備前蝶の残照 ―宇喜多の盾と呼ばれた男―
言葉は裏切るが、槍先と死体は嘘をつかない 。
滅びゆく宇喜多に殉じた、一人の男の沈黙と咆哮の歴史叙事詩 。
泥を啜ってでも、この家を支える 」
謀将・宇喜多直家が暗殺と裏切りで築き上げた血と泥の家、備前宇喜多家 。その影には、不義の家を強靭な武力で支え続けた「盾」と呼ばれる男たちがいた。
榛名伊織。一丈二尺の漆黒の大身槍「不知火」を振るう彼は、無駄な言葉を嫌い、ただ任務の完遂と主家への恩義のみを重んじる生粋の戦国武士である 。
だが、時代は無骨な武士を置き去りにし、打算と数が支配する新たな世へと移り変わろうとしていた 。
偉大なる師・戸川秀安の死を皮切りに、宇喜多家の屋台骨を揺るがす御家騒動が勃発 。かつて弟同然に育んだ戸川達安が、家を存続させるため冷徹な合理主義へと傾倒し決別していく中 、伊織は一人、泥にまみれた宇喜多に残る道を選ぶ。
「殿は夢を見ておられる。ならば、俺はその夢が醒めるまで、槍を振り続けるだけだ 」
舞台は天下分け目の関ヶ原 。
西軍の先鋒として死地へ赴く伊織の前に、東軍の猛将・福島正則 、そして宿業の因縁を持つ孤高の暗殺者・三村影久が立ち塞がる 。
組織の変質、抗えぬ時代の濁流、そして高潔な情愛 。
時代に抗い、己の流儀を貫いた男の、不器用で熱い生き様を描く 。
砂を噛むような現実の中で、男たちが最後に見た「残照」とは―― 。
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