せめて、前の町で冒険者ギルドに顔を出して入れば今、起きている事態を把握出来てただろうにね」
「だ、か、ら、その起きている事態を説明しなさいよ!」
「ふふん。それを私が説明してやる義理があるのかい?」
「ぐぬぬぬ……」

   ぐうの音も出ずに悔しそうに唸るかなねぇを尻目に、忍さんはこちらへと顔を向ける。

「と、いう事で、アクアガーデンでの案内は私がするから、博貴君は大船に乗った気でいたまえ」
「それは、決定事項なんですか?」
「博貴君も、勝手知ったる者が側にいた方が安心だろ?」

   そうですか……決定事項なんですか。
   そうと決めたら意地でもその道を突き進む。本当にティアの行動パターンとそっくりだ。いや、言い聞かせれば言うことを聞いてくれるティアの方がマシなのかな?
   ティアも成長したらこんな感じになるのだろうかと思ったら、なんか、忍さんの同行も悪い気がしない気がしてきた……
   いかん、いかん!   これがかなねぇの言う和むってことだな。
   ティアに似た雰囲気を滲ませる忍さんに、どうしても緩んでしまう気を引き締めて、俺は着く前に前途多難になりつつあるアクアガーデンを引きつった笑みで見下ろしていた。
   
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