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第23話:何が起こったのでしょう
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ダンスが終わると、すぐにエディソン様とご両親がやって来た。
「やあ、アンリ。こんなところにいたのだね。それにしても、君たちの格好…いくら今はまだ2人が婚約者同士だからって、さすがにその格好はどうかと思うよ…」
そう言ってため息を付くエディソン様。さらに
「エディソン、だから私は、こんな品のない令嬢をあなたの妻に迎え入れるのは反対なのよ。あなたにはもっと素敵な令嬢がいるのに、よりにもよって家よりも爵位の低いうえ、あなたを追い掛け回していたハイエナ令嬢と婚約を結ぼうとするだなんて…いい、アンリ嬢、我がマッキーノ侯爵家は由緒正しい家柄なの。そんな家に嫁げることを、誇りに思いなさい。それから、我が家に泥を塗る様なことだけはしないで頂戴。もちろん、私自ら、厳しく指導はするつもりだけれどね」
怖い顔で私にそう吐き捨てる、マッキーノ侯爵夫人。あまりの迫力に、つい固まってしまう。
「ちょっと、返事くらい出来ないの?」
「申し訳ございません、どうぞよろしくお願いいたします」
私が固まっていた事が気に入らなかった様で、大きな声で怒鳴った夫人。慌てて頭を下げた。
「本当にこんな子がエディソンの妻になるだなんて…エディソン、あなたは非常に優秀なのよ。もしこの女が嫌になったら、すぐにこの女を追い出して、もっと爵位の高い、魅力的な令嬢を後妻に向かえましょうね」
そう言ってエディソン様にほほ笑んでいる。そんな夫人に何も言わないエディソン様。やっぱりエディソン様は、私を夫人から守るつもりはこれぽっちもないのだろう。
その時だった。
「夫人、そんなにアンリの事をお気に召さないなら、どうか私の婚約者のまま置いていただけないでしょうか?その方が、よろしいのでは?」
そう声をあげたのは、グレイズだ。顔は笑顔だが、あの瞳。明らかに怒っている。さすがにこれはまずい。
「グレイズ、あなた…」
「まあ、何なの?伯爵令息の分際で、私に意見するというの?ダニルーディン伯爵はどんな教育をしているのかしら?恥を知りなさい!」
顔を真っ赤にして怒る夫人、さすがにこれはまずいわ。そう思い、謝ろうとした時だった。
「恥を知るのはあなたですわ。マッキーノ侯爵夫人」
声の方をゆっくり振り向くと、そこには王太子妃様とマリーゴールド様、さらにマリーゴールド様のお兄様のお嫁様でもある、カレッソル公爵令息夫人が立っていたのだ。
「マリーゴールドから話しは聞きました。マッキーノ侯爵、それから夫人、あなた達は権力を利用して、既に婚約が決まっていたスリーフェイル伯爵令嬢とダニルーディン伯爵令息を、無理やり婚約破棄させ、自分の息子とスリーフェイル伯爵令嬢を婚約させるそうではありませんか!」
美しいお顔の王太子妃様が、怖い顔でマッキーノ侯爵と夫人に詰め寄っている。
「さらに先ほどの暴言、聞いていて気持ちの良いものではありませんでしたわ。確かにあなた方の方が2人より爵位が上です。だからと言って、何でも好き放題言っていい訳ではありませんわ。その様な事も分からず、よくも侯爵夫人なんてやっていらっしゃいますわね」
「お義姉様の言う通りですわ。そもそも、王宮主催の夜会で、よくもまああんな大きな声で、嫌味を言えるものですわね。それにエディソン様、あなたの熱望でアンリ様を婚約者になされようとしたのでしょう。それなのに、自分の母親が大切な女性に暴言を吐いているのに、よくそんな呑気な顔をしていられますわね。もし私が同じことをされたら、荷物をまとめて実家に帰る事でしょう」
すかさずカレッソル公爵令息夫人が、言葉を続けた。確かに夫人がおっしゃる通り、母親から妻を守れない殿方は、この国では令嬢たちからも嫌われている。
「確かにアンリ様はずっとエディソン様に好意を抱き、彼の後を追い回していましたが、それを拒み続けたのは紛れもなくエディソン様自身ですよね。あなた様に冷たくされたアンリ様を陰で支え、クラスに馴染めるように動いたグレイズ様。そんなグレイズ様に惹かれていくアンリ様。私達クラスメートは、2人が少しずつ愛をはぐくんでいく様子を、温かく見守っていたのです。だからそんな2人が婚約を結んだときは、私も密かに喜んでいましたの。そんな中、急に2人が婚約破棄をし、エディソン様とアンリ様が婚約を結び直すという話が耳に入ってきました。お互い愛し合っているのに、引き裂かれるなんて…」
私の隣にいらしていたマリーゴールド様が、悲しそうに呟く。
いつの間にか、周りの貴族も私たちに注目していた。さらに王太子殿下やカレッソル公爵令息、さらにアンリ様の婚約者でもあるティーンディーズ公爵令息も来ていた。
「わ…私たちは別に、無理やり2人を引き裂いた訳ではありません。ただ、スリーフェイル伯爵家とダニルーディン伯爵家にお願いに行っただけです」
「ですが、自分よりも爵位の高い家からのお願いなら、聞かない訳にはいかないのが、貴族社会ではありませんか?既に婚約を結んでいる家に、婚約を破棄して自分の息子と婚約を結び直せというのは、いかがなものかと。その様な事がまかり通るのであれば、爵位の低い令嬢や令息たちは、簡単に婚約破棄をされてしまいますわ。それでは、貴族社会の秩序が乱れるというものです。そもそも婚約破棄には、正当な理由がないと行えないはずですが、この2人にはどのような正当な理由があったのでしょうか?」
王太子妃様が、マッキーノ侯爵に問いただしている。皆もマッキーノ侯爵に注目している。
「やあ、アンリ。こんなところにいたのだね。それにしても、君たちの格好…いくら今はまだ2人が婚約者同士だからって、さすがにその格好はどうかと思うよ…」
そう言ってため息を付くエディソン様。さらに
「エディソン、だから私は、こんな品のない令嬢をあなたの妻に迎え入れるのは反対なのよ。あなたにはもっと素敵な令嬢がいるのに、よりにもよって家よりも爵位の低いうえ、あなたを追い掛け回していたハイエナ令嬢と婚約を結ぼうとするだなんて…いい、アンリ嬢、我がマッキーノ侯爵家は由緒正しい家柄なの。そんな家に嫁げることを、誇りに思いなさい。それから、我が家に泥を塗る様なことだけはしないで頂戴。もちろん、私自ら、厳しく指導はするつもりだけれどね」
怖い顔で私にそう吐き捨てる、マッキーノ侯爵夫人。あまりの迫力に、つい固まってしまう。
「ちょっと、返事くらい出来ないの?」
「申し訳ございません、どうぞよろしくお願いいたします」
私が固まっていた事が気に入らなかった様で、大きな声で怒鳴った夫人。慌てて頭を下げた。
「本当にこんな子がエディソンの妻になるだなんて…エディソン、あなたは非常に優秀なのよ。もしこの女が嫌になったら、すぐにこの女を追い出して、もっと爵位の高い、魅力的な令嬢を後妻に向かえましょうね」
そう言ってエディソン様にほほ笑んでいる。そんな夫人に何も言わないエディソン様。やっぱりエディソン様は、私を夫人から守るつもりはこれぽっちもないのだろう。
その時だった。
「夫人、そんなにアンリの事をお気に召さないなら、どうか私の婚約者のまま置いていただけないでしょうか?その方が、よろしいのでは?」
そう声をあげたのは、グレイズだ。顔は笑顔だが、あの瞳。明らかに怒っている。さすがにこれはまずい。
「グレイズ、あなた…」
「まあ、何なの?伯爵令息の分際で、私に意見するというの?ダニルーディン伯爵はどんな教育をしているのかしら?恥を知りなさい!」
顔を真っ赤にして怒る夫人、さすがにこれはまずいわ。そう思い、謝ろうとした時だった。
「恥を知るのはあなたですわ。マッキーノ侯爵夫人」
声の方をゆっくり振り向くと、そこには王太子妃様とマリーゴールド様、さらにマリーゴールド様のお兄様のお嫁様でもある、カレッソル公爵令息夫人が立っていたのだ。
「マリーゴールドから話しは聞きました。マッキーノ侯爵、それから夫人、あなた達は権力を利用して、既に婚約が決まっていたスリーフェイル伯爵令嬢とダニルーディン伯爵令息を、無理やり婚約破棄させ、自分の息子とスリーフェイル伯爵令嬢を婚約させるそうではありませんか!」
美しいお顔の王太子妃様が、怖い顔でマッキーノ侯爵と夫人に詰め寄っている。
「さらに先ほどの暴言、聞いていて気持ちの良いものではありませんでしたわ。確かにあなた方の方が2人より爵位が上です。だからと言って、何でも好き放題言っていい訳ではありませんわ。その様な事も分からず、よくも侯爵夫人なんてやっていらっしゃいますわね」
「お義姉様の言う通りですわ。そもそも、王宮主催の夜会で、よくもまああんな大きな声で、嫌味を言えるものですわね。それにエディソン様、あなたの熱望でアンリ様を婚約者になされようとしたのでしょう。それなのに、自分の母親が大切な女性に暴言を吐いているのに、よくそんな呑気な顔をしていられますわね。もし私が同じことをされたら、荷物をまとめて実家に帰る事でしょう」
すかさずカレッソル公爵令息夫人が、言葉を続けた。確かに夫人がおっしゃる通り、母親から妻を守れない殿方は、この国では令嬢たちからも嫌われている。
「確かにアンリ様はずっとエディソン様に好意を抱き、彼の後を追い回していましたが、それを拒み続けたのは紛れもなくエディソン様自身ですよね。あなた様に冷たくされたアンリ様を陰で支え、クラスに馴染めるように動いたグレイズ様。そんなグレイズ様に惹かれていくアンリ様。私達クラスメートは、2人が少しずつ愛をはぐくんでいく様子を、温かく見守っていたのです。だからそんな2人が婚約を結んだときは、私も密かに喜んでいましたの。そんな中、急に2人が婚約破棄をし、エディソン様とアンリ様が婚約を結び直すという話が耳に入ってきました。お互い愛し合っているのに、引き裂かれるなんて…」
私の隣にいらしていたマリーゴールド様が、悲しそうに呟く。
いつの間にか、周りの貴族も私たちに注目していた。さらに王太子殿下やカレッソル公爵令息、さらにアンリ様の婚約者でもあるティーンディーズ公爵令息も来ていた。
「わ…私たちは別に、無理やり2人を引き裂いた訳ではありません。ただ、スリーフェイル伯爵家とダニルーディン伯爵家にお願いに行っただけです」
「ですが、自分よりも爵位の高い家からのお願いなら、聞かない訳にはいかないのが、貴族社会ではありませんか?既に婚約を結んでいる家に、婚約を破棄して自分の息子と婚約を結び直せというのは、いかがなものかと。その様な事がまかり通るのであれば、爵位の低い令嬢や令息たちは、簡単に婚約破棄をされてしまいますわ。それでは、貴族社会の秩序が乱れるというものです。そもそも婚約破棄には、正当な理由がないと行えないはずですが、この2人にはどのような正当な理由があったのでしょうか?」
王太子妃様が、マッキーノ侯爵に問いただしている。皆もマッキーノ侯爵に注目している。
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