声を聞かせて

はるきりょう

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22 ノックの音

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 約束どおりサーシャは、ユリウスとともにいた。特段の予定がない限りはハリオも一緒にいることも多く、側近であるハリオも認めた「恋仲」だという噂が宮中に広まった。
 黒髪が美しいサーシャと端正な顔立ちのユリウス。寄り添い笑い合うその姿は絵になった。2人の関係は若い男女の多くいる宮中の中で、いつしか羨望の的になる。ある日を境に近くなった2人の距離に、夜をともにしているという下世話な噂まで流れていた。
 けれど、サーシャは臆することなく、毅然とした態度を貫く。笑みを浮かべてメイドの仕事もこなした。ユリウスの部屋の掃除をし、ベッドシーツを変え、食事を運ぶ。
 もちろん、1人になることがなかった訳ではない。けれど、そんな時は、いつもオースが傍にいた。そして懐には、ユリウスにもらった短剣。女性でも扱えるように軽いそれは、威力はないが、スピードは保証される。相手の動きを一瞬止めるための切り札だった。稽古は、ユリウスやハリオの時間があるときに、秘密裏に行われた。
 護身術に剣術。多少なりとも自分の身を守る術を身に付けたからだろうか、サーシャは以前より、自身の心が強くなっていると感じていた。
 
 日々は順調に流れていた。それは、あの夜から、しばらくたった時の事。
 トントン。隠し戸が2回ノックされた。サーシャは刺繍をしていた手を止めて、部屋にいたオースを見る。オースはサーシャに頷いた。
 隠し戸のノックには意味があった。1回のノックは、部屋にいるから何かあったら呼べ、のサイン。2回のノックは、こちらへ来い、のサインだ。それは、いつの間にかできた合図。
 サーシャは隠し戸を開け、ユリウスの部屋に入った。待っていたようにユリウスがこちらを見る。視線だけでソファーに座るよう伝えた。ソファーの前ではハリオが立って待っていた。サーシャは急いでソファーに座る。
「賊の身元が分かった」
 ユリウスがそう告げた。突然の言葉に思わず、緊張が走る。
「何者ですか?」
「名は、トモア。国軍に属する兵士だ」
「兵士」
「ああ。けれど、入って間もない。見習いから毛が生えた程度だ。身寄りはなく、出身は孤児院となっている」
「ユリウス王子」
 ハリオが眉をひそめて名前を呼ぶ。その声は鋭かった。ユリウスが頷いて見せる。
「わかっている。最近は入ったばかりにしては、腕が立ちすぎだ」
「ええ。王子の剣の腕は、軍の中でもトップクラス。それを止め、さらに2階を行き来できるほどの身体能力。軍で鍛えられたのではなく、それ以前に鍛えられていたと考えるのが妥当かと」
「ああ。おそらく、裏がある。だが、それ以上は追えなかった」
「え?」
 予想外の言葉に、サーシャの口から思わず声が出た。言葉を続けるユリウスの表情が険しくなる。
「最近、懸想していた女がいたと仲が良かった兵士が言っていたそうだ。だが、得られたのはそのくらいだ」
「そうですか。…その女とは?」
「さあ、誰かまでは知らないそうだ。あまり自分のことは語らなかったらしい。…もう、あの賊から新しい情報を得るのは難しそうだ」
「そう、なんですね」
「残念だがな」
「…あの、ユリウス王子」
 ハリオがどこか伺うようにユリウスの名を呼んだ。
「なんだ、ハリオ。言いたいことがあれば言え」
 ユリウスの言葉に、ハリオは一瞬迷い、けれど素直に口を開いた。
「もう、止めませんか?」
「…何が言いたい?」
「サーシャ様、ここずっと、眠りが浅いのではなりませんか?」
「…え?」
 突然、自分に振られた話にサーシャはとっさに応えることができなかった。まっすぐ見てくるハリオの表情には心配が浮かんでいる。
 そう言えば、夜中に起きることが多くなった気がするな、とどこか他人事のように思う。鏡を見るたび、隈も目立つようになってきた。
「顔色もよくありません」
「…そうかも、しれません」
「ハリオ、遠回しに言うのはやめろ。何が言いたい?」
「…ユリウス王子、サーシャ様をいつまでここに置いておくつもりですか?」
「兄上の即位が決定するまでだ」
「そうなるには、まだまだ時間がかかるはずです。…これ以上、サーシャ様を危険にさらすおつもりですか?」
 ハリオにしては強い口調だった。日に日に悪くなっていくサーシャの顔色と黒幕へと導く情報がなくなったことへの焦燥がそうさせるのだろう。サーシャをこの場に連れてきた負い目を感じているのかもしれない。
 ハリオはユリウスの右腕のような存在だ。しかし、対等ではない。だからこそ、ハリオの口調にサーシャはどうすればいいのかわからなかった。
「王子の想い人と思われているからサーシャ様は狙われている。それならば、家に帰して差し上げた方がいいのではないですか?」
「一理ある。だが、可能性の内1つだ。動物の声が聞こえるから襲われた可能性もゼロではない」
「けれど、それもユリウス王子の力の強化になると思われているからですよね?ユリウス王子から離れれば、サーシャ様は襲われない」
「もし、こいつの能力を悪用しようとする者がいたらどうする?家に帰せば、こいつは無防備だ」
 感情的なハリオの前で、どこまでも冷静にユリウスはそう言った。
「サーシャ様は今までもアーノルド公の紹介でその力を発揮していました。それでも襲われるなんてことはなかった。ここに来てからです。こんな風に命の危険にさらされているのは」
 確かにそうだ。けれど、それはダリムが細心の注意を払ってくれていたから。本当に信頼できる人だけを集め、サーシャに会う人も可能な限り制限していた。そして、彼らは心からサーシャに感謝していた。だからこそ、危険はなったのだ。
 そう伝えたかった。けれど、それでも反論されるだろうとサーシャは口を開くのを止める。どんな風に答えるのだろうとサーシャはユリウスを見た。ユリウスが腕を組み、一つ頷く。
「確かにそうかもしれないな」
 その口調はハリオに同調しているようにも聞こえた。サーシャは首を横に振る。ここを離れたくはなかった。
 大切にされている。両親のいない「動物の声が聞こえる女」を傍に置くことが第二王子であるユリウスにどれだけの影響を与えるのか。それは少し考えればわかることだった。噂は宮中を超え、市井にまで広がり始めている。その事実を「良し」としない人たちは一定数いた。第二王子という地位にある者が、何をやっているのだ、と。
 ハリオの発言を機に、帰るべきなのかもしれない。そうすれば、恋に堕落した第二王子などという汚名は返上できる。けれど、サーシャはユリウスに恩を返したかった。与えてもらってばかりで、ユリウスのために何もできていない。
 何もできないかもしれない。それでも、ユリウスの孤独を知っている。だからこそ、傍にいたかった。ユリウスが「つらい」と言える場所になりたかった。
 けれど、ハリオは続ける。
「王子と私だけで守るのには、無理があります。ここに残しておくならば、護衛を付けるべきです。護衛を付けられないならば、ここから出すべきです」
「護衛、ね」
 護衛をつけるには婚約者にならないければいけない。婚約者になればユリウスの評判はさらに下がるだろう。そこまで迷惑はかけられない。サーシャはそう思い口を開く。
「ハリオ様、私は…」
 その後にどんな言葉を続ければいいのかわからなかった。何を言うのが正解なのか。何をするのが正解なのか。
 サーシャを守るために、ユリウスもハリオも疲弊している。それでもここにいたいと思うのは自分のエゴなのだろうか。
「…お前は、部屋に戻っていろ」
「え?」
 ユリウスは隠し戸を指さした。サーシャは首を横に振る。
「でも…」
「ハリオと今後の事について、話しておきたい」
「それなら、私も話に…」
「戻ってろ」
 最後まで言わせてもらえなかった。静かなのに強い言葉に、サーシャは頷くことしかできない。
 ゆっくりと2人に背を向けて、自分に与えられている部屋に戻った。扉が閉まる音がやけに大きく響く。
 部屋に入ると、サーシャはベッドに背を預けた。泣きそうになるのを必死で堪える。
『サーシャ、大丈夫?』
「私って、何もできないんだね」
 味方になろうと決めた。何もできなくても話なら聞けると。けれど、それすらできていない。ユリウスとハリオの衝突の種になるだけの自分が、たまらなく悔しかった。

 コンコン。耳に入ってきたのはノックの音。サーシャは勢いよく背を起こす。隠し戸を見た。
『サーシャ、そっちじゃない』
 オースが扉の視線を向ける。誰かが訪ねてきたようだ。
「サーシャさん?いる?」
「…マルカさん?」
 聞き覚えのある声にサーシャは慌てて扉を開けた。目の前に立つのは可愛らしい笑みを浮かべるマルカ。
「来ちゃった」
 はにかみながらそう言う友達の姿に、沈んでいた気持ちが持ち直すのがわかる。
「今日はクッキー持ってきたの。今日はお休みだから、キッチンを借りて作らせてもらったんだ。この前、何も持ってこれなかったからさ。それと、紅茶のセットまで持ってきちゃいました!」
 よく見れば、紅茶セットを乗せたワゴンが一緒だ。メイドという立場でここまでしていいのかと不安になる。
「いいの?こんなの持ってきちゃって」
「うん。使っていないときには、休憩で使わせてもらえるの」
「そうなの?」
「うん。だから、大丈夫だよ。サーシャさん、お茶しながら、おしゃべりしようよ!」
 満面の笑みを浮かべるマルカ。ユリウスとハリオの会話に入れなかった悲しみを忘れて今は思い切り楽しみたかった。サーシャは喜んで部屋に招き入れる。
「マルカさん、来てくれてありがとう。どうぞ入って」
「お邪魔します」
 今の悔しい気持ちをすべてぶちまけてしまいたくなる。けれど襲われかけたことは秘密にすると約束した。愚痴を言うことは諦め、おしゃべりを楽しもうとマルカをソファーに誘導する。
「どうぞ、座って」
「ありがとう。それにしても、やっぱり、いいお部屋だよね」
 マルカは部屋に入ると、頭を右に、左に動かす。マルカの感想にサーシャは頷いた。
「うん。私にはもったいないくらい」
「いいな~。ベッドも大きいし。きっとこの絵画も高いんだろうね!」
「そうだろうね」
「あ、そうだ。今日のクッキーね、オレンジ入れてみたの。今、街で流行ってるみたい。食べたら感想聞かせてくれる?」
「うん。もちろん!マルカさん、ありがとう」
「いいの、いいの。私がしたくてしてることだから。今、紅茶入れるね」
「あ、私が入れるよ。マルカさんは座ってて。クッキー持ってきてくれたし」
 サーシャの申し出にマルカは首を横に振った。
「いいんだってば。私が持ってきたんだし。サーシャさんは座っててよ」
 そういうとマルカは茶葉を取り出し、適量を出し、ポットに入れた。湯気に手を当て、お湯の温度を確かめる。そんなマルカの姿にサーシャは困ったように表情を変えた。
「でも…。やっぱ、私にやらせてほしいな」
 ユリウスたちに何もできていない。迷惑をかけているだけの自分だからこそ、少しでも誰かの役に立ちたかった。だから、重ねて主張する。お湯を注ごうとするマルカに手を伸ばした。
「いいって!」
 マルカはサーシャの手を逃れるように身体をひねる。行き場のないサーシャの手が宙に浮いた。
「あ、ごめん…」
 思いのほか強い口調にサーシャはとっさに謝罪の言葉を口にする。そんなサーシャにマルカも気まずそうに俯いた。
「ごめんね。なんか強い言い方しちゃって。でも、本当に大丈夫だから、サーシャさんはソファーで休んでて」
「…うん」
「ほ、ほら。サーシャさん、少し前大変だったでしょ?だから、休んでほしいの」
「…え?」
「少し前に、変な人が入ってきて、襲われそうになったんでしょ?だから私、少しでもサーシャさんにゆっくりしてほしくて。強い言い方になっちゃって、ごめんね」
 話している間にもマルカは手を動かしていた。すっかり用意のできた紅茶がカップに注がれる。白い湯気が見えた。
 ソファーに座るサーシャの目の前にいい匂いのするクッキーと紅茶のカップが置かれる。サーシャはマルカの顔を見た。可愛い顔には可愛い笑み。
「あ、そうだ。…オース、ごめん、マルカさんが怖がっちゃうから、ちょっとあっちの方にいてくれる?」
『サーシャ』
「うん。わかってる」
『クッキー』
「…うん。わかった」
 サーシャの言葉にオースは頷くようにして羽を広げた。離れるオースを見て、マルカが小さく謝る。
「ごめんね」
 マルカの言葉に、サーシャは首を横に振った。
「いいの。それより、クッキーと紅茶ありがとうね。おいしそう」
「自信作だから、サーシャさん、食べてみてよ!」
 そう言いながらマルカはサーシャの隣に座った。
「ごめん、私、猫舌なの。紅茶が冷めてから食べるから、マルカさん、先にどうぞ?」
「え?そうなんだ。あ…でも、サーシャさんに先に食べてほしいから、待ってるよ!」
「そっか。ありがとう」
「だって、一番に食べてほしいもの」
 にこにこと浮かべる笑みに、サーシャは一度息を吐くと、マルカの方に身体を向けた。
「…ねぇ、マルカさん」
「何?」
「一つ、聞いてもいい?」
「どうしたの?改まって」
「聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
「…私が、襲われたって、どうして知ってるの?」
「え?」
「あの日の事は、誰にも話してないの。王子も、ハリオ様も誰にも言っていないはず。だから、…あなたが、知っているはずないの」
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