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第8話八年前~ブリリアントside~
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八年前――
「お父様、あの方がユリウス殿下?」
「ああ、そうだ」
「隣の赤毛の男性は王子の護衛かしら?」
「いや、シュゼット側妃の護衛騎士だ。今日は王子に貸し出しているのだろう」
「騎士の貸し出しなんて……」
「王子のお気に入りでもある。今日のパーティーにワザワザ連れてきたようだ」
「見目麗しい騎士を見せびらかすために?」
「ククッ。それはそれで面白いが、違うよ。彼は側妃の信頼する騎士だ。恐らく、王子が粗相をしないように目付代わりに連れて行くように言ったのだろう」
「粗相?」
「ブリリアント、王子はとても分かり易い子供だからね。側妃も心配なんだろう」
父の言葉の意味を知ったのは直ぐ後のことでした。
王子が私達の存在に気が付いたのでしょう。ギンギンの目で睨みつけてきました。
納得しました。
これは確かに分かり易い王子です。
ただ、これはこれでどう反応してよいのか分かりかねますわ。
「お父様……」
「ふふ、可愛らしいじゃないか」
「可愛い……ですか? さっきからずっとコチラを睨みつけている王子がですか?」
不躾な態度は人に不快をもたらします。
それは王族と言えども同じこと。態度の悪い王子に可愛さを見いだせません。私が子供だからでしょうか?大人目線では可愛らしく映るのでしょうか?
私の無言の訴えにお父様は楽しそうに理由を教えてくださいました。
「言ったろう? 王子は分かり易い、と。まるで人に中々懐かない子猫のようではないか。躾のし甲斐がある」
とんでもない理由でした。
「まぁ、毛並みは良さそうですね」
「陛下に似ていないだろう?」
「はい。母君に似たんですか?」
「ああ、生き写しだ。もっとも、王子の方が何百倍も覇気があるがね」
「あの王子、自分の立場を理解しているんですか? どうも余り分かっていなさそうですけど……」
「一応、理解はしているよ」
「……そうは見えませんが」
「自分に絶大な自信があるのだろう」
「自信?」
「座学でも剣術でも天才的な才能を発揮している。自他共に優秀な王子だよ」
「本物は自分を天才とは言わないと思いますわ」
「はははっ。ブリリアントも中々言うな。だが、彼が文武両道なのは確かだ。ただ、敵と味方の区別がつかない。いや、敵を作る天才でもある、と言った方が正解かな」
「……最悪です」
「仕方がない。彼は飼い慣らされた肉食動物と同じだ。牙を持つが狩りの仕方が分からない。鋭い爪を持っていても獲物の取り方を知らない。側妃が愛情深く育てていたらしくてな。王妃の猶子になるまでは離宮から外に出る事も少なかったそうだ」
「それで人に慣れていないんですね」
「そう言う事だ。今も拳を握り絞めて我慢しているだろう」
「何の我慢か知りたくありませんが、目の殺気は隠せていません」
王子の鋭い眼差しからは憎悪を感じ取れます。初対面だというのに一体何故でしょう?
「可哀そうな子だ」
「お父様?」
「あのように、あからさまな態度では王宮の者にいいように利用されてしまうだろうに」
「王宮だけですか?」
「いや、他にも沢山いるな。何しろ、貴族には狐と狸ばかりだからな」
「では、王子はすぐに騙されてしまいますね。どちらも化かし合いが得意ですから」
「助けてあげないのかい?」
「何故、助ける必要があるんですか?」
「これから婚約する相手だよ?」
「お父様だけでなく、お母様も反対意見のままですのに?」
「これは手厳しいな」
「本当の事ですもの」
「これでも、お父様は要観察意見だよ」
「それはそれで酷いです」
「ふふ。ブリリアント、王子がこちらに来る」
「ええ。騎士に促されて、ですわね」
「来ないよりマシだ」
「挨拶は必要ですか?」
「当然だ」
「王子に無視されてしまいそうですけど?」
「それはそれでカマワない。それを理由にして婚約を撤回してもらえばいいだけだ」
優しく微笑んでいるお父様ですが、目は本気でした。
この婚約は一波乱ありそうです。
「お父様、あの方がユリウス殿下?」
「ああ、そうだ」
「隣の赤毛の男性は王子の護衛かしら?」
「いや、シュゼット側妃の護衛騎士だ。今日は王子に貸し出しているのだろう」
「騎士の貸し出しなんて……」
「王子のお気に入りでもある。今日のパーティーにワザワザ連れてきたようだ」
「見目麗しい騎士を見せびらかすために?」
「ククッ。それはそれで面白いが、違うよ。彼は側妃の信頼する騎士だ。恐らく、王子が粗相をしないように目付代わりに連れて行くように言ったのだろう」
「粗相?」
「ブリリアント、王子はとても分かり易い子供だからね。側妃も心配なんだろう」
父の言葉の意味を知ったのは直ぐ後のことでした。
王子が私達の存在に気が付いたのでしょう。ギンギンの目で睨みつけてきました。
納得しました。
これは確かに分かり易い王子です。
ただ、これはこれでどう反応してよいのか分かりかねますわ。
「お父様……」
「ふふ、可愛らしいじゃないか」
「可愛い……ですか? さっきからずっとコチラを睨みつけている王子がですか?」
不躾な態度は人に不快をもたらします。
それは王族と言えども同じこと。態度の悪い王子に可愛さを見いだせません。私が子供だからでしょうか?大人目線では可愛らしく映るのでしょうか?
私の無言の訴えにお父様は楽しそうに理由を教えてくださいました。
「言ったろう? 王子は分かり易い、と。まるで人に中々懐かない子猫のようではないか。躾のし甲斐がある」
とんでもない理由でした。
「まぁ、毛並みは良さそうですね」
「陛下に似ていないだろう?」
「はい。母君に似たんですか?」
「ああ、生き写しだ。もっとも、王子の方が何百倍も覇気があるがね」
「あの王子、自分の立場を理解しているんですか? どうも余り分かっていなさそうですけど……」
「一応、理解はしているよ」
「……そうは見えませんが」
「自分に絶大な自信があるのだろう」
「自信?」
「座学でも剣術でも天才的な才能を発揮している。自他共に優秀な王子だよ」
「本物は自分を天才とは言わないと思いますわ」
「はははっ。ブリリアントも中々言うな。だが、彼が文武両道なのは確かだ。ただ、敵と味方の区別がつかない。いや、敵を作る天才でもある、と言った方が正解かな」
「……最悪です」
「仕方がない。彼は飼い慣らされた肉食動物と同じだ。牙を持つが狩りの仕方が分からない。鋭い爪を持っていても獲物の取り方を知らない。側妃が愛情深く育てていたらしくてな。王妃の猶子になるまでは離宮から外に出る事も少なかったそうだ」
「それで人に慣れていないんですね」
「そう言う事だ。今も拳を握り絞めて我慢しているだろう」
「何の我慢か知りたくありませんが、目の殺気は隠せていません」
王子の鋭い眼差しからは憎悪を感じ取れます。初対面だというのに一体何故でしょう?
「可哀そうな子だ」
「お父様?」
「あのように、あからさまな態度では王宮の者にいいように利用されてしまうだろうに」
「王宮だけですか?」
「いや、他にも沢山いるな。何しろ、貴族には狐と狸ばかりだからな」
「では、王子はすぐに騙されてしまいますね。どちらも化かし合いが得意ですから」
「助けてあげないのかい?」
「何故、助ける必要があるんですか?」
「これから婚約する相手だよ?」
「お父様だけでなく、お母様も反対意見のままですのに?」
「これは手厳しいな」
「本当の事ですもの」
「これでも、お父様は要観察意見だよ」
「それはそれで酷いです」
「ふふ。ブリリアント、王子がこちらに来る」
「ええ。騎士に促されて、ですわね」
「来ないよりマシだ」
「挨拶は必要ですか?」
「当然だ」
「王子に無視されてしまいそうですけど?」
「それはそれでカマワない。それを理由にして婚約を撤回してもらえばいいだけだ」
優しく微笑んでいるお父様ですが、目は本気でした。
この婚約は一波乱ありそうです。
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