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105.崩壊6

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 それは突然だった。

 大勢の治安部隊が男爵領に押し寄せてきた。
 私と領民は一人残らず捕えられた。

 人身売買の摘発。

 奴隷貿易への一斉捜査。
 そして、領主である私の捕縛。
 
 
「私は何もしていない!」

 そう言っても誰も聞いてくれなかった。
 
「私はこの領地を豊かにする為に粉骨砕身の努力をしたんだ! それなのに何故私が捕まらなければならないのだ!?」
「黙れ! 犯罪者が偉そうな口を利くな!」

 兵士の一人に殴られる。
 口の中が切れて血が出たが周りは誰も助けてくれない。
 
 何故だ?

「貴様が他国に売却していた中には刑に服していた人間だっているんだぞ!! 犯罪者なら奴隷として売り払っても問題ないと思っているのか!? そんな訳ないだろ!」

 どうやら私の知らない間に領民達が刑務所から重罪人をくすねていたらしい。

 それを秘密裏に売っていたのだとか……。

 だが、それが何だというのだろうか?


「全く意味が分からない……わざわざ犯罪者を刑務所で囲っていた処で金がかかるだけではないか。国も経費削減になる。男爵領の懐も暖まる。一石二鳥だろうに……」

 私の言葉を聞いて周りの人間が信じられないものを見るような目を向ける。
 なんだその目は? まるで狂人が居ると言いたいような態度じゃないか。
 私の方が間違っているみたいじゃないか。

 労働力としても役に立たない犯罪者なのだ。売られた者の中には反体制派の不穏分子もいたというではないか。ならば尚更だ。処分した方が良い者達ではないか。
 なのに何故私だけが責められなければならない?

 私は護送馬車に乗せられ王都へ帰還した。
 掴まった中に信頼していた執事の姿はなかった。どうやら逃げ延びたようだ。


 数日後のよく晴れた空の下、私の生涯は終わった。

 数多の領民達と共に公開処刑されたのである。

 何故、こうなったのか分からない。
 私の何がいけなかったのか。
 
 ただ、十数年前からずっと後悔し続けている。
 あの時、サリーを選ばなければこんな結末にはならなかったのか?
 セーラが妻なら例え国王の息子でないと判明しても王族として残れたのではないか?
 臣籍に降っても「公爵」の位は授かれたはずだ。

 もう何が正しいのかさえ分からない。
 



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