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無礼の代償
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結局、ヒーリーヌとゲレオルク様には厳罰が下されることになった。
当初私は、二人に罰を与える必要はないと訴えた。
彼らは、直前まで私が貴族の血を引いていないと思っていたのだ。私の出自を聞かされたところで、すぐに意識が変わらなかったとしても仕方がないのではないか、と。
私自身、帝国の皇女と言われてもいまだにしっくり来ていない。しょせん他人事の二人はなおさらそうではないかと思ったのだ。
しかし、フィンリー殿下ははっきりとそれに反対した。
「今回あなたへの無礼を許したとしましょう。そうすると、皇族に不敬を働いたにもかかわらず許されたという前例ができてしまうのです」
「そ、それはそうかもしれませんが……」
二人に与える罰について相談に来ていた、プルプレア王国の王太子殿下もフィンリー殿下に同意した。
「アイリス殿下はお優しい。きっとつらい決断だろう。だが、こちらとしても彼らを罰せねば、帝国に示しがつかないのだ」
じゃあ私のいないところで勝手に決めてくれればいいのに。
そう思わないと言ったら嘘になる。でも、一方でこれは私がケリをつけなければならないことだというのも理解していた。
「……わかりました。具体的には、どのような罰を与えるのですか?」
「まず、ゲレオルク卿は廃嫡の上、貴族の身分を剥奪される。ただ、幸い彼には弟がいるから、今後の問題行動がなければその補佐をしながら暮らしてもらうことになるだろう」
ヒーリーヌは伯爵家の一人娘だから、彼女と結婚するということは侯爵にはなれないということだ。それでも廃嫡とあれば外聞が悪いけれど。
しかし、貴族から除籍されるとなれば話は変わってくる。あくまでも侯爵家の出身であるという事実は消えないが、貴族としての恩恵は受けられない。
侯爵令息ともあれば、そう簡単に地位を剥奪されることはない。プルプレア王国側が、いかに今回の件を重く見ているのかがうかがえる処罰だった。
「それから、ヒーリーヌ嬢だが……。彼女には一切反省の色が見られない。平民への降格だけでは不十分と判断し、カーフェン修道院に送ることにした」
カーフェン修道院というと、規律が厳しいことで有名な修道院だ。そもそも修道院に入れば、一生結婚することはおろか、教会から出ることもままならない。
「つまり、二人の婚約は受理されないということですか?」
「そういうことになる。ゲレオルク卿はヒーリーヌ嬢との婚姻を望んだが、ヒーリーヌ嬢は貴族の地位を失った彼には興味がなかったようだしな」
結局、彼女はどこまでも見栄に駆られていたというわけか。
「で、では、バルヒェット伯爵家はどうなるのですか? ヒーリーヌが婿をとらないのであれば、継ぐ者もいないでしょう」
「バルヒェット家は私の代で終わりにする」
私の問いかけに答えたのは、横に控えていたお父様だった。
「そんな……」
「遠縁から養子をとって存続させても構わないと言ったのだがな。肝心の伯爵がこの調子だ」
諦めたように王太子殿下が肩をすくめた。
「いかなる理由があろうとも、長年にわたってアイリス殿下を冷遇し、あのように無礼を働いたのは事実ですので」
お父様の声には苦渋がにじんでいた。先祖から受け継いだバルヒェット伯爵家を潰してしまうのだ。その無念は計り知れないものがある。
「お父様……」
「そのように呼ぶことはなりません。あなた様のお父上はアーテル帝国の先帝陛下です」
突き放したその言い方に、なぜか言葉にできないほどの愛情を感じた。
「遠く離れた地におりますとも、アイリス殿下のお幸せを願っております。育ての親を名乗る資格もない愚か者ではございますが……」
そう言って深々と頭を下げるお父様……いや、バルヒェット伯爵の姿は、今までにないほど小さく見えた。
当初私は、二人に罰を与える必要はないと訴えた。
彼らは、直前まで私が貴族の血を引いていないと思っていたのだ。私の出自を聞かされたところで、すぐに意識が変わらなかったとしても仕方がないのではないか、と。
私自身、帝国の皇女と言われてもいまだにしっくり来ていない。しょせん他人事の二人はなおさらそうではないかと思ったのだ。
しかし、フィンリー殿下ははっきりとそれに反対した。
「今回あなたへの無礼を許したとしましょう。そうすると、皇族に不敬を働いたにもかかわらず許されたという前例ができてしまうのです」
「そ、それはそうかもしれませんが……」
二人に与える罰について相談に来ていた、プルプレア王国の王太子殿下もフィンリー殿下に同意した。
「アイリス殿下はお優しい。きっとつらい決断だろう。だが、こちらとしても彼らを罰せねば、帝国に示しがつかないのだ」
じゃあ私のいないところで勝手に決めてくれればいいのに。
そう思わないと言ったら嘘になる。でも、一方でこれは私がケリをつけなければならないことだというのも理解していた。
「……わかりました。具体的には、どのような罰を与えるのですか?」
「まず、ゲレオルク卿は廃嫡の上、貴族の身分を剥奪される。ただ、幸い彼には弟がいるから、今後の問題行動がなければその補佐をしながら暮らしてもらうことになるだろう」
ヒーリーヌは伯爵家の一人娘だから、彼女と結婚するということは侯爵にはなれないということだ。それでも廃嫡とあれば外聞が悪いけれど。
しかし、貴族から除籍されるとなれば話は変わってくる。あくまでも侯爵家の出身であるという事実は消えないが、貴族としての恩恵は受けられない。
侯爵令息ともあれば、そう簡単に地位を剥奪されることはない。プルプレア王国側が、いかに今回の件を重く見ているのかがうかがえる処罰だった。
「それから、ヒーリーヌ嬢だが……。彼女には一切反省の色が見られない。平民への降格だけでは不十分と判断し、カーフェン修道院に送ることにした」
カーフェン修道院というと、規律が厳しいことで有名な修道院だ。そもそも修道院に入れば、一生結婚することはおろか、教会から出ることもままならない。
「つまり、二人の婚約は受理されないということですか?」
「そういうことになる。ゲレオルク卿はヒーリーヌ嬢との婚姻を望んだが、ヒーリーヌ嬢は貴族の地位を失った彼には興味がなかったようだしな」
結局、彼女はどこまでも見栄に駆られていたというわけか。
「で、では、バルヒェット伯爵家はどうなるのですか? ヒーリーヌが婿をとらないのであれば、継ぐ者もいないでしょう」
「バルヒェット家は私の代で終わりにする」
私の問いかけに答えたのは、横に控えていたお父様だった。
「そんな……」
「遠縁から養子をとって存続させても構わないと言ったのだがな。肝心の伯爵がこの調子だ」
諦めたように王太子殿下が肩をすくめた。
「いかなる理由があろうとも、長年にわたってアイリス殿下を冷遇し、あのように無礼を働いたのは事実ですので」
お父様の声には苦渋がにじんでいた。先祖から受け継いだバルヒェット伯爵家を潰してしまうのだ。その無念は計り知れないものがある。
「お父様……」
「そのように呼ぶことはなりません。あなた様のお父上はアーテル帝国の先帝陛下です」
突き放したその言い方に、なぜか言葉にできないほどの愛情を感じた。
「遠く離れた地におりますとも、アイリス殿下のお幸せを願っております。育ての親を名乗る資格もない愚か者ではございますが……」
そう言って深々と頭を下げるお父様……いや、バルヒェット伯爵の姿は、今までにないほど小さく見えた。
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