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26.とある子爵家の長男side
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僕の絶叫で駈けつけてきた大勢の使用人たち。
執事がセシルを抱き上げる光景がスローモーションのように見えた。
「全く失礼しちゃうわよね。折角、私があげたお菓子を吐き出したのよ、その子。躾が出来てない証拠よ。子爵家はまともな教育を施して無いの?」
有り得ない言葉が聞こえてくる。
「王女……でんか…貴方様は妹に……何を…したんです」
僕の問いに王女は心底不思議そうな顔をした。
「何を? 何のこと? 何もしていないわよ?」
首を傾げながら答えられた言葉。
手づかみで菓子を食べたのだろう汚れている。汚れた手で無遠慮にプレゼントを開けていく。
……それは…それは。
セシルへのプレゼントだ。
今日はセシルの六歳の誕生日パーティー。
なのに……。
『何もしていないわよ?』
王女の言葉が蘇る。
セシルは寝室に移動している。
医者を呼ぶ声が聞こえてくる。
目の前にいる王女。
食べこぼしがそこら中に散らばっている。
プレゼントの包装紙が散り散りになっている。
汚い……。
卑しい。
その存在そのものが理解不能だ。
「祝い品もしけてるわね」
分からない。
この生き物が分からない。
倒れたセシルに何も思わなかったのか?
意識がないセシルを心配しない姿が理解できない。
分かるのは自分とは全く違う生き物だという事だ。
「ぎゃあっ!!」
気付いたら王女を殴っていた。
殴られた王女の悲鳴は、本当に王族か?と思うくらい品がなかった。
この惨状を作ったのは王女だ。
セシルは間違いなくアナフィラキシーショックを起こしたんだ。王女から食べさせられた菓子によって。王宮の菓子と言っていた。卵を使っているのだろう。クリームがたっぷりのった菓子だったのかもしれない。
傍らに苦しむセシルを無視しておいて…… ぬけぬけと。
この王女は顔だけはキレイだ。
王太子妃そっくりだと両親も言っていた。成長すれば更に美しくなるだろう、と……。本人もそれを自覚しているのか随分と自信たっぷりだった。御自慢の顔が台無しにされたらさぞ悔しいだろう。悲しいだろう。
一度、殴ればもう歯止めが効かない。
再び右の拳で王女の顔面目掛けて叩きつける。
「ぎやぁっ!!」
勢いのまま、握りしめた拳で王女の顔を殴り続けた。殴りやすいように馬乗りになって、何度も、何度も。
「ぎゃっ!」
「ぐっ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
王女の悲鳴が心地いい。
その後、騒動に気付いた護衛に羽交い締めにされた。
王女は自分を守る護衛を遠ざけていた。
『自分に危害を加える者がこんな小さな館にいるわけないでしょう!』
王女直属の護衛だ。
小さな主の命令に逆らえなかった。
お陰で拳が血だらけになるまで殴れた。この時ばかりは王女に感謝した。王女がいつものように護衛を傍に置いていれば心行くまで殴れなかったのだから。
執事がセシルを抱き上げる光景がスローモーションのように見えた。
「全く失礼しちゃうわよね。折角、私があげたお菓子を吐き出したのよ、その子。躾が出来てない証拠よ。子爵家はまともな教育を施して無いの?」
有り得ない言葉が聞こえてくる。
「王女……でんか…貴方様は妹に……何を…したんです」
僕の問いに王女は心底不思議そうな顔をした。
「何を? 何のこと? 何もしていないわよ?」
首を傾げながら答えられた言葉。
手づかみで菓子を食べたのだろう汚れている。汚れた手で無遠慮にプレゼントを開けていく。
……それは…それは。
セシルへのプレゼントだ。
今日はセシルの六歳の誕生日パーティー。
なのに……。
『何もしていないわよ?』
王女の言葉が蘇る。
セシルは寝室に移動している。
医者を呼ぶ声が聞こえてくる。
目の前にいる王女。
食べこぼしがそこら中に散らばっている。
プレゼントの包装紙が散り散りになっている。
汚い……。
卑しい。
その存在そのものが理解不能だ。
「祝い品もしけてるわね」
分からない。
この生き物が分からない。
倒れたセシルに何も思わなかったのか?
意識がないセシルを心配しない姿が理解できない。
分かるのは自分とは全く違う生き物だという事だ。
「ぎゃあっ!!」
気付いたら王女を殴っていた。
殴られた王女の悲鳴は、本当に王族か?と思うくらい品がなかった。
この惨状を作ったのは王女だ。
セシルは間違いなくアナフィラキシーショックを起こしたんだ。王女から食べさせられた菓子によって。王宮の菓子と言っていた。卵を使っているのだろう。クリームがたっぷりのった菓子だったのかもしれない。
傍らに苦しむセシルを無視しておいて…… ぬけぬけと。
この王女は顔だけはキレイだ。
王太子妃そっくりだと両親も言っていた。成長すれば更に美しくなるだろう、と……。本人もそれを自覚しているのか随分と自信たっぷりだった。御自慢の顔が台無しにされたらさぞ悔しいだろう。悲しいだろう。
一度、殴ればもう歯止めが効かない。
再び右の拳で王女の顔面目掛けて叩きつける。
「ぎやぁっ!!」
勢いのまま、握りしめた拳で王女の顔を殴り続けた。殴りやすいように馬乗りになって、何度も、何度も。
「ぎゃっ!」
「ぐっ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
王女の悲鳴が心地いい。
その後、騒動に気付いた護衛に羽交い締めにされた。
王女は自分を守る護衛を遠ざけていた。
『自分に危害を加える者がこんな小さな館にいるわけないでしょう!』
王女直属の護衛だ。
小さな主の命令に逆らえなかった。
お陰で拳が血だらけになるまで殴れた。この時ばかりは王女に感謝した。王女がいつものように護衛を傍に置いていれば心行くまで殴れなかったのだから。
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