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75.事件2 

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「……今日の午後、高位貴族側の学舎でボヤ騒ぎが起きました。火は直ぐに消し止められたのですが、その混乱に乗じて下位貴族側の学舎の生徒が入り込みました。今この場にいる生徒達です。……異変にいち早く気付いたのお陰で大事には至りませんでしたが、彼らは高位貴族の令嬢を拉致しようと企んでいた事が発覚しました。おぞましい事に、媚薬を含むを所持していました。なんでもを穢そうと計画していたようなのです」

 理事長の言葉に愕然とした。
 他の親も同様だ。
 まさか自分の子供達がそんな大それたマネをするなど考えもしなかった筈だ。

  
「そ、それで……ご令嬢は……どうなったのですか……」

 男子生徒の父親の一人が理事長に結果を聞き出そうとした。大事にはならなかった、とは言うが実際の処どうなのか気になるのだろう。それは私も同じだ。令嬢の名誉に関わる。既に汚された後で内密にしようとする算段なのか、それとも本当に何も無かったのか。もしくは、薬を使っただけで令嬢は無事だったのか……。

「皆様が御心配している最悪の事態にはなっておりません。この事は『何もなかった』と言えます」
 
「なら、息子は未遂なんですね」

「そうです」

 それを聞いた父親を始めとした保護者がホッとした表情になった。
 私も同じだ。
 理事長が神に誓って宣言した以上は本当に何も無かったのだろう。未遂ならいい訳も立つ。最悪でも停学処分で済むだろう。他の親達も私と同じ考えなのだろう。先ほどよりも顔色が良い。いや待て、それなら何故我々は呼び出されたんだ?
 

「ですが、狙われたのはコードウェル公爵令嬢です」

 理事長の言葉に再び沈黙が戻った。

「彼らはよりにもよって帝国の第二皇子殿下の婚約者を計画的に汚そうと企んでいました。これは国家に対する反逆行為とみなされます」

「なっ!?」

「息子が反逆だと!?」

「そんな事を考える筈ない!」

 
 保護者達は一斉に違うと言い出した。
 無理もない。
 だが、証拠物件は学園側が握っている以上は下手な言い訳などしない方がいい。
 
 そもそも、王家の血を引く公爵家の娘を襲おうとしただけでもと思われても致し方ないだろう。
 私は冷めた目で理事長に言い訳をしている保護者達を眺めていた。

 すると――

 
「王太子殿下、何を他人事のようにしているのですか? あなた方も国家反逆罪を問われている身ですよ? 寧ろ、私達はあなた方が首謀者ではないかと考えています」

「「はっ!?」」

 医者から有り得ない事を言われた。

 私達が国家反逆罪だと!?
 

 


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