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17.過去14 ~孤児院の院長side~
しおりを挟む今代の王太子妃。
男爵令嬢で、王太子殿下とは身分を超えて結ばれたと評判でした。
前評判は「庶民的な王太子妃」だったのですが……。
あんな事になるのなら視察を断われば良かったと後悔しています。
王家は定期的に孤児院に視察に来られます。
それというのも、この孤児院が王家が支援する一つだからなのですが……。
『可哀そうに。親に捨てられた子供達なのね』
この王太子妃は本気で言っているのでしょうか?
何時誰が“捨てられた子供”などと言いましたか!
確かに、親に捨てられた子供も中にはいます!
けれど中には、親を病死した子も事故で亡くした子もいるのです!
『愛情をしらない子供……哀れだわ。愛を知らない子供は犯罪に陥りやすいと聞いた事があるわ』
なっ!
この子達が犯罪者になるとでも言うのですか!
失礼にも程があります!
『子供達が誤った道に堕ちない為にも寄付金を増やしてもらうようにマックスにお願いしてあげるわ』
そのお金は貴女の物ではありません。
国民の血税です!
それを「してあげる」とは何ですか!
子供というのは大人が思っている以上に敏感です。明らかに自分達を格下扱いしてくる王太子妃を好きになれる筈もありません。特に年長組は王太子妃を「敵」と見なしています。
「王太子殿下の女性の好みは最悪だわ」
これが前の婚約者であったセーラ・オルヴィス侯爵令嬢だったなら、あんな酷い対応なんてしなかった。大貴族のお姫様だというのに驕った処が全く無い方だった。
あの王太子妃と違って子供達との触れ合いを「ドレスが汚れるから無理だわ」と言って嫌がったりなさらなかった。
子供達に絵本を読んであげたり、勉強も教えてくれたり……そういえばバザーに参加してくださった時もあった。友人や知り合いに声掛けをしてくださった。
「セーラ様には子供達も懐いていたわね……」
孤児院の皆に慕われていた。
悪戯ばかりのジョンやお転婆なララ、警戒心が人一倍強いアイに人の悪意に敏感なロイ。そんな一癖も二癖もある子供にも信頼されていた。
それだけではない。
「あの王太子妃は子供達の名前も顔も覚えてないでしょうね」
セーラ様は孤児院の子供達全員の名前を憶えていらっしゃった。
王太子妃が帰った後の院内の雰囲気は最悪だった。
これから先も王太子妃が来ると思うと溜息が止まらない。失礼を承知で王宮に手紙を送るしかないのかもしれない。
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