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45 対アデス特化兵器の本領

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思えば最初に彼女を助けた都市でも
ソーラス級等の大物を始めアデスは彼女を中心に集まっていた

旧時代に於いても、ゲートから出現したアデスは、全ての生物に対し
強い殺意を持っており、アデスに蹂躙された地域には何も残らない
しかしその中でも特に人を優先的に攻撃行動を取る習性があった

『このままアデス群がこちらに集中すれば
 間もなく私の迎撃率では飽和状態となり突破されます』

「了解した!すぐに戻る!」

アデス群中央への突破を諦め、急ぎ引き返す
各個撃破すれば十分対処出来る規模であったが
状況が変わりタイムリミットが発生した為だ

進行方向に障害となるアデスのみを切り倒し
他には目もくれず一直線に馬車へと弾丸の如く駆ける

「プロメテウス母艦からの支援は可能か?」

『主砲の場合、敵との距離が近過る為
 味方に被害を齎す恐れがあります
 また、小口径光学兵器の場合
 既に多数のレンズが焼け付いていると推測され
 大多数対象への攻撃は確実性に欠けます』

「わかった、合流後そちらへのエネルギー供給を解除
 後、クサナギの局地殲滅モードへと移行する」

『了解』

馬車が近くなり、その進路を阻む最後の1体の胴を
斜め下から上に袈裟切りにし両断し、駆け寄る

「大丈夫か」

「現状被害無し、残存アデス群、個体数217体
 スーツリアクター、エネルギー接続解除」

プロメは淡々と報告を続けると
突き出した手を下ろし、解けた髪は
一瞬光に包まれたかと思うと、再び後ろで纏められていた

馬車の方から次々と目の前で繰り広げられる光景に
信じられないという視線が複数向けられているが
特に二人とも気にする様子は無い

「WODシステム、クサナギと連動
 局地殲滅形態へと移行開始」

そう言うとゼロスが刀を、まるで大剣を大きく振りかぶる様に
その場に強く踏ん張る姿勢を取り
両腕でしっかりと柄を握り、肩上で振りかぶる

「了解、クサナギとの連動・リアクター制御開始」

ゼロスの言葉にプロメが答えると
クサナギの刃の部分が次々と、複数のピースとなって離れていく
そしてその中からは完全に翠の光のみで構成された純粋な
エネルギーの刃が現れ、その周囲を刃だった黒いパーツが漂う

「Gリアクター出力上昇...安定
 クサナギへのエネルギー伝導率99.98%、システムグリーン」

翠の刃とその周囲を漂う黒い刃のピースとの間に
激しい放電現象が始まり、刃の輝きがより一層強くなる

その光景を馬車から皆、困惑と畏怖の表情を浮かべ見る中

セルヴィだけは一人、その光を写す瞳にはその様な影は一切無く
ただただ美しい物を見るように見入っていた
それは王都で意識を手放す直前に朦朧とする中で見た
自分を救ってくれた、あの時の光と同じだったからだ

そして迫りくるアデスの大群に鋭い視線をゼロスが向け

「アデス群が一列に並ぶ瞬間の計測を頼む」

「了解、現在アデス群の平面高低差、3.2
 殲滅許容高低さ1.7
 2.8
 2.6
 2.1
 2.3
 1.8
 1.6、今です」

「クサナギ、モード天叢雲・一閃両断!!」

次の瞬間、一気に肩口から横一閃にクサナギを振るう
その刃は柄の根元から激しく一つの光の筋となり、地平の彼方まで伸びる
そして振るわれた光の線はアデス背後の丘に横一閃の筋を描きながら
扇状に巨大な翠の残光を残しアデス群をすり抜けていく

そして右から左へ振りぬくと、再びクサナギが元の輝きへと戻り

カシャカシャッ!シャキン!

離れていた黒の刃が再び翠の光に装着され、元の黒い刀の形状へと戻っていく
直後、前方のアデス群が一斉に胴や首元から上と下が離れ、その場に崩れ落ちた

ガチッ! プシュゥウウウウ!!

ゼロスの鎧の肩元、小手、背、腰元の装甲が僅かに開き
その隙間から火の粉交じりの熱風を排出し
熱風を噴出し終えるとそのまま草薙を一振りし再び鞘に収める

「リアクター安定、スーツ、兵装共に異常無し
 残存アデス反応無し、殲滅完了・戦闘モード解除」

そう言うとプロメがゆっくりと瞳を閉じる

ほんの一瞬の出来事だった
次の瞬間には先ほどまで蠢いていた魔物達は
どの一体もピクリとも動かなくなっていた

「す、すげぇ!たった1撃であの魔物を一気に倒しちまった!!」

馬車の中の弓使いの歓喜と共に一気に皆思い思いの歓声を上げる
すると馬車からまだよろめきながら女戦士が降り、
ゼロス元へとゆっくり近づき、目の前まで来て立ち止まる
女性にしては非常に筋肉質な巨体の持ち主でガルム程ではないが
ゼロスよりもやや背が高いほどであった

また自分達が何者なのかと問われるのだろうかと思ったが
女戦士の口から出てきた言葉はそうではなかった

「ありがとよ!あんたのおかげであたしらは全員死なずに済んだ!」

女戦士が右手の差し出し、手の平をこちらに掲げる
どうすればいいのか、考えるより先に自然と体が動き
その手のひらにこちらの手のひらを軽く叩きると
甲冑とスーツの金属同士が子気味よい衝突音を立てた

昔、それを教えてくれた友が居た気がする

そう、それはずっと、遥か昔に...


―――――――――――――


「あ、あの数のアデス群を一撃かよ...」

肩に11と描かれた、青色の良く似たスーツを纏う男が
目の前に築かれた形状も様々の大量のアデスの死骸を前に呟く

「けっ!流石はオリジナル・・・・・様だ、俺ら廉価版とは違うってか」

その隣で廃墟のビルの壁に背をもたれ
同じく09と描かれた、目つきの悪い男が悪態を付く

「SG09、それは違う、お前達ストームガーディアンズが
 前線を食い止めてくれて居なければ、俺は何も出来なかった」

「ちっ!オリジンにゃ皮肉もつうじねぇのかよっ」

「すまん、よくわからない」

「...お前、もう150年以上前からずっと戦ってるんだろ」

「ああ、戦闘以外の殆どは眠っているからその実感は無いが、そうなるな」

「虚しくならねぇのかよ」

「何がだ」

「必死こいて救った都市が、次目覚めた時は廃墟なってやがる
 命を懸けて助けた奴が。ほんのその数年後
 病気や飢餓でとっくに逝っちまってると聞かされる
 ここだって20年前は沢山の人間が生活してたんだ...」

周囲を見回すとそこはアデスの死体と瓦礫、都市の残骸
天は濃い暗雲に包まれ、世界の終焉という言葉が良く似合う情景だった
その男は過去、この都市が廃墟になる前に来た事があるのだろう

「だが、お前達の様に、共に戦う仲間はまだこうして隣に居る」

「...ふんっ!」

男がビルの壁から背を離し、ゆっくりとこちらへ歩み寄る
そして隣を横切る手前で立ち止まり

「今回は助かった、今後も頼りにしてるぜ、オリジン」

右腕を差し出す

「なんだ」

「なんだ、じゃねぇよ!150年前は無かったのかよ
 こ、こう男同士の挨拶って奴だよっ!いいから同じ様に手を出せ!」

「こうか?」

まねて右手を差し出すと男が手のひら同士を撃ち付けた

ガンッ!

手の装甲と装甲がぶつかり会い硬質な音を上げる

「また次の戦場で会おうや、戦友」

そういうと男はそのまま通りすぎていった
そのまま掲げたままの手に11の男も同じよう続き
手を叩き付け、好意的な顔を向け横を通り過ぎて行った

一人その場に残された中、手を下ろし
自分の手の平を見つめる

「戦友...か」

センサーは何も感知していない
しかし何故かその手に熱い物があった

その背後で頭上から激しい突風が吹き付け
サーチライトを照らしながら
プロメテウスの降下艇がゆっくり高度を下げ
タラップを降ろし着陸態勢を取る
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