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33.過去2 ~公爵夫人(元婚約者)side~

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「お父様、マクシミリアン殿下に婚約解消の打診をされました。殿下はビット男爵家のサリー嬢を妃になさるそうです。つきましては、早急に国王陛下と話し合う必要がございます」

 王都の侯爵邸に急いで帰ると、両親に婚約を解消される旨を伝えました。
 
「殿下と例の男爵令嬢の事は私達の耳にも入っている。勿論、国王陛下も知っているだろう。既に謁見の申し込みをしてある。明日にでも陛下との交渉をする予定だ」

 用意周到ですね。
 これは殿下が言い出さずとも婚約解消は整っていたのかもしれません。
 
 ですが――

「私と殿下は準婚姻をしている状態です。それに王妃様が何と仰るか……」

「あの王妃様の事だ。婚約解消に反対するだろう。もしくは殿下を誑かした男爵令嬢の存在をなかったものにするかもしれない。だからこそ陛下に謁見を申し出たんだ。安心なさい。我々は秘密裏に動く。セーラは何も心配する事はない。寧ろ、今まで頑張り過ぎていた位だ。少し休息をとった方がいい」

「その通りですわ! 王家からの婚約打診を渋々受け入れたというのに……この仕打ち。淑女の八年を何だと思っているのかしら? 望んで王太子妃になる訳でもないというのに。詫びの一つもないのですから!」

 お父様以上にお母様がかなりご立腹されていますが、無理もありません。
 王太子殿下との婚約に元々乗り気ではなかったのですから。
 そもそも、両親は一人娘である私を家から出したくないと言っていたのです。親族から養子を貰い嫁に出すのではなく、私に婿を貰って家を継いで欲しかったのです。それを王家からの度重なる婚約の打診。特に王妃様からの矢のような催促は常軌を逸脱していたと一族の間で語り草になっている程です。最終的に『王命』によって結ばれた婚約。そこのある諸々の契約内容を殿下は知っていたのでしょうか?

 
「噂によれば例の男爵令嬢はのようだが、セーラの目から見てどうだい? 今から教育を受けて間に合うと思うかい?」

「……無理だと判断いたします。サリー嬢は勉強が苦手ですし、それを除いてもやる気を出すタイプではありません。も次期王妃には相応しくないものと言わざる負えません。愛妾なら問題はなかったでしょうが……」

 マクシミリアン殿下が「王太子」である限り、サリー嬢が余所で孕む事はないと断言できます。そういった処はしっかりしているようなので安心といえば安心です。流石に、王家に違う種が入るのは不味いですからね。

 


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