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第9話政略結婚4

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「随分、楽しそうだな。ジョアン」

 あら?
 伯父様の堪忍袋の緒が切れたようです。
 隣にいたのにいつの間にかジョアン達の元に行っていました。

「父上!何故ここに!?」

「先ほどからずっといたがな。お前は全然気付いていなかったようだな」

「だ、だって……今日は欠席だと……」

「私の可愛い義娘フアナからエスコートを頼まれたのだ。どこぞのアホがアホな発言をしたせいでな」

「な、なら……フアナもここに……」

「来ている。当然だろう」

 ……伯父様、私の事は放っておいて欲しかったです。
 私達、物凄く注目されていますから……悪い意味で。ですが、いつまでもこの状態のままでいる訳にはいきません。仕方なく、私はジョアンに話しかけました。

「ジョアン、貴男が夜会に参加するとは思っても見ませんでした。何しろ、に忙しいと仰っていましたから」

「フ、フアナ……」 

 私の登場に顔を真っ青にされているジョアンに呆れる他ありません。
 もしかして、彼は自分がエスコートしなければ私が夜会に来れないと思っていたのでしょうか?
 そんな筈ないでしょう。代理の方を用意すればいいだけの話なんですから。
 
「ジョアンを責めないで! お飾りの癖に!」

 赤毛の愛人が睨みつけてきました。
 え?
 責めてます?これ?


「あんたなんか書類上の妻でしかない癖に!」

「おかしな事を言うのですね。夫婦とは『婚姻証明書』という『書類』に記載して受理された者同士の事をいうのですよ? それ以外に『妻』や『夫』を名乗れば詐欺罪に当たってしまいますわ。法律で決まっている事ですが御存知ないのですか?」

「そんなのは知ってるわよ!あんた、私を馬鹿にしてるの!?」

「そのような事はありませんが、あまりにも常識外れの行動が目立ちますので、もしや……と思ってしまいましたわ」

「~~~~っ。馬鹿にして!あんたが大きな顔をしてられるのは今の内よ!私がジョアンの子供を産んだらあんたなんかお払い箱なんだから!」
 
 
 周囲のざわめきが大きくなりました。

「あの女性、なんて言いましたの? ただの愛人の分際で」

「アウストラリス伯爵家の血は令嬢が継いでいる筈だろう。婿君は伯爵家の血縁ではない筈だ」

「まさか、伯爵家の乗っ取りか!?」

「いや、グリア侯爵はアウストラリス伯爵の実の兄君だ。伯爵家の進退を心配なさっていたし、姪である令嬢を実子同然に可愛がっているのは有名だ」

「なら、あの愛人が単独で計画しているという事か?」


 色んな声が聞こえます。
 伯父様が私を可愛がっているのは周知の事実。ジョアンは兎も角、グリア侯爵家が悪し様に言われなくてホッとしました。
 だからでしょうか?
 この時、ある高貴な方が私を面白そうに御覧になっていた事に気が付きませんでした。
 そして、それは私のこれからを大きく左右する事にもなったのです。


 

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