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46.公爵side

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 国王陛下にも困ったものだ。
 これでは誰のための夜会か分かったものではない。王太子も怪訝に思っただろう。王太子妃の顔を見ろ。鬼のような形相だ。それを知っていて知らぬフリをする国王陛下は狸だな。それにしても、王太子は何故この美しく聡明な妻ではなく、あのような女サリー王太子妃が良かったのだろう。

 血筋も家柄も良く、美貌と才能に優れ、まさに時期王妃に相応しい器だ。
 まさに非の打ちどころのない。
 嫁いでからというもの、その賢さで次々と政策を打ち出して公爵領を豊かにしている。

 それに比べて王太子妃は何だ。
 品のない行動の数々。下賤の女ではないか。過去を改めて調べてみても、男に媚びを売るしか能がない。王太子と付き合う前は随分と奔放で、よくぞ学生時代に子を孕まなかったものだ。あの当時なら誰が父親か本人も分からなかっただろう。
 王太子妃が中々孕まなかった理由は「避妊薬」だ。それも普通の物ではない。闇市で売買されている危険な物だろう。「薬」としては強力だがその分副作用が強い。それ故に表で販売できなかった代物だ。娼婦たちが挙って買っている。確実に孕まないための薬だからな。
 王女以降に懐妊の兆しがないのがその証拠だ。
 よくぞ、王女が産まれたものだ。効き過ぎる薬というのは人の細胞を破壊する効果もある。恐らく、王太子妃は今後懐妊できないだろう。

 あの王太子妃は愛妾に据えるべきだった。
 愛妾なら何の問題もなかっただろう。

 歴史を紐解けば美女に籠絡された君主はどこの国にもいる。
 だがまさか、自分達の次期国王が籠絡されるとは夢にも思わなかった事だろう。

『何故、真面目で優秀だった王太子殿下が男爵令嬢如きに陥落したのか……今もって理解出来ません』

 重鎮達の困惑と嘆き。
 まさしく王国の悲劇だろう。



 今の王太子には親身になって忠言する者は傍にいない。

 長年仕えていた側近が軒並み辞めた事は有名だ。
 その穴埋めとして新たに側近が選出されたが、高位貴族出身者は皆無だった。「王太子殿下が望んだ通りの人物」として少々年の離れた側近が役目に就いた。それも下位貴族ばかり。

 新しい側近達は王太子の「イエスマン」だ。
 王太子を恐れてか、それとも過去の下位貴族の子弟達と同じ轍を踏みたくないのかは定かではないが、前側近の令息達と違って苦言を呈することはないらしい。時に王太子を諫め、間違いを正さなくてはならないというのに。あの王太子が話を聞くかどうかは兎も角、何故間違っているかを説明し諭さなければならない立場なのだ。

 自分の立場を理解できない人間しか王太子の傍にいない。

 あの王太子妃もその一人だ。
 王太子の寵愛を受け、結婚までした王太子妃は当然世間の注目を浴びた。
 後から聞いた話だが、ビット男爵家は自分の娘の所業を知らなかったらしく、娘による賠償と慰謝料で大変苦労したとか。周りに不幸と迷惑を蒔き散らかした王太子妃は他人事のように知らん顔を決め込んでいるのだから大した女だ。
 


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