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50.王女の縁組4
しおりを挟む「チェスター王家は美男美女で有名です。そのせいか“美”に対して異常なほど評価される国でもあります。美しいが故の傲慢さと我の強さは天下一品。しかも、虚栄心の塊ときています。自国ならいざ知らず、他国でそれらが通用する筈がありません」
なっ!?
まさか……。
いや、確かに母上は気位の高い人ではあるが……。
「その話に信憑性はあるのか? 私は聞いた事がない」
「御本人を前に悪口などいいませんし、言えば不敬罪として処罰されるのですか言える筈もありません」
確かにその通りだった。
王妃や王太子に面と向かって悪くいう者はいない。
「……噂にもなっていないようだが」
「近年、チェスター王家は自国よりも国力の低い国の王族としか嫁がせていませんから噂も聞こえてこないだけです。ですが、良い評判はあまり聞きません」
「……そうだったのか。すまない……知らなかった」
「いえ……殿下にお教えしなかった我々も悪いのです。……外交公務をされていた時に知ったものとばかり思っておりましたので……」
小国は口を噤んでも、大国や同格の国は違うという事か。これに気付かなかった私が悪い。
チェスター王族はその類稀なる美貌を賞賛されて華やかな印象しかない。
当時、評判を誰かから聞いても信じなかっただろう。思い返せば、そこまで親しい親族が私にはいない。チェスター王家から頻繁に手紙が届いていたが、それは全て母上宛てのもの。そういえば幼少の頃は母上の兄弟だという方々が外交特使として我が国に来た事があった。昔過ぎてよく覚えていないが、伯父にあたる彼らが子供の私を見て酷く落胆していた記憶がある。あれは私が母上ではなく父上に似ていたからこその落胆だったのだろう。はは、今頃になって気付くとは……。
「なるほど。チェスター王家は母上の美貌を引き継がなかった私には興味がないという事か……。それなら隣国の後ろ盾など無いに等しいな。王妃の息子だから何もしないという事はないだろうが、積極的に支援してくれるとは思えない。私は自国の王族とも交流が少ないしな。私の立ち位置は不安定なものだったのだな」
自分で言って虚しくなる。
宰相の哀れみの目が余計に惨めにさせる。
唯一人の王子、嫡出の王子。
確固たる地位だと思っていたそれは決して盤石なものではなかった。
それを今知る事になるとは……。
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