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96.元王妃side
しおりを挟む「私が、そなたを? なんの冗談だ。私が何時、そなたを『愛している』と言った。そのような戯言を言った覚えはない。国のためにチェスター王国の王女を妃にせねばならなかった。そなたを愛しているからでも何でもない」
「では……私よりも、あの女を愛しているというのですか!? 公爵家の娘に過ぎない……容姿も地位も私に遥かに劣るあの女が!?」
そんなはずはない!
お父様達も仰っていたわ。私は誰よりも美しい王女だと。私を妻に迎える男は世界一の幸せ者だと。あの女を襲わせたのがいけなかったというの? 私は陛下に纏わりつく虫を払いのけただけよ。婚約者でなくなったというのに恥知らずにも陛下との交流を続けていた女。陛下が私との婚約に中々応じなかったのはあの女が手練手管を弄していたに違いないわ。そうでなければ、私との婚約を喜びこそすれ拒むなんて有り得ない事だった。私に恥をかかせた女。全てはあの女のせい。だから排除しただけ。
「そなたのような性根の腐った女を愛するなど聖人でもなければできん」
「へ……いか……」
「そうであろう? エリーゼだけでは飽き足らず、私の息子にまで害をなそうとしたのだからな」
「何を仰るのですか! 私はマックスを害してなどおりません」
「そなたの息子ではない。私の息子の事だ」
「陛下……何を仰って……」
「何だ。気付いていなかったのか」
「何のことでしょう?」
「ああ、そうだな。そなたの目は他者と違って己の都合の良い物事しか映さない希少な目であった。忘れていた。自分が世継ぎの母になれない事を危惧し、王太子位の最有力候補であったフェリックスに刺客を放った事を知らないとでも思っているのか。あの子の命を守るために、そなたを孕ませなければならなくなった。アレには申し訳ない事をした。相思相愛のパートナーがいるというのに、そなたの閨の相手をさせられたのだからな」
陛下が何を仰っているのか分からない。
「陛下、一体何の話です」
「そなたに子を産ませるつもりは最初からなかった。世継ぎはフェリックスと決めていたからな。だが、そなたが愚かにもフェリックスの命を狙う行動に出たため計画を変更せざるおえなかった。流石に王家に別の血を入れる訳にはいかない。結婚当初から匂香で相手が分からない状態にさせた後で別の男を閨に入れ込んでいたのとではかってが違い過ぎる故な。そなたが私との間にできたと喜んだ待望の王子は私の子ではない。私の影武者との間の子だ。ああ、安心するといい。私の影武者は異母弟にあたる。市井の出であるため私以外に知る者は限られた存在だ。腹違いとは思えない程に私と瓜二つ。そなたも気付かなかったであろう?」
「……嘘……嘘です!!」
私はそんな話知らない!!
私は正真正銘、陛下の子を産んだはず!!
「真実だ。そなたは夫以外の子供を身籠り産んだのだ」
「ならば誰が陛下の子供だと言うんですか!マックス以外いないではありませんか!」
「本当に人の話を聞かぬな。私の子はフェリックスだ。私とエリーゼとの間に生まれたこの世で唯一の子供だ」
「フェリックス……コードウェル……が」
ああ!ああ!!
あの時に既に身籠っていたというの!?
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