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第5章 難解な恋の図面
第25話
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「ふう、今日はいろんなことあったなぁ……」
私は世界が帰ってからすぐにシャワーを終えるとスウェットに着替えた。上品な紫色の上下のスウェットで、胸元に暴れすぎ将軍の印籠マークが入っている私のお気に入りだ。
「それにしても……相変わらず律儀なとこあるのね」
私は世界が洗ってかえった二枚のプレートと二つのグラスを眺めながら冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。さっきまで世界が居た部屋は世界が居なくなると、なぜだか広く感じてしまう。ふとテーブルの上に置いたままのスマホを確認するが、世界からのおやすみLINEは今日は届いていない。
(もう寝ちゃったわよね、私も早く寝ないと)
見ればリビングの時計は深夜一時を回っている。その時だった。
──ピンポーンピンポーン……。
「えっっ!……ちょっと誰よ……」
思わず身をかがめながら玄関先に耳を澄ませる。
──コンコン、梅子さん。
(え……?今の声……)
玄関先から扉をノックする音と間違いなく世界の声が聴こえてくる。
(噓でしょ、ちょっと……)
私は小さくため息を吐きだしてから玄関扉を開け、直ぐに世界を睨みつけた。
「もう何時だと……」
「どーも、こんばんは」
「は?ちょっと……」
「へぇ、また渋いスウェットすね。でもよくお似合いです」
世界が私の着ているスウェットの印籠マークを見ながら鼻で笑った。
「ちょっと……ほっといてよっ」
世界もシャワーを浴びたのだろう。サラサラの黒髪を夜風に靡かせながら、手にはスーツとワイシャツ、ビジネスバッグを抱えている。そして黒のスウェットの上下に足元はビジネスシューズを履いている。
「で?なんの用なのよ?そんな荷物かかえて……なんかチグハグな服装だし」
「泊まらせて」
「え?」
一瞬思考が止まる。
(いま何ていった……?)
「もっかい言うね、梅子さん家泊まりたい」
「ちょっと……なんでうちに泊まるのよっ。世界くん家隣じゃない、さっさと帰りなさいよっ」
「お邪魔しまーす」
「えっ、聞いてるの?!」
世界は私の言葉を気にも留めずに革靴を脱いで玄関に並べる。そして慣れた様子でリビングまで歩いていくとハンガーラックの前で足を止めた。
「ね、梅子さん明日着るスーツ此処にかけていい?」
「だから、待って。なんで泊まるのかってきいてるのっ」
世界はスーツとワイシャツをハンガーラックに掛けると、目の前で世界を睨み上げている私の首筋に顔を寄せてくる。
「な、にするの……」
思わずビクッと身体が跳ねて一歩後退する。
「梅子さんもシャワー浴びたんすね、めっちゃいい匂い……」
「そんなこと……聞いてないからっ」
「ねぇ、俺が来た理由そんな聞きたいすか?」
「そりゃそうでしょ!言いなさいよっ」
「そんなん一人じゃ寝らんないからに決まってんじゃん」
世界が当たり前のように涼しい顔で平然と答える。
「ばかっ、つい昨日まで一人で寝てたでしょうが!もう帰ってよ、す、すっぴんだし……きゃあっ」
世界が腰を抱くと直ぐに私の顎を持ち上げた。世界の綺麗な切れ長の瞳に私が小さく映っている。
「へぇ、ほんとだ。やっぱ幼く見えますね、すっぴんもツボかも」
「もう離してっ」
世界はするりと腰から掌を離すと私をぎゅっと腕の中に閉じ込めた。
「やだよ。泊まる。だって俺、梅子さんと離れたくないもん」
「なっ……」
真っ赤になったのは勿論私の方だ。
もうやめて欲しい。
世界の言葉も瞳もキスも全部が私をあまく溶かしていく罠だ。
(こんなの……全部……)
──世界くんの想うツボ。
「家帰ってシャワー浴びたらさー、もう梅子さんに会いたくなった。ねぇ梅子さんは?俺帰ってから寂しくなかった?」
「それは……」
寂しくなかったかといえば嘘になる。二人でいる何気ない時間はあっという間でいつだって楽しくて、心がほっとする。
世界が何でもストレートに言葉にするからだろうか。世界の前だといつもは言えないような恥ずかしい言葉も、いつのまにか口にしてしまう。
私は観念すると世界の胸元にこつんと額を寄せた。
「………ちょっとだけ……寂しかったかも」
「素直な梅子さんもめちゃくちゃツボですね、ベッドいこ」
世界はリビングの電気を消すと、私の手をひいて寝室の扉を開けた。
(やば、心臓出そうっていうか止まりかねねぇな)
俺は梅子をダブルベットにそっと座らせると、そのままトンと軽く押し倒した。どくんどくんと血液が心臓をすっ飛ばして身体中をめぐって熱い。ベッド脇のカーテンの隙間から、月の光だけが数本差し込んで梅子の頬を照らす。梅子は俺に組み伏せられたまま、抵抗することなく俺の瞳をみて直ぐに逸らした。
「……抵抗、しないんすね」
「……どうせ噛みつかれるから」
「よくわかってんじゃん」
俺はスウェットの上を脱ぐとぽいと放り投げた。すぐに梅子が俺の首元をじっと眺めた。
「なに?」
直ぐにあれかなと思ったが俺はあえて梅子に訊ねた。いままでも関係を持った女の何人かに指摘されたことがある。
「べ、別に……なんでもない」
「そんな色っぽいすか?俺のホクロ」
俺が鎖骨のホクロを人差し指で指させば梅子の目が大きくなる。
俺はぷっと笑った。
「女の人って結構、男の首元って見るんすね」
「見てないからっ」
「嘘つけ。ねぇ俺にも痕つけてよ」
「何言って……」
「さき梅子さんね」
俺は梅子のスウェットの中に片手を潜り込ませると直ぐにブラのホックを外した。
そっと膨らみにふれれば梅子が控えめに声を漏らす。俺は梅子のスウェットを肩までまくり上げると鎖骨に噛みついた。
「ンッ……」
梅子の痛みを堪える顔と白い素肌についた噛み痕に欲情してくる。
「……ねぇ俺にも早くつけてよ、梅子さんのシルシ」
梅子の唇に肩を寄せれば、梅子が細い掌でそっと俺の鎖骨をなぞった。その戸惑った顔と紅潮した頬にゾクッとする。
「はやく」
梅子の唇が俺の鎖骨に触れると同時にチクンと針を刺したように痛んだ。
「ふっ……おそろい」
俺はそういうと直ぐに梅子のスウェットのズボンに手を掛けて脱がすと足の間に指先を滑り込ませる。
「……世界っ……くん」
ゆっくり優しく丁寧になんて毛頭ない。
いまから俺はずっと忘れられなかった梅子を抱く。
あの日のことを思い出してくれるまで待とう思っていたが、理性なんてとっくにどこかへ行ってしまった。
「声我慢しないで」
ショーツの中で少し指先を動かすたびに梅子の体が何度も跳ねる。しっかり濡れていることを確認してからショーツを脱がすと俺は梅子の足を大きく広げた。そしてそっと中指を差し込む。
「ンッ……痛っ」
「ごめっ」
慌てて指先を抜き出して梅子をのぞき込んだ。梅子がすぐに困った顔をする。
「私こそ……そのごめん、初めてでもないのに……」
「大丈夫?……」
「うん……」
梅子のナカは指先一本でもかなり狭く感じた。そういえば梅子が長らくセックスはご無沙汰だと話していたことを思い出す。
「あの、痛かったら言って?少しずつ慣らしてくから」
梅子が小さく頷く。口ではそういいながらもう俺の限界はとっくに超えている。俺は梅子の足を大きく開くと中心に顔をうずめた。
「や……待ってっ、それダメッ」
梅子が俺の髪に触れると大きく首を振った。
「指痛いんだから、こっちのが痛くないでしょ」
舌先で甘い蜜を絡めて舐めとるように触れていく。梅子の甘い声がどんどん大きくなるのを確認してから舌を梅子のナカへと割り込ませていく。
「ダメッ……せか……ンンッ」
静かな寝室に水音と梅子のハチミツみたいな声が俺の脳みそを溶かしていく。親指でさらに刺激を加えてやれば梅子の腰が浮きあがった。
「おねが……やめ……」
「いいよ、気持ちよくなって」
「世界……く……」
「いつでもいいよ」
そう言ってより深いところへ舌先を潜り込ませた瞬間、梅子のシーツを握りしめる掌に力がこもり体が大きく跳ね上がった。
「はぁっ……は……」
俺は呼吸の荒くなった梅子をのぞき込むと唇を舌で一周して見せた。
「甘すぎ。全部ツボ」
「……せか……い」
俺の名前を呼びながら、大きく呼吸をしている梅子の身体から力が抜けるのが分かった。
「ん?梅子さん?」
梅子はとろんとした瞳をこちらに向けたのを最後にゆっくりと瞼を閉じる。
「え?おい、嘘だろ……マジで……?」
そして耳を澄ませばすぐに可愛い寝息が聞こえてきた。
「ねぇ、気持ちよすぎて寝てくれんのは嬉しいけど……このあと……残された俺はどうしたらいいんだよっ……」
俺は何度か深呼吸しながら下腹部の熱をどうにか落ち着かせようとするが、裸の梅子をみていると熱が一向におさまりそうもない。俺は脱がしたスウェットを梅子に着せなおすと肩まで毛布をかけた。
「手かかりますね。マジでどっちが年上かわかんねーじゃん」
──ブルッ
その時ズボンのポケットに入れっぱなしのスマホが震えた。
(なんだ?こんな夜中に)
俺はポケットからスマホを引きずり出すとメッセージを確認する。
──『世界、あの件パパに話したから』
「は?心奈のヤツ何勝手に……」
俺はとても返信する気にもなれずに目覚ましだけかけると、スマホをベッド下に放り投げた。隣の梅子はいつもより幼い顔ですやすやと眠っている。
「……もう待ても限界こえてんすけど」
自嘲気味に呟いてから自分もスウェットをかぶると隣に横向きに寝転ぶ。そっと抱きしめれば、梅子の甘い匂いと梅子の体温が伝染してきて一気に眠気がやってくる。
「……梅子さん……あったかいすね」
「……ん……世界……」
閉じかけた瞳を再度開ければ梅子の唇がわずかに動いている。
「……き……だよ」
「ん?梅子さん?……もっかい言って?」
「……世界くん……だい、すき……」
俺は掌で顔を覆うと仰向けにごろんと寝転びなおした。
「マジで反則……」
女にこんなに転がされたことなんて今まで一度もない。遊びの恋愛においてもいつも主導権を握るのは俺だった。梅子との本気の恋愛は俺自身、感じることも想うことも何もかも初めてだらけだ。
(結局……俺のが転がされてんだよな)
「梅子さんの想うツボじゃん……」
でも相手が俺の運命の女である梅子ならばそれも仕方ないのかもしれない。それにもしかしたらあの日、俺は梅子にまた会えるのが分かってて無意識にあの約束をしたのかもしれない。
「……てゆうか、これいつ収まんのっ!」
俺は十年前の思い出をさっとかき消すと、熱を帯び続けている下半身と戦いながら梅子の静かな呼吸にため息を重ねた。
私は世界が帰ってからすぐにシャワーを終えるとスウェットに着替えた。上品な紫色の上下のスウェットで、胸元に暴れすぎ将軍の印籠マークが入っている私のお気に入りだ。
「それにしても……相変わらず律儀なとこあるのね」
私は世界が洗ってかえった二枚のプレートと二つのグラスを眺めながら冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。さっきまで世界が居た部屋は世界が居なくなると、なぜだか広く感じてしまう。ふとテーブルの上に置いたままのスマホを確認するが、世界からのおやすみLINEは今日は届いていない。
(もう寝ちゃったわよね、私も早く寝ないと)
見ればリビングの時計は深夜一時を回っている。その時だった。
──ピンポーンピンポーン……。
「えっっ!……ちょっと誰よ……」
思わず身をかがめながら玄関先に耳を澄ませる。
──コンコン、梅子さん。
(え……?今の声……)
玄関先から扉をノックする音と間違いなく世界の声が聴こえてくる。
(噓でしょ、ちょっと……)
私は小さくため息を吐きだしてから玄関扉を開け、直ぐに世界を睨みつけた。
「もう何時だと……」
「どーも、こんばんは」
「は?ちょっと……」
「へぇ、また渋いスウェットすね。でもよくお似合いです」
世界が私の着ているスウェットの印籠マークを見ながら鼻で笑った。
「ちょっと……ほっといてよっ」
世界もシャワーを浴びたのだろう。サラサラの黒髪を夜風に靡かせながら、手にはスーツとワイシャツ、ビジネスバッグを抱えている。そして黒のスウェットの上下に足元はビジネスシューズを履いている。
「で?なんの用なのよ?そんな荷物かかえて……なんかチグハグな服装だし」
「泊まらせて」
「え?」
一瞬思考が止まる。
(いま何ていった……?)
「もっかい言うね、梅子さん家泊まりたい」
「ちょっと……なんでうちに泊まるのよっ。世界くん家隣じゃない、さっさと帰りなさいよっ」
「お邪魔しまーす」
「えっ、聞いてるの?!」
世界は私の言葉を気にも留めずに革靴を脱いで玄関に並べる。そして慣れた様子でリビングまで歩いていくとハンガーラックの前で足を止めた。
「ね、梅子さん明日着るスーツ此処にかけていい?」
「だから、待って。なんで泊まるのかってきいてるのっ」
世界はスーツとワイシャツをハンガーラックに掛けると、目の前で世界を睨み上げている私の首筋に顔を寄せてくる。
「な、にするの……」
思わずビクッと身体が跳ねて一歩後退する。
「梅子さんもシャワー浴びたんすね、めっちゃいい匂い……」
「そんなこと……聞いてないからっ」
「ねぇ、俺が来た理由そんな聞きたいすか?」
「そりゃそうでしょ!言いなさいよっ」
「そんなん一人じゃ寝らんないからに決まってんじゃん」
世界が当たり前のように涼しい顔で平然と答える。
「ばかっ、つい昨日まで一人で寝てたでしょうが!もう帰ってよ、す、すっぴんだし……きゃあっ」
世界が腰を抱くと直ぐに私の顎を持ち上げた。世界の綺麗な切れ長の瞳に私が小さく映っている。
「へぇ、ほんとだ。やっぱ幼く見えますね、すっぴんもツボかも」
「もう離してっ」
世界はするりと腰から掌を離すと私をぎゅっと腕の中に閉じ込めた。
「やだよ。泊まる。だって俺、梅子さんと離れたくないもん」
「なっ……」
真っ赤になったのは勿論私の方だ。
もうやめて欲しい。
世界の言葉も瞳もキスも全部が私をあまく溶かしていく罠だ。
(こんなの……全部……)
──世界くんの想うツボ。
「家帰ってシャワー浴びたらさー、もう梅子さんに会いたくなった。ねぇ梅子さんは?俺帰ってから寂しくなかった?」
「それは……」
寂しくなかったかといえば嘘になる。二人でいる何気ない時間はあっという間でいつだって楽しくて、心がほっとする。
世界が何でもストレートに言葉にするからだろうか。世界の前だといつもは言えないような恥ずかしい言葉も、いつのまにか口にしてしまう。
私は観念すると世界の胸元にこつんと額を寄せた。
「………ちょっとだけ……寂しかったかも」
「素直な梅子さんもめちゃくちゃツボですね、ベッドいこ」
世界はリビングの電気を消すと、私の手をひいて寝室の扉を開けた。
(やば、心臓出そうっていうか止まりかねねぇな)
俺は梅子をダブルベットにそっと座らせると、そのままトンと軽く押し倒した。どくんどくんと血液が心臓をすっ飛ばして身体中をめぐって熱い。ベッド脇のカーテンの隙間から、月の光だけが数本差し込んで梅子の頬を照らす。梅子は俺に組み伏せられたまま、抵抗することなく俺の瞳をみて直ぐに逸らした。
「……抵抗、しないんすね」
「……どうせ噛みつかれるから」
「よくわかってんじゃん」
俺はスウェットの上を脱ぐとぽいと放り投げた。すぐに梅子が俺の首元をじっと眺めた。
「なに?」
直ぐにあれかなと思ったが俺はあえて梅子に訊ねた。いままでも関係を持った女の何人かに指摘されたことがある。
「べ、別に……なんでもない」
「そんな色っぽいすか?俺のホクロ」
俺が鎖骨のホクロを人差し指で指させば梅子の目が大きくなる。
俺はぷっと笑った。
「女の人って結構、男の首元って見るんすね」
「見てないからっ」
「嘘つけ。ねぇ俺にも痕つけてよ」
「何言って……」
「さき梅子さんね」
俺は梅子のスウェットの中に片手を潜り込ませると直ぐにブラのホックを外した。
そっと膨らみにふれれば梅子が控えめに声を漏らす。俺は梅子のスウェットを肩までまくり上げると鎖骨に噛みついた。
「ンッ……」
梅子の痛みを堪える顔と白い素肌についた噛み痕に欲情してくる。
「……ねぇ俺にも早くつけてよ、梅子さんのシルシ」
梅子の唇に肩を寄せれば、梅子が細い掌でそっと俺の鎖骨をなぞった。その戸惑った顔と紅潮した頬にゾクッとする。
「はやく」
梅子の唇が俺の鎖骨に触れると同時にチクンと針を刺したように痛んだ。
「ふっ……おそろい」
俺はそういうと直ぐに梅子のスウェットのズボンに手を掛けて脱がすと足の間に指先を滑り込ませる。
「……世界っ……くん」
ゆっくり優しく丁寧になんて毛頭ない。
いまから俺はずっと忘れられなかった梅子を抱く。
あの日のことを思い出してくれるまで待とう思っていたが、理性なんてとっくにどこかへ行ってしまった。
「声我慢しないで」
ショーツの中で少し指先を動かすたびに梅子の体が何度も跳ねる。しっかり濡れていることを確認してからショーツを脱がすと俺は梅子の足を大きく広げた。そしてそっと中指を差し込む。
「ンッ……痛っ」
「ごめっ」
慌てて指先を抜き出して梅子をのぞき込んだ。梅子がすぐに困った顔をする。
「私こそ……そのごめん、初めてでもないのに……」
「大丈夫?……」
「うん……」
梅子のナカは指先一本でもかなり狭く感じた。そういえば梅子が長らくセックスはご無沙汰だと話していたことを思い出す。
「あの、痛かったら言って?少しずつ慣らしてくから」
梅子が小さく頷く。口ではそういいながらもう俺の限界はとっくに超えている。俺は梅子の足を大きく開くと中心に顔をうずめた。
「や……待ってっ、それダメッ」
梅子が俺の髪に触れると大きく首を振った。
「指痛いんだから、こっちのが痛くないでしょ」
舌先で甘い蜜を絡めて舐めとるように触れていく。梅子の甘い声がどんどん大きくなるのを確認してから舌を梅子のナカへと割り込ませていく。
「ダメッ……せか……ンンッ」
静かな寝室に水音と梅子のハチミツみたいな声が俺の脳みそを溶かしていく。親指でさらに刺激を加えてやれば梅子の腰が浮きあがった。
「おねが……やめ……」
「いいよ、気持ちよくなって」
「世界……く……」
「いつでもいいよ」
そう言ってより深いところへ舌先を潜り込ませた瞬間、梅子のシーツを握りしめる掌に力がこもり体が大きく跳ね上がった。
「はぁっ……は……」
俺は呼吸の荒くなった梅子をのぞき込むと唇を舌で一周して見せた。
「甘すぎ。全部ツボ」
「……せか……い」
俺の名前を呼びながら、大きく呼吸をしている梅子の身体から力が抜けるのが分かった。
「ん?梅子さん?」
梅子はとろんとした瞳をこちらに向けたのを最後にゆっくりと瞼を閉じる。
「え?おい、嘘だろ……マジで……?」
そして耳を澄ませばすぐに可愛い寝息が聞こえてきた。
「ねぇ、気持ちよすぎて寝てくれんのは嬉しいけど……このあと……残された俺はどうしたらいいんだよっ……」
俺は何度か深呼吸しながら下腹部の熱をどうにか落ち着かせようとするが、裸の梅子をみていると熱が一向におさまりそうもない。俺は脱がしたスウェットを梅子に着せなおすと肩まで毛布をかけた。
「手かかりますね。マジでどっちが年上かわかんねーじゃん」
──ブルッ
その時ズボンのポケットに入れっぱなしのスマホが震えた。
(なんだ?こんな夜中に)
俺はポケットからスマホを引きずり出すとメッセージを確認する。
──『世界、あの件パパに話したから』
「は?心奈のヤツ何勝手に……」
俺はとても返信する気にもなれずに目覚ましだけかけると、スマホをベッド下に放り投げた。隣の梅子はいつもより幼い顔ですやすやと眠っている。
「……もう待ても限界こえてんすけど」
自嘲気味に呟いてから自分もスウェットをかぶると隣に横向きに寝転ぶ。そっと抱きしめれば、梅子の甘い匂いと梅子の体温が伝染してきて一気に眠気がやってくる。
「……梅子さん……あったかいすね」
「……ん……世界……」
閉じかけた瞳を再度開ければ梅子の唇がわずかに動いている。
「……き……だよ」
「ん?梅子さん?……もっかい言って?」
「……世界くん……だい、すき……」
俺は掌で顔を覆うと仰向けにごろんと寝転びなおした。
「マジで反則……」
女にこんなに転がされたことなんて今まで一度もない。遊びの恋愛においてもいつも主導権を握るのは俺だった。梅子との本気の恋愛は俺自身、感じることも想うことも何もかも初めてだらけだ。
(結局……俺のが転がされてんだよな)
「梅子さんの想うツボじゃん……」
でも相手が俺の運命の女である梅子ならばそれも仕方ないのかもしれない。それにもしかしたらあの日、俺は梅子にまた会えるのが分かってて無意識にあの約束をしたのかもしれない。
「……てゆうか、これいつ収まんのっ!」
俺は十年前の思い出をさっとかき消すと、熱を帯び続けている下半身と戦いながら梅子の静かな呼吸にため息を重ねた。
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