悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子

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五十年前の「とある事件」

71.聖女候補2

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「第二王子の元婚約者だったのね」

「王子といっても愛妾の息子だから伯爵令嬢でってことらしいけど。実際、王子はこの婚約が嫌だったらしい。自分はもっと格上の家柄の令嬢との婚姻を望んでいたらしいよ」

「図々しい……。自分の母親は平民出身でしょうに」

「本当にね。何様?って感じだよ。大体、第二王子は婿に入る側だってのに」

「婚約は破棄されたんでしょう?」

「一応はね。第二王子有責で。だけど、第二王子と連れ子が結託してカタリナ嬢の悪評をばら撒いたらしいよ。酷い話しだよね。王家が急いでカタリナ嬢の縁談を勧めたわけだ。もっともその嫁ぐ先は噂を鵜呑みにしてカタリナ嬢を虐げていたってわけだ」

「最悪だわ」

「本当に。今は真実を知って領民共々、カタリナ嬢に謝罪したいって騒いでる。イリスがずっとカタリナ嬢に付いているから近づけないみたいだけど、王都の神殿にまで嘆願に訪れる者も出始めてね。とてもじゃないけど無視できない状況だ」

「あぁ……それで私達が呼ばれたのんですね」

「そういうこと」

 ゴールド枢機卿はニッコリ笑って頷いた。

「カタリナ嬢の伯爵家の者達は全員牢屋に放り込まれている。この国はカタリナ嬢に伯爵家を継いで、聖女もやって欲しがっているけど、それは無理だ。彼女の力は枯渇しているしね。当分は静養が必要な状態だよ」

「なるほど……それならば今すぐにでも彼女をモンティーヌ聖教国に連れて帰りましょう。大聖女と枢機卿猊下の庇護下に入れば易々と手出しはできないもの。もちろん、元婚約者やその一族もね」

「うん。そうしようか。神殿側に圧力をかけてカタリナ嬢とグランテ辺境伯の離縁は成立しているしね。いや~~、白い結婚で助かったよ。ま、元旦那がカタリナ嬢の寝室にまで押し入ってたっていうから、よほど聖女である事を隠蔽したかったのか、と疑惑をかけられているけどね。ははは」

「笑えませんわ。ゴールド枢機卿」

 私は呆れてため息を吐いた。
 そんな私にゴールド枢機卿は肩を竦めると、話を続けた。

「グランテ辺境伯は妻とやり直したいと願い出ている。ちょっとした誤解があったんだって言ってね。今は反省して、カタリナ嬢に謝罪したいと」

「テンプレね」

「そう。テンプレってやつさ」

 私とゴールド枢機卿はお互いに肩を竦めて、頷いた。
 どうしてやらかした男はこうも同じような行動を取るのか。
 謝罪したところで許すわけがない。
 私なら絶対に許さない。

 それから、私達はカタリナ嬢を匿っている神殿の場所を聞いて転移魔法を発動させた。








 

 水色の髪に金色の目。
 十八歳という年齢よりもかなり幼く見えるカタリナ嬢。
 十三歳……よくても十五歳くらいにしか見えない……。
 細すぎる身体はどう見ても栄養不足。
 睡眠不足も相まって青白く、目の下には真っ黒な隈ができているし。
 これって虐待児の保護では?

「カタリナ嬢。聖教国へ来てください。これは大聖女としての命令で拒否権はありません」

「……え?」

 水色の瞳に驚愕の色が浮かんでいた。

 国の許可?
 そんなの要らない。
 私を誰だと思っているの!
 大聖女様よ!!




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