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おっさんずイフ
26.攻撃手段
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「じゃあやってみなさい」
オネエとの修業も今日で12日。
神酒のおかげで短いスパンで破壊と再生を繰り返すおっさんの成長は早い。
すでに身体はおっさん特有のだるんとしたものではなく、筋肉が浮き上がった筋トレ玄人のものになってきている。
それに伴い素の身体能力も上がり、今では足場の悪い砂浜を1時間以上もの間全力ダッシュできるほどになった。
心肺機能もかなり鍛えられているようだ。
午後の魔力のコントロール修業は初級編、中級編を卒業し、上級編へと突入した。
常に身体全体に魔力を纏い、それを瞬時に一部分に集束するという上級編は強化人間たるおっさんの魔力コントロール能力をもってしてもなかなかうまくはいかない。
「全体、両腕、全体、右腕、左足、全体、遅い!!もっとよ。もっと考えるよりも先に魔力を動かすの!!何かが飛んできたときに咄嗟に目を閉じたり手を出して頭を守ろうとするでしょ!!それを魔力でもできるようになるのよ!!」
「はい!!」
「次、投石訓練いくわよ。いつもどおりあたしが石を投げるから、魔力だけで防ぐのよ」
この訓練はかなりの危険を伴う。
なにせあの巨体から放たれる投石だ。
魔力を使って強化までされれば石は音を置き去りにして飛んでくる。
音速を超えた石が生み出す衝撃波までも魔力で防がなければ大怪我をしてしまう。
実際に魔力の移動が間に合わず大怪我を負ったことも一度や二度ではない。
だが、俺にはどんな怪我も一瞬で治してくれるチート神器がある。
グウェンは俺が一時的とはいえ酷い怪我を負う危険があるこの訓練を嫌がったが、どうしてもと俺が頼んだのだ。
俺は追い込まれなければなかなかできない人間だ。
グウェンの指導は当初の言葉通り優しすぎる。
だが俺のように自分に甘い人間は、どうしても優しい指導では上達することができないのだ。
少し命の危険を感じるくらいのほうが上達は早い。
それになんか少年漫画の修業編みたいでかっこいい。
俺は目を見開いて集中し、次々飛んでくる石の弾丸を見極め身体の魔力を高速で移動させていった。
「対人戦はともかく、魔物相手の近接戦だったらシゲちゃんの実力はもうあたしと遜色ないレベルね。もう時間もないことだし、そろそろ対ガルーダ戦の作戦を立てていくべきかもしれないわね」
「ガルーダっていうのはどんな魔物なのか俺は全く知らないんだけど」
「基本空を飛んでいて下りてこないわ。飛行速度もあの巨体からは信じられないほどに速いのよ。だからこちらの遠距離攻撃は基本的に避けられるわね。それでいてあちらからは遠距離攻撃が雨あられのごとく飛んでくるわ。だから厄介なのよね」
高速で飛ぶ戦闘機と戦っているようなものなのかもしれない。
同じように空を飛んで同じ高さで追いかけっこしながら戦うか、地上に引きずりおろして近接で倒すしかないということか。
遠距離攻撃をすべて避けられてしまってはグウェンの神龍の牙剣による攻撃も意味をなさないし、近づけなければ幽鬼の巨剣でも切ることができない。
俺の役割はなんとかグウェンの攻撃をガルーダに当たるようにすることだな。
「でも俺にはそれほど攻撃手段がないんだよね」
「そこよね。シゲちゃんは手数が少ないのよね。神樹の実を食べて魔法を身に付けていけばこれからどんどん改善していくと思うんだけど、今のところは攻撃手段が乏しい」
「うーん、光学迷彩で近づいて丈夫なロープかなにかで……」
「ガルーダは人の気配に敏感よ。たぶん姿が見えない程度の隠形では見破られてしまうわね」
「「うーん……」」
俺の神器は3つとも破格の性能を持ってはいるけれど、戦闘に直接関係があるのは神巻きタバコだけだから攻撃手段が少ないんだよね。
武器になるようなものも中型魔物用の大型銛くらいしか持ってないし。
「ただいまー」
「「まー」」
おっさんとオネエが顔を突き合わせて悩んでいると、子供たちが帰ってきた。
メイちゃんとマルスとマルクルは俺たちが町外れで修業をしている数日間に何もしていなかったわけではなかったようで、3人で冒険者としての戦い方の練習などをしていたようだ。
その甲斐もあって3人の息はなかなかに合っており、3人で協力すればちんぴら冒険者くらいになら勝つことができるというお墨付きをグウェンからもらっていた。
ちんぴらといえどこの島に集められた冒険者は最低でも一人で討伐難易度Cくらいの魔物を倒せるくらいの強さを持っている。
この3人は協力すれば難易度Cの魔物を倒せるような強さを手に入れたということなのだ。
子供の成長は早いとはいえ、さすがに早すぎる。
マルスとマルクルは獣人なので身体能力が高いということもあるのだろうが、もしかしたら7歳の頃からずっとグウェンに師事していたというメイちゃんは普通の子供の範疇に入るような存在ではないのかもしれない。
それでも一人きりでは不意をうたれることもあっただろうけれど、今はマルスとマルクルがいる。
だからなのか、グウェンは3人一緒ならば家の外をうろついてもいいという許可を出した。
今日もおそらくそのへんをうろついて遊んできたのだろう。
「なあおっさん!俺たちすっげえもの見つけた!」
「すごいもの?」
「たぶん僕たちが初めて見つけたんじゃないかな」
「うん、あそこは絶対普通の人は入れないと思う」
「あんたたち何を見つけたのよ。もったいぶらないで教えなさいよ」
子供たちは顔を見合わせてにっこり笑う。
「「「ダンジョン」」」
「なんですって!!」
びっくりしたグウェンの顔にびっくりした。
ちょっと漏れたかも。
オネエとの修業も今日で12日。
神酒のおかげで短いスパンで破壊と再生を繰り返すおっさんの成長は早い。
すでに身体はおっさん特有のだるんとしたものではなく、筋肉が浮き上がった筋トレ玄人のものになってきている。
それに伴い素の身体能力も上がり、今では足場の悪い砂浜を1時間以上もの間全力ダッシュできるほどになった。
心肺機能もかなり鍛えられているようだ。
午後の魔力のコントロール修業は初級編、中級編を卒業し、上級編へと突入した。
常に身体全体に魔力を纏い、それを瞬時に一部分に集束するという上級編は強化人間たるおっさんの魔力コントロール能力をもってしてもなかなかうまくはいかない。
「全体、両腕、全体、右腕、左足、全体、遅い!!もっとよ。もっと考えるよりも先に魔力を動かすの!!何かが飛んできたときに咄嗟に目を閉じたり手を出して頭を守ろうとするでしょ!!それを魔力でもできるようになるのよ!!」
「はい!!」
「次、投石訓練いくわよ。いつもどおりあたしが石を投げるから、魔力だけで防ぐのよ」
この訓練はかなりの危険を伴う。
なにせあの巨体から放たれる投石だ。
魔力を使って強化までされれば石は音を置き去りにして飛んでくる。
音速を超えた石が生み出す衝撃波までも魔力で防がなければ大怪我をしてしまう。
実際に魔力の移動が間に合わず大怪我を負ったことも一度や二度ではない。
だが、俺にはどんな怪我も一瞬で治してくれるチート神器がある。
グウェンは俺が一時的とはいえ酷い怪我を負う危険があるこの訓練を嫌がったが、どうしてもと俺が頼んだのだ。
俺は追い込まれなければなかなかできない人間だ。
グウェンの指導は当初の言葉通り優しすぎる。
だが俺のように自分に甘い人間は、どうしても優しい指導では上達することができないのだ。
少し命の危険を感じるくらいのほうが上達は早い。
それになんか少年漫画の修業編みたいでかっこいい。
俺は目を見開いて集中し、次々飛んでくる石の弾丸を見極め身体の魔力を高速で移動させていった。
「対人戦はともかく、魔物相手の近接戦だったらシゲちゃんの実力はもうあたしと遜色ないレベルね。もう時間もないことだし、そろそろ対ガルーダ戦の作戦を立てていくべきかもしれないわね」
「ガルーダっていうのはどんな魔物なのか俺は全く知らないんだけど」
「基本空を飛んでいて下りてこないわ。飛行速度もあの巨体からは信じられないほどに速いのよ。だからこちらの遠距離攻撃は基本的に避けられるわね。それでいてあちらからは遠距離攻撃が雨あられのごとく飛んでくるわ。だから厄介なのよね」
高速で飛ぶ戦闘機と戦っているようなものなのかもしれない。
同じように空を飛んで同じ高さで追いかけっこしながら戦うか、地上に引きずりおろして近接で倒すしかないということか。
遠距離攻撃をすべて避けられてしまってはグウェンの神龍の牙剣による攻撃も意味をなさないし、近づけなければ幽鬼の巨剣でも切ることができない。
俺の役割はなんとかグウェンの攻撃をガルーダに当たるようにすることだな。
「でも俺にはそれほど攻撃手段がないんだよね」
「そこよね。シゲちゃんは手数が少ないのよね。神樹の実を食べて魔法を身に付けていけばこれからどんどん改善していくと思うんだけど、今のところは攻撃手段が乏しい」
「うーん、光学迷彩で近づいて丈夫なロープかなにかで……」
「ガルーダは人の気配に敏感よ。たぶん姿が見えない程度の隠形では見破られてしまうわね」
「「うーん……」」
俺の神器は3つとも破格の性能を持ってはいるけれど、戦闘に直接関係があるのは神巻きタバコだけだから攻撃手段が少ないんだよね。
武器になるようなものも中型魔物用の大型銛くらいしか持ってないし。
「ただいまー」
「「まー」」
おっさんとオネエが顔を突き合わせて悩んでいると、子供たちが帰ってきた。
メイちゃんとマルスとマルクルは俺たちが町外れで修業をしている数日間に何もしていなかったわけではなかったようで、3人で冒険者としての戦い方の練習などをしていたようだ。
その甲斐もあって3人の息はなかなかに合っており、3人で協力すればちんぴら冒険者くらいになら勝つことができるというお墨付きをグウェンからもらっていた。
ちんぴらといえどこの島に集められた冒険者は最低でも一人で討伐難易度Cくらいの魔物を倒せるくらいの強さを持っている。
この3人は協力すれば難易度Cの魔物を倒せるような強さを手に入れたということなのだ。
子供の成長は早いとはいえ、さすがに早すぎる。
マルスとマルクルは獣人なので身体能力が高いということもあるのだろうが、もしかしたら7歳の頃からずっとグウェンに師事していたというメイちゃんは普通の子供の範疇に入るような存在ではないのかもしれない。
それでも一人きりでは不意をうたれることもあっただろうけれど、今はマルスとマルクルがいる。
だからなのか、グウェンは3人一緒ならば家の外をうろついてもいいという許可を出した。
今日もおそらくそのへんをうろついて遊んできたのだろう。
「なあおっさん!俺たちすっげえもの見つけた!」
「すごいもの?」
「たぶん僕たちが初めて見つけたんじゃないかな」
「うん、あそこは絶対普通の人は入れないと思う」
「あんたたち何を見つけたのよ。もったいぶらないで教えなさいよ」
子供たちは顔を見合わせてにっこり笑う。
「「「ダンジョン」」」
「なんですって!!」
びっくりしたグウェンの顔にびっくりした。
ちょっと漏れたかも。
応援ありがとうございます!
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