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53.王太子妃side

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 どうして?
 
 私がリリアナの嫁ぎ先にと考えていた家から正式な断りの手紙が届いた。マックスが大臣に相談すると言ったけど、私なりに高位貴族にアプローチを掛けた。
 だって大臣からよりも王太子妃自らが「お願い」した方が、効果があるに決まっているもの。以前の夜会では失敗したから今度は娘にあった年齢なども調べた上で婚約の打診をした。幾つかの家に「王女の婿候補」という名誉を与えてあげたのに。後は娘が気に入った相手をその中から選ぶだけだと思っていたのに。なのに……目をつけた全ての高位貴族から断られた。
 
 なんで?
 王女と結婚できるのよ?
 リリアナは私にそっくりの美貌に戻ったのに!
 何が不満だっていうのよ!
 

 こんなの――
 

「不敬罪よ!!!」

 マックスに言いつけて懲らしめてもらうんだから!
 王太子直々に叱られたら言う事を聞くはずよ。

 なのに――
 

「サリー、どうして勝手に貴族達に手紙を送ったんだ!そのせいで各家から苦情がきている!」

「苦情!?どうして!」

「王家の名で婚約の打診をしたせいだ。どうしてサリーの名前で出さなかったんだ」

「私は王太子妃よ!王族よ!王家の名前を出すのは当然でしょう!」

「だったら自分の名前だけですればよかったんだ。あれでは王家の総意と捉えられても仕方ないだろう」

「でも!」

「父上が各家に詫び状を出してくれなければ今頃大変な事態になっていたんだぞ」

「そんなの知らないわよ!」

 なんでよ。
 どうしてマックスまで反対するの。
 
「サリー、よく聞いてくれ。今、リリアナと婚姻を望む高位貴族はいないのが現実だ。現にサリーが手紙を送った家々の子息達は皆に婚約者がいる。それらの縁を切ってまでリリアナと婚約するメリットはない。諸外国の貴族に嫁がそうかとも考えたがリリアナの教育課程では無理だと大臣に却下された」

「何を言ってるの?王女と結婚できるのよ。光栄に思って受け入れるべきでしょう」

「その肝心の王女に価値が無いとみなされているんだ」

「なっ!?」

 そんなバカな。
 王女よ?
 王族なのよ?
 なのに価値がないなんて……そんな筈ないでしょう!
 王女というだけで価値がある存在よ!


「リリアナを修道院に入れようと思っている」

「はっ!?」

「結婚相手がいないんだ。他に方法がない」

「な、なら……高位貴族がダメなら……下位貴族はどうなの?」

 この際、下位貴族でもいいわ。
 我慢する。相手の爵位を上げて貰えば問題ない。

「王女の降嫁は侯爵家までだ。それ以下の家柄に嫁ぐ事は法律で禁止されている」

「……じゃあ、爵位を上げてから結婚させればいいじゃない」

 下位貴族から高位貴族になれるんだもの。皆、泣いて喜ぶはずよ。

「どんな理由で陞爵しょうしゃくするんだ? まさか王女を娶るから位を上げる、とは言わないでくれ。そんなもの誰も認めない! そもそも議会の承認などされないだろう」

「そ、そんな……」

「もう、どうしようもない。比較的条件の良い修道院を選ぶからそちらに寄付や訪問をするようにリリアナに伝えておいてくれ。私から言うよりも母親である君から伝えられた方がリリアナも落ち着いて聞けるだろう」

 どうしてこうなったの。
 全てが順調にきていたのに。

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