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9.神酒の効果
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「男爵、食前酒をどうぞ」
「ありがとうございます。二日酔いを気にせずに酒を飲めるとは最高ですね」
「ええ、それでいて酔っているような感覚は普通に味わえるのですから神器というのは凄いものです」
俺の神器のひとつである神酒は、色々な味の酒が無限に出てくる神器だ。
そのレパートリーは世の酒の数だけある。
何も考えずに酒を注ぐと酒の種類はランダムになるのだが、飲みたい酒を思い浮かべるとその酒の味になって出てくるということが新たに分かった。
「甘いお酒ですか。とてもおいしいですね」
甘口のロゼワインなので女の人は好きな味だろう。
人妻メイドのリゼさんは頬を赤らめ色っぽい顔でワインを口に含む。
エロい。
俺はメイドのメス顔を眺めながら植木鉢に植わった神樹の実にも神酒を注いでやる。
神酒というものは本当に不思議なもので、アルコールが少しでも入っているものならば酒として出すことができるようなのだ。
筋肉執事のハワードさんはこの後就寝中の見張りの最初の当番なので、缶チューハイのぶどうジュース割りを飲んでいる。
アルコール度数3パーセントの缶チューハイとぶどうジュースを1対9で割ったものだ。
ほとんどジュース。
以前酒の飲めない友人がよく飲んでいたのを覚えている。
普通にぶどうジュース飲めばいいのに。
友人は無意味なことをしていたが、俺の場合は無駄ではない。
なにせ神酒はとても身体にいいのだ。
身体にいいものならば、飲んだほうがいいだろう。
植木鉢にやる水も、神酒を与えたほうがなんか凄く育ちそうな気がするので水に缶チューハイを1滴垂らしたものを与えている。
このくらい微量のアルコールならば、植物にも影響は無いはずだ。
男爵の領地まではまだ6日もかかるそうだが、それまでに芽くらいは出てくれるかな。
男爵の領地に到着した。
慣れない馬車の旅だったけれど、トラブルもなく目的地に着くことができた。
道があまり整備されていないので揺れがすごかったが、不思議と尻が痛くなったり酔ったりはしなかった。
これも神器の力なのだろうか。
初めての馬車で一週間以上の旅だ。
俺は尻の皮も厚くないし車にだって長時間乗れば酔うのに、今はなんともない。
むしろ身体中の力が漲っているような気さえするほどの絶好調だ。
もしかしたら神器の力というのは、俺が思っているよりもずっと凄いものなのかもしれない。
「しかし、あっという間に大きくなりましたな」
「ああ、これですか」
男爵が言っているのは神樹の実を植えた植木鉢のことだ。
芽が出てからは早かった。
神酒を与えているせいなのか、あっという間に成長して今では立派な木になりつつある。
頭を切ったわけでもないのに、盆栽のように背が低いまま幹だけ太くなっている。
すでに幹の太さは直径3センチほどにまで大きくなり、枝葉は茂り小さな花のつぼみが4つ付いている。
こんなに早く成長するのなら、家庭菜園がさらに楽しくなる。
今度神酒で野菜でも育ててみようかな。
「花が咲くということは、実が生るんですかね」
「そうですね。元が木の実の神器なので、もしかしたら初級魔法が使えるようになる実が4つに増えるのかもしれませんね」
「それは素晴らしいですね。もしそうならいくつか売って頂くことは可能ですか?」
「ええ、私が4つも持っていても意味がありませんから」
「ありがとうございます」
俺は全ての初級魔法の使えるようになる木の実を軽視しているのかもしれない。
気軽に男爵に売るなんて安請け合いをしてしまうほどに。
でも他2つがちょっと俺的に気に入りすぎちゃっているので、しょうがないよね。
それだけ2つの神器が酒飲みのヘビースモーカーにとっては夢のような神器なのだ。
俺は上機嫌で神酒を樽に詰める。
今日は男爵が俺を連れて領地に帰った記念のちょっとした祝典なのだ。
気恥ずかしいけれど、祝われて悪い気持ちにはならない。
領地の皆さんと仲良くなるにはいい機会だ。
神酒を大盤振る舞いするとしよう。
今まで飲んだことのあるワインの中で一番美味しかった赤ワインを大樽いっぱいに詰めてあげよう。
男爵の領地は小さいのでこういった祝典には町の有力者だけではなく、一般の領民も参加する。
さすがに全員に行き渡る量樽に詰めるには時間が足りないが、これだけの樽に詰めておけばかなりの人数が飲むことができるだろう。
身体にいい酒をたくさん飲んでほしい。
「しかしこんなに、いいのですか?」
「ええ、構いませんよ。どうせ無限に出てくるのです。みんなで飲まないと損ですよ」
「シゲノブ殿がそうおっしゃるのであれば、遠慮なく振舞わせていただきます。きっと領民たちも喜びますよ。どうやら神酒というのは美味しい上にかなり身体に影響があるようですからね。私も帰ったら使用人たちに若返ったようだと言われましたからね。リザもハワードも身体の不調がことごとく治ったと言っていましたし」
「そうですか。私はいまいち実感が湧かないのですが、確かに男爵のお顔は初めてお会いしたときよりもかなりお若くなっているように見えます」
男爵の顔からは深く刻まれていたシワが消え、弛んでいた頬が引き締まって見える。
少し脂ぎっていた肌は透明感を増し、毛穴が小さくなっている気がする。
驚きのアンチエイジング効果だ。
やっぱり神酒は肉体に良い変化をもたらすようだな。
説明文にはとても身体にいいとだけ書かれていたので俺は青汁みたいな効果かと思っていた。
しかしそれは大間違いだったようだ。
まるで仙人が作った霊薬のような効果がこの神器には込められていたのだ。
身体の不調を改善し、細胞を若返らせる。
きっと俺の顔もシワやシミが改善しているに違いない。
心なしかお肌がタマゴ肌な気はしていたんだ。
この世界ではガラスが高級で綺麗に映る鏡なんて貧乏な男爵家には存在していないけれど、一度自分の顔が見てみたいな。
くたびれたおっさんの顔が少しは若々しくなっていることを祈る。
「ありがとうございます。二日酔いを気にせずに酒を飲めるとは最高ですね」
「ええ、それでいて酔っているような感覚は普通に味わえるのですから神器というのは凄いものです」
俺の神器のひとつである神酒は、色々な味の酒が無限に出てくる神器だ。
そのレパートリーは世の酒の数だけある。
何も考えずに酒を注ぐと酒の種類はランダムになるのだが、飲みたい酒を思い浮かべるとその酒の味になって出てくるということが新たに分かった。
「甘いお酒ですか。とてもおいしいですね」
甘口のロゼワインなので女の人は好きな味だろう。
人妻メイドのリゼさんは頬を赤らめ色っぽい顔でワインを口に含む。
エロい。
俺はメイドのメス顔を眺めながら植木鉢に植わった神樹の実にも神酒を注いでやる。
神酒というものは本当に不思議なもので、アルコールが少しでも入っているものならば酒として出すことができるようなのだ。
筋肉執事のハワードさんはこの後就寝中の見張りの最初の当番なので、缶チューハイのぶどうジュース割りを飲んでいる。
アルコール度数3パーセントの缶チューハイとぶどうジュースを1対9で割ったものだ。
ほとんどジュース。
以前酒の飲めない友人がよく飲んでいたのを覚えている。
普通にぶどうジュース飲めばいいのに。
友人は無意味なことをしていたが、俺の場合は無駄ではない。
なにせ神酒はとても身体にいいのだ。
身体にいいものならば、飲んだほうがいいだろう。
植木鉢にやる水も、神酒を与えたほうがなんか凄く育ちそうな気がするので水に缶チューハイを1滴垂らしたものを与えている。
このくらい微量のアルコールならば、植物にも影響は無いはずだ。
男爵の領地まではまだ6日もかかるそうだが、それまでに芽くらいは出てくれるかな。
男爵の領地に到着した。
慣れない馬車の旅だったけれど、トラブルもなく目的地に着くことができた。
道があまり整備されていないので揺れがすごかったが、不思議と尻が痛くなったり酔ったりはしなかった。
これも神器の力なのだろうか。
初めての馬車で一週間以上の旅だ。
俺は尻の皮も厚くないし車にだって長時間乗れば酔うのに、今はなんともない。
むしろ身体中の力が漲っているような気さえするほどの絶好調だ。
もしかしたら神器の力というのは、俺が思っているよりもずっと凄いものなのかもしれない。
「しかし、あっという間に大きくなりましたな」
「ああ、これですか」
男爵が言っているのは神樹の実を植えた植木鉢のことだ。
芽が出てからは早かった。
神酒を与えているせいなのか、あっという間に成長して今では立派な木になりつつある。
頭を切ったわけでもないのに、盆栽のように背が低いまま幹だけ太くなっている。
すでに幹の太さは直径3センチほどにまで大きくなり、枝葉は茂り小さな花のつぼみが4つ付いている。
こんなに早く成長するのなら、家庭菜園がさらに楽しくなる。
今度神酒で野菜でも育ててみようかな。
「花が咲くということは、実が生るんですかね」
「そうですね。元が木の実の神器なので、もしかしたら初級魔法が使えるようになる実が4つに増えるのかもしれませんね」
「それは素晴らしいですね。もしそうならいくつか売って頂くことは可能ですか?」
「ええ、私が4つも持っていても意味がありませんから」
「ありがとうございます」
俺は全ての初級魔法の使えるようになる木の実を軽視しているのかもしれない。
気軽に男爵に売るなんて安請け合いをしてしまうほどに。
でも他2つがちょっと俺的に気に入りすぎちゃっているので、しょうがないよね。
それだけ2つの神器が酒飲みのヘビースモーカーにとっては夢のような神器なのだ。
俺は上機嫌で神酒を樽に詰める。
今日は男爵が俺を連れて領地に帰った記念のちょっとした祝典なのだ。
気恥ずかしいけれど、祝われて悪い気持ちにはならない。
領地の皆さんと仲良くなるにはいい機会だ。
神酒を大盤振る舞いするとしよう。
今まで飲んだことのあるワインの中で一番美味しかった赤ワインを大樽いっぱいに詰めてあげよう。
男爵の領地は小さいのでこういった祝典には町の有力者だけではなく、一般の領民も参加する。
さすがに全員に行き渡る量樽に詰めるには時間が足りないが、これだけの樽に詰めておけばかなりの人数が飲むことができるだろう。
身体にいい酒をたくさん飲んでほしい。
「しかしこんなに、いいのですか?」
「ええ、構いませんよ。どうせ無限に出てくるのです。みんなで飲まないと損ですよ」
「シゲノブ殿がそうおっしゃるのであれば、遠慮なく振舞わせていただきます。きっと領民たちも喜びますよ。どうやら神酒というのは美味しい上にかなり身体に影響があるようですからね。私も帰ったら使用人たちに若返ったようだと言われましたからね。リザもハワードも身体の不調がことごとく治ったと言っていましたし」
「そうですか。私はいまいち実感が湧かないのですが、確かに男爵のお顔は初めてお会いしたときよりもかなりお若くなっているように見えます」
男爵の顔からは深く刻まれていたシワが消え、弛んでいた頬が引き締まって見える。
少し脂ぎっていた肌は透明感を増し、毛穴が小さくなっている気がする。
驚きのアンチエイジング効果だ。
やっぱり神酒は肉体に良い変化をもたらすようだな。
説明文にはとても身体にいいとだけ書かれていたので俺は青汁みたいな効果かと思っていた。
しかしそれは大間違いだったようだ。
まるで仙人が作った霊薬のような効果がこの神器には込められていたのだ。
身体の不調を改善し、細胞を若返らせる。
きっと俺の顔もシワやシミが改善しているに違いない。
心なしかお肌がタマゴ肌な気はしていたんだ。
この世界ではガラスが高級で綺麗に映る鏡なんて貧乏な男爵家には存在していないけれど、一度自分の顔が見てみたいな。
くたびれたおっさんの顔が少しは若々しくなっていることを祈る。
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