何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi

文字の大きさ
64 / 75

第64話:前に進まないと

「さあ、お嬢様、今日はもうお休みください。それにしてもあの女、お嬢様に逆恨みするだなんて。本当に何を考えているのでしょう。お嬢様がどれほど辛い思いをして来たのかも知らずに、本当に腹が立ちますわ」

私の隣でプンプン怒っているカリア。

「ラミネス様も色々と苦労されたのでしょう。ただ…今回の件、私は許すつもりはないわ。と言っても、父親でもある騎士団長様があれほどまでに怒っていらしたから、きっと修道院くらいには送られるのではないかしら?」

さすがに彼女の行いは、許されるものではない。厳しい修道院で、少しは自分の行いを反省してくれるといいのだが…

そんな風に思いながら、その日は眠りについた。ただ…夜中、私はなぜか熱を出した。どうやら私は自分でも気が付いていない程、大きなショックを受けていた様だ。

翌朝にも熱は下がらず、すぐにお医者様が診て下さったのだが

「精神的なものなので、しばらくしたら熱が下がるでしょう」

そう言われた。まさかショックで熱を出すだなんて…そう言えば、盗賊に襲われたときも、熱を出したような…

ふと7年前、盗賊に襲われたときの記憶が急に蘇る。あの時デイビット様が私を守ろうと、必死に動いてくれたのよね。それで…私が怯えて泣きじゃくるから、2人で逃げ出して。でもすぐに見つかってしまって。

それでもデイビッド様は果敢にも男たちに立ち向かっていって…そうだわ!あの時私は怪我をしてしまって、熱が出たのよ。

あの時の事が、一気に蘇った。なぜだろう、どんなに思い出そうとしても、記憶があいまいだったあの時の事。でも、なんだか今は、はっきりと思い出されるわ。

“アンジュ、俺が弱いばかりに本当にごめん。必ず強くなって、アンジュを守れる男になるから”

そう言って私の枕元で涙を流していたデイビッド様。もしかしたらあの事件がきっかけで、デイビッド様は騎士団長になるまでは私への思いを封印しようと考えたのかもしれない。

なんだかそんな風に思えた。

それにしてもあの時は、間違いなく私は幸せだった。大好きなデイビッド様がいつも傍にいて守ってくれていたのよね…

ボーっとする頭で、そんな事を考えてしまう。ふとデイビッド様に貰った、オルゴールを手に取った。幸せそうに微笑む女の子。

そんな女の子を見ていると、つい頬が緩む。

今度はクローゼットの近くに引っ掛けてあるドレスに目が留まる。このドレスはダルク様が私の為に、デザインしてくださったものだ。ミラージュ王国をイメージして作られたドレス。本当に美しい。

「デイビッド様もダルク様も、いつも私の事を考えてくれているのよね…でも…」

“デイビッド様かダルク様、どちらか一方に決めずにズルズルと延ばして。2人の男性からチヤホヤされるのを楽しんでいたのでしょう?”

ラミネス様に言われた言葉が脳裏に浮かんだ。

確かに私は、2人の優しさにつけこんで、ずっと自分の気持ちを先延ばしにして来た。でも、もう迷わない。

そう、私の中で既に答えが出ているのだ。この熱が下がったら、きちんと2人に私の気持ちを伝えよう。それがどんなに辛い事でも、もう私は決めたのだ。あの人と共に未来を歩むという事を。

そう心に決めたのだが、何分熱が一向に下がらない。その間にデイビッド様やダルク様、友人たちも何度もお見舞いに来てくれた。

さらに今回の事件を起こしたラミネス様だが、すぐに裁判に掛けられたとの事。そして彼女に下った判決は、国外追放になったそうだ。

騎士団長様も責任を感じて、早々に騎士団を辞任したらしい。そして新たにデイビッド様が、新騎士団長に急遽就任したらしい。

その上、騎士団長様は今回のラミネス様の行いを自分のせいだと感じている様で、侯爵の座も息子さんに譲り、自分は王都から離れた領地でひっそりと暮らすらしい。

我が家にもダィーズン侯爵家から膨大な慰謝料を頂いたと聞いている。

まさかラミネス様が国外追放になるだなんて…ずっと侯爵令嬢として生きて来た女性が、爵位を奪われたった1人で知らない土地で生きていかなければならない…ある意味死罪よりも残酷かもしれない。

あなたにおすすめの小説

「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」 新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。 それもそのはず。 2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。 でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。 美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。 だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。 どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。 すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?  焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。 結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに 「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

【完結】そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして

Rohdea
恋愛
──ある日、婚約者が記憶喪失になりました。 伯爵令嬢のアリーチェには、幼い頃からの想い人でもある婚約者のエドワードがいる。 幼馴染でもある彼は、ある日を境に無口で無愛想な人に変わってしまっていた。 素っ気無い態度を取られても一途にエドワードを想ってきたアリーチェだったけど、 ある日、つい心にも無い言葉……婚約破棄を口走ってしまう。 だけど、その事を謝る前にエドワードが事故にあってしまい、目を覚ました彼はこれまでの記憶を全て失っていた。 記憶を失ったエドワードは、まるで昔の彼に戻ったかのように優しく、 また婚約者のアリーチェを一途に愛してくれるようになったけど──…… そしてある日、一人の女性がエドワードを訪ねて来る。 ※婚約者をざまぁする話ではありません ※2022.1.1 “謎の女”が登場したのでタグ追加しました

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。