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金の心配はするな

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 サラと脱衣所を出たところで、ルーチェと出くわした。出くわしたというよりは、俺達が風呂を上がるのを待っていたのだろう。

「さっきギルドの人が訪ねてきてね。さっきの件で、ちゃんと報告に来いだって。ロートス君、一体なにやったの?」

 ルーチェは苦笑気味に言う。

 おおまじか。まさか家に来るとは思っていなかった。
 ギルドへの報告はセレンに任せていたが、やはりドラゴンの件では俺がいないと話にならないのだろう。

「ギルドの人間は、もう帰ったのか?」

「お風呂で従者とお楽しみ中って伝えたらすぐに帰っていったよ」

 サラの顔が赤くなった。風呂上がりで上気した頬が、さらに赤くなるなんて。相当だ。

「間違っちゃいないが、誤解を招く表現だな……。噂になると目立つから、そういうのはやめろよな」

「はーい」

 悪戯っぽく笑うルーチェ。ほんとに分かってんのか。

「それで、今から行くの? ギルド」

「明日でいいだろ。他に行くところもある」

「そう? 報告にこないと報奨金も出せないって言ってたけど」

「報奨金だ?」

 俺はサラと顔を合わせる。
 ナハトモスクの採集には失敗している。報酬の二万エーンはもらえないはずだが。

「あ、ドラゴンの討伐褒賞ですよ。特別危険種に指定されているモンスターを駆除すると、報奨金が出るんです」

 サラの言葉には、ルーチェが驚いていた。

「え、ロートスくんドラゴン倒したの? すごーい!」

「ただの成り行きだ」

 しかし、報奨金が出るのは素直にありがたい。明日から草でも食って生きていく羽目になるところだった。

 だが、やはりそれよりも気になることがあった。

「明日の朝イチでいく。先に行っときたいとこがあるんだ」

 言うまでもなく、アデライト先生のところである。事の詳細を聞きたいし、助けてくれたお礼も言っておかないと。

「それとも、ギルドに行っておいた方がいいか? 面倒なことになるか?」

「や、いいんじゃないかな? ギルドはギルドでいい加減なところもあるし……お役所仕事っていうか。だから、明日の朝でも大丈夫かな」

「そいつはよかった」

 ルーチェがそう言うのなら、それを信じよう。なんたって褐色黒髪ショートの美少女メイド長なのだ。

「じゃあ出かけてくる。ルーチェ、サラ、留守を頼むぞ」

「はい。お任せくださいっ」

「気をつけてね」

 俺は二人を背に、屋敷を後にする。

 夜も遅くなってきたが、やはり気になるものは気になる。俺にとっちゃ、ギルドへの報告より優先すべきことだ。ギルドへの報告を円滑にし、極力目立たないように振る舞う為にも、事情は把握しておいた方がいい。

 俺はアデライト先生に会うべく、ホテル・コーキューへと向かったのだった。
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