スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~

黒色の猫

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8話・引き際

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 ラスは、短剣を引き抜きながら俺の前に出るが、緊張しているように見えたので、フィア婆様の時にもやった深呼吸を勧める。
 数回深呼吸し、落ち着いたラスは、相手がスライムと侮る事なくスキルを発動し、攻撃をさせる隙を与えずに、短剣を振り下ろした。
 その一撃は、剣筋がぶれる事なく、しっかりと弱点である核を捉えており、一撃でスライムを倒した。
 短剣を使った事のない俺から見ても、迷いなく、練習に基づいたいい一撃に見えた。
 倒し終えた事で、高揚こうようしていると思われるので、少し時間をおいて、声をかける。
 特に気分が悪くなった訳ではないようなので、このまま探索を続ける事にし、ついでとばかりに、モンスターを探す事からやってみるか尋ねると、ラスはやる気を見せる。
 すぐにでも出発しそうな勢いのラスに、スライム素材の回収用の道具を手渡し、説明しながら回収して貰う。
 回収を終え、道具や回収した物を預かった後、ラスを先頭に出発する。
 探索にあたって、過去の探索で起こった事や気を付ける点などを話ながら、探索していき、スライムを見つけては倒していく。
 途中、複数いた時もあったが、ラスは、危なげなく倒していった。





 スライムだけとはいえ時折複数で見つけた場合もラス一人に戦闘を任せ、探索も先頭に立ってやって貰っていた為、俺から見たラスには、流石に少し疲れの色が見えてくる。
 そして丁度、通路の行き止まりの所でラスが、30匹目になるスライムを倒し素材を回収した所で、

「ラス。今日は、そろそろ戻ろうか?」

 と声をかける。

「え、セウンさん。私はまだやれます!!」

 だけど、ラスはまだまだやる気を見せる。
 その心意気はいいけど、流石に初めてのダンジョンで無理させる訳にもいかないし、たぶん今後の事について分かっていないようなので、

「ラス。やる気があるのはいいが、どうみても疲れているように見えるぞ。それに、ダンジョンでは、引き際を謝ると危険だし、この後、入り口まで戻る体力の事も考えないといけないぞ?」

 そう説明する。

「そうでした… すみません、セウンさん」

 俺の言っている事を理解してくれたようで、ラスは謝ってくる。

「いや、分かってくれればいいんだ。じゃあ、戻ろうか」

「はい、分かりまし… きゃ!!」

 こちらへ歩いて来ようとした瞬間、足元がふらついたのか、ラスが転んでしまう。

「大丈夫か?」

 駆け寄って、手を差しのべる。

「す… すみません。自分で思ってたよりも、疲れてたみたいです」

 ラスの手をとり、立ち上がらせ、転んだ時に怪我してないか確認する。
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