幼馴染じゃなくなる日

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1.強面男子×無垢女子

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 佐保は締め付けが良すぎて、少し動いただけで暴発しそうだった。
 ──一時間ほど前、彼女が部屋に来て、
「今日、する?」
 と唐突に言った。
「え、マジで」
「今日、いいよ」
「する」
 しっかり彼女の身体をほぐして、侵入した。
 痛みを我慢しているようで、顔がゆがみ、ずっと泣いていた。
「ごめんな……」
「平気……」
「我慢できるか?」
「大丈夫。康ちゃんは……気持ちいい?」
「ああ、めちゃくちゃ気持ちいい」
 佐保を抱きしめ、腰を打ち付ける。
 涙を流しながらも、康輔の身体に手を回してきた。
 身体を密着させ、快楽を、幸福を感じている。
「よかった……」
「ごめんな、もうちょっとだけ我慢してくれ……」
「うん……」
 終始泣きっぱなしの佐保だったが、最後まで我慢してくれた。
「マジで気持ちよかった……」
「今までの人とどっちが気持ちよかった……?」
「そんなの、言わなくてもわかんだろ」
「…………」
「おまえが一番だよ。好きな女とするって、めちゃくちゃいい」
 親がいないからこんなことをしている、そんな罪悪感があった。まさか、親もよく知っている幼馴染の佐保と性行為をしているなんて思いもしないだろう。
「高校生なのに、こんなことしていいのかな」
「関係ねえよ……。って前は法律に抵触してたっぽいけどな」
 好きだからしたいんだよ、と康輔は言う。
「……うん」
「だからゴムは必須だ」
「……うん」
「ナマでしたい気もあるけど、それじゃ無責任だろ。好きだから大事にしたいしな」
「……そっか」
 力なく佐保は頷いた。
「いいか、セックスしたことは秘密だからな」
「そりゃそうだよ」
「付き合うってことはまあ……友達くらいなら言ってもいいだろうけど」
「いいの?」
「どうせバレるだろうし。でももうセックスしたことは内緒にしとくほうがいい」
「どうして?」
「親とか周囲に別れさせられるかもしれないしな」
「そんなことあるのかな?」
「俺の素行がよくねえし、佐保んちのおじさんおばさんにはよく思われてないだろうし」
 そんなことないと思うけどなあ、と佐保は首を傾げた。
「ま、何言われても、おまえと付き合うし、これからもヤるけどな」
「…………」

 佐保が出来ない日を除いて、康輔は佐保を求めた。彼女も拒むことはほぼなかった。週末は親も休みだから出来ない。だいたい平日、学校から帰ってきて、夕方までの間に抱き合った。
「やば、コンドームもうなくなりそう」
「今度、買ってこようか?」
「いや、俺が自分で買うからいいよ」
「……そっか」
「しょっちゅう佐保とヤるから、すぐなくなるな」
 へへへ、と康輔は笑う。
「じゃあ康ちゃん、ゴムなしでする?」
「しない」
「外に出すのは?」
「俺にそんなテクニックはない」
「そうなんだ」
「イクって思ったらそのまま出しちまうし、抜くなんて無理」
「そっかー……」
「なんだよ。ナマでしたいのか?」
「そういうわけじゃないよ。だって妊娠したら困るし、性病の危険もあるんでしょ? だからしなきゃいけいないってのはわかってるし」
「うん、ゴムは男の義務だからな」
 佐保の頭を撫でたあと、キスをした。
「どうなのかなって」
「まあ、結婚したあとなら、いくらでもナマで中出しできるし」
「け、結婚」
「なんだよ、しないのかよ」
「そんな先のことまで……」
「考えてるに決まってんだろ。おまえが、小さいころ俺のお嫁さんになる、って言ってたからな。叶えてやんなきゃなって」
「お、覚えてたの」
「覚えてるに決まってんだろ、だからずっとおまえが振り向くの待ってたのにさ」
 全然振り向いてくれねえ、と康輔は口を尖らせた。
「わ、わたしだって、康ちゃんが『じゃあ俺が嫁にもらうからな、約束だぞ』って言うから、ずっと誰も好きにならなかったのに!」
「言ったっけな」
「言ったよ! だから約束守ってたのに……。彼女作ってさ……」
 振り回された、と佐保は頬を膨らませた。
「悪かったよ。もうこれからはおまえだけだから、安心しろ」
「信じるからね」
「ああ、信じろ」
 佐保の頭をわしゃわしゃと撫でた。


 佐保がまた告白された。
 自分が近くにいるにも関わらず、だ。
「あの、北高一年の向井といいます。サッカー部です。連絡先の交換をしたいんですけど!」
「え……」
 爽やかイケメンだった。
 一年生ということは年下だ。どこで佐保と接点を持ったのだろう。佐保のことだ、また無意識に誰かを悩殺……もとい、親切を押し売りしたのに違いない。
「あ、えっと」
 すっ、と康輔が佐保に近づく。
「おい、何やってんだ」
「あ、うん」
 ちらりと爽やかイケメンを見たあと、
「そこの店行ってくる」
 と、駅前のドラッグストアを指さし、理解があるふうな男を装って言った。
「もうゴムないから買ってくるわ」
 爆弾を落とした。
「……うん、わかった」
 蹴散らそうと思ったが、言葉にはせず、態度と視線で圧力を掛けてやった。
「えっ、今の……」
「彼氏です」
「彼氏、いたんですね、すみません!」
「で、連絡先の交換でしたっけ」
「いえいえいえいえ、なんでもありません! 失礼します!」
 北高一年の向井という少年は慌てて去って行った。
(よし)
 人相が悪いのが役に立った。
「康ちゃん、お待たせ」
「おう、終わったか」
「うん」
「なんだった?」
「連絡先交換したいって。でもやっぱりいいって。なんだったんだろうね」
「なんだろうな」
「康ちゃん見て逃げてったのかも」
「……だろうな」
 電車内でも一緒に居たのに、康輔のことには気付かなかったのだろうか。
(そうか、佐保は本読んでたし、俺は寝てたからな)
 まあいっか、と康輔は佐保を見下ろした。
「今日、パンツ何色?」
「……さあ、何色でしょうね」
「まあいいか。どうせあとで確認するし」
「最低発言。小学生の頃のまんまだわ」
「ははは」
(佐保は俺のもんだ、誰にも手出しさせねえからな)
 学校が違う分、心配はたくさんあるが、佐保なら大丈夫だろう、そう思った。
(佐保は俺にベタ惚れだからな)
 俺もだけど、と康輔は隣の彼女を見下ろして笑った。

           fin
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